!邂逅

「……はぁ……っ、はぁ……っ、」


どのくらい走ったのだろう。気がつけばオレンジ色に染まった景色
外の世界に出たのは殆ど初めてだと言っていいくらいあの真っ暗な部屋に閉じ込められていたから、このオレンジ色ですら眩しく見える
とにかく、後ろから追ってくるあいつらに捕まらないように必死に走っていた



ドンッ!


「……っ、ご、ごめんなさい……!」


「いや…俺は平気だ。大丈夫か?」


顔をあげれば金色の綺麗な髪と瞳が見えた。でも、焦ったような声が段々とこちらに近づいてくるのが聞こえる




《あの小娘を逃がすな!》


《絶対に手に入れろ!》



「!!逃げなきゃ……!」



「ん?……誰かに追われているのか?」


「捕まったら、また……っ」


その場から離れようと後退ると腕を引っ張られて路地裏へと連れていかれる
しばらくすれば喧騒


《どこに行った!》

《あの小娘が逃げたら俺達の研究は水の泡だ!何としても捜し出せ!》


隙間から見える姿はやがて離れていき、声も遠退く。僕を路地裏に引き込んだのは先程の綺麗な顔立ちの人だった


「行ったか……。あいつらから逃げていたのか?」


「……ごめんなさい……」


「?なぜ、謝るんだ?」


「……巻き込んだから。それに、こんなとき、何て言ったらいいか……分からないから」


「ふむ。こういう時は、″ありがとう″というんだ」


「ありが、とう……?」


「どういたしまして。しかし、見たところ……危ない奴らだな
あいつらから逃げていたんだろう?」


「(こくっ)……僕は、人間じゃ、ないから……」


「?人間ではない?」


目の前にいる人は何を言っているのか分からないみたいだった


「ジョット、その子……珍しいエディルレイドだよ」


「!!」


「……と。やぁ、奇遇だね」


「驚かせるな、アラウディ」


屋根の上から人が降りてきた……
プラチナブロンド、というのだろう、その髪色とサファイアのような瞳


「そんな場合じゃない
……今の奴ら、彼女を悪用するつもりだ。早くボンゴレに匿ってやりなよ」


「あなた、誰?」


「僕はアラウディ。こっちはジョット」


「エディル、レイド?何だ、それは……」


ジョットと紹介された人はアラウディを不思議そうに見ていた


「説明は後だ」


「……僕を、知ってるの……?」


「一応、ね。別に僕は君を利用しようとは思わない
だから今だけは彼を信じて彼の屋敷に行くといい

見た目は人間なんだから、差別なんてしなくていいのにね……」


頬に触れながらそう呟いたアラウディがとても悲しそうだった
僕はジョットの羽織っていたマントを引いて言葉を紡ぐ
少し震えているのは気のせいではないだろう……
喉の奥まで出かかっていた言葉を、目の前にいる二人へと伝えた



「……たすけ、て……
もう……人を殺すのは、嫌だ……っ」




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