墓場の主

「ようこそ、愚かな客人。私主催の晩餐会を存分に楽しんでいくといいわ」


京子の前に現れた肩の開いた紅い中世風のドレスに身を包んだ茶髪のショートヘアーの女性がワイングラスに口を付けながら妖艶に笑った


「貴女、は……?」


「私はバニカ=コンチータ。この墓場を統べ、原罪の犯した罪の一つ、【暴食】」


「暴食…?罪……?」


「原罪者は大きな罪を犯してしまい、それをある双子が七つに割ったと言います」


「その七つに割られた罪は【強欲】【暴食】【傲慢】【色欲】【嫉妬】【怠惰】【憤怒】と呼ばれています」


「「その大罪の一つ、【暴食】が我らが主、コンチータ様にあらせられます」


「罪…が人間に……?」


「少し違うわ。大罪が持つ執着によって具現化された人格、それが私達大罪
さて、料理は食材が新鮮なうちに食さなければ勿体ないわ。腐ってしまうと美味しくないもの
貴方達、準備を」


「「かしこまりました、コンチータ様」」


「あの、さっきまで一緒にいた友達……ハルちゃんと花は……」


部屋のドアを開く寸前まで一緒にいたはずの友人の姿が見えないことを京子は召使に伝える


「彼女達にはそれぞれの場所にて食事をしていただきます」

「しかし、サイゴは合流しますのでご心配なく。貴女には主からの質問がございますのでまことに勝手ながらもそれぞれの部屋にお連れ致しました。別行動であることをご了承ください」


「そうなんですか……。わかりました…」


「さぁ、原罪を貶した報いはその不味そうな体で受け、最後まで食べてあげて頂戴」


コンチータの言葉は京子の耳に届くことなく、空中で霧散した

さぁ、お気づきだろうか?
召使とメイドの言葉に
彼の双子は少女に何を投げかけるのか

コンチータが少女に対して食べて"あげて"と告げた理由に
彼女は少女に何を与えるつもりなのか


ーー知っているのは、原罪を盲信する三人のみ……


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