遊びましょう


「(神の子、ねぇ……)」


テレビの電源を消しながら雲雀は目を伏せて病室のベッドから足を下ろした後スマホを取り出して画面を確認する
左上に移る【圏外】の文字に雲雀は一つ息を吐いた


「綱吉や家光さんと連絡取れないし…」


ガチャ


「?」


「雲雀恭弥…警部の黒田だ。話を聞かせてもらいに来た」


「話?警察に話すことなんて何もないよ」


「単刀直入に話す。雲雀恭弥の学籍は確認できたが、戸籍は確認されなかった。同姓同名は7年前に殺されているはずだ

貴様はーー何者だ?」


「(戸籍は家光さんに頼んで消してもらった。7年前に僕は死んだんだから)
僕は正真正銘、雲雀恭弥だ。みそら高校に在学する17歳、それ以外に何が必要?」


「……ならば話題を変えよう。お前達が同じ高校のやつらを殺したのか?」


「……違う。僕たちは生きようとしただけだ」


「……また来るからな」


これ以上訊ねても無駄だと悟ったのか警部の黒田はその部屋から去っていった


「うわぁぁぁあ!!」


「?」


部屋の外で断末魔が聞こえると雲雀はベッドから腰を上げてドアを凝視する


「(生きている者の気配がない……)」


《ひーー♪ばーーり♪くーーん♪》


「!」


《あー♪そー♪ぼー♪》


「ダルマからのネコで次はコケシかい」


ノックの後雲雀を呼ぶとドアがゆっくりと開かれて、三体のコケシが現れたのを見て雲雀は口角をあげた


「いいよ、何をして遊ぶんだい」


《マじ?》

《あそぼあそぼぉ♪》

《あはははははー


「(周りにコケシ、【まいこ】に【たつろう】、【そうた】か……」


《座ってぇ♪座ってぇ♪》

《メをつぶっテー》

《絶対開けちゃだめだよー


「ズルはだめ?死ぬ?」


《もっちろんじゃん〜♪》


「ん、いいよ
(間延びした声がそうたで、ぶりっ子みたいな声がまいこ、口調がおかしいのがたつろうか)」


床に三角座りをして雲雀は目を瞑ると取り囲んでいたコケシがせーの、という掛け声に続いて【かごめかごめ】を歌い出す


《かーごーめーかーごーめー♪》


「……」


《籠の中の鳥ーはー♪いーつーいーつー出ーやーるー♪夜ー明ーけーのー晩ーにー♪鶴と亀が滑ったー♪後ろの正面だーあれ?》


「…………たつろう」


一瞬の静寂が部屋を包んだがすぐに雲雀がコケシの名前を呟く


《エ……ハや…》

《当たっちゃったすごーい


「僕、聴覚だけは無駄にいいんだよ、残念だったね」


目をゆっくりと開きながら雲雀は挑発的な笑みを浮かべる。彼は視力が弱い代わりに聴覚と嗅覚は人一倍鋭いのだった
かごめかごめの止まった瞬間にコケシの声を聞き分け割り出すと自ずと出てくる答えであった


《バイバーイ

《んじゃ、まったねぇ〜》


バイバイと手を振りながら出て行った二体のコケシを見ながら雲雀は小さく息を吐くと背後でゴトッ、という音がなる
そこではコケシが溶け始め中から人間が現れたのを見るとスタスタと部屋から出て頭が奇妙な形をしている先ほどまで話していた黒田を見下ろすように一瞥してからそのまま廊下を歩き始めた


「負けたらコケシになるって感じじゃなさそうだったな……死ぬらしいし。ってことは他に何かコケシになる何かがあるってことか」


「お、恭弥♪」


「……天谷……。……血みどろじゃない、何、また殺した?」


曲がり角でぱたりと再会した天谷に雲雀は頭から足まで見ながら上半身についている赤色に反応を示した


「さぁね♪なぁ、ちょっと話しようぜ」


「……別にいいけど。ただ歩きながらね
カギもだけど扉が見当たらないし」


「もちろん♪そういやさ、体育館でお前、《復讐》って言ってただろ?誰か復讐してぇ奴いんの?」


「……僕の両親は7年前の僕の誕生日に全て殺された
殺した本人はもう死んでるけど、調べたらそいつはただの雇われた奴だったから仕向けた奴らが必ずいるはず。……そいつを見つけて復讐する」


「ふぅん、俺さ虐待されてたんだけど両親を殴ったんだよね、その時の高揚感が忘れられなくってさ、何かを壊す時、いつもその光景を思い出して、生きてる!って感じなんだわ」


「へぇ、あっそ。……でさ、一つ聞いていい?ってか聞く
なんで手を掴んでるの」


繋いでる、というよりも手首を掴んでいる天谷の手を見ながら雲雀は不機嫌そうに訊ねると天谷はなんとなく、とはぐらかすように答えた時、突然コケシが二人の前に現れる


《ばぁぁ!》


「!!」


「キタ♪」


「あれ、なんかさっきのコケシと違うけど、今回も遊ぶの?」


「残念♪こいつは違う」


「は?」


《チッ、マジでふざけんなし……ありえねーし……》


舌打ちすると来た道を戻るようにコケシは去っていった。そんなコケシを見ながら雲雀は状況を把握できずに首を傾げている


「……なんだったの、あれ」


「一人でいる奴がアイツと会うとコケシにされるんだよ
だから手を繋いでおかないといけないってこと♪」


「……コケシから人が出てきたけど、そういうことか……ぼっちイジメか何かなのこっちがふざけんな」


「ははっ♪やっぱおもしれー♪」



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