──怪奇探偵社へようこそ



硝子のテーブルを挟んで宮白と対峙する司と志藤。
目測で三人座ってもいくらか余裕のあるようなソファーに座っているにも関わらず、二人の間には微妙な距離が空いている。
人が座れるほどではないが、明らかに開きすぎた距離に宮白は気付かれない程度に眉をひそめた。

「早速だけど、仕事の話をしようか」

心中で溜め息を吐きながら、宮白は資料を片手に奥のデスクから二人と向かい合うソファーへ腰を落とした。





──A.S.E.Gリサーチ社。
通称「アセッグ」と呼ばれるこの会社が司の勤務先の名称だ。
社名にもあるようにアセッグは企業・個人を問わず依頼を請け負う調査会社である。
調査項目は企業の信用調査から個人の行動調査まで多岐に渡り、市場調査やアンケートなど企業のマーケティング部門が行う調査を請け負うこともあれば、一般家庭の浮気調査などの探偵業務もアセッグの一般業務に含まれる。

司は在籍六ヶ月のアルバイト社員。
ライフジャケットの男──志藤恵御(シドウ ケイゴ)は正社員で司の指導係を務めている。
在籍する社員の中でも二人は数少ない特殊業務を担当する人員である。
特殊業務――通称・S案件と呼ばれるそれは、通常業務とは大きく異なる。
アセッグが主に取り扱うのは法人及び個人を対象に行う調査であるが、その中でもS案件に分類されるものは法人でも個人でもない。
法によってその存在を明確に定義されていない、正規には対象にできないもの。
超自然的存在によってもたらされる超常現象、所謂幽霊や妖怪、クリーチャー等々その他オカルトな存在が司達の相手にするモノである。
そういったモノが視える人員を召集している場所が、今司のいるビルの最上階のこの部屋だ。
詰まる所怪奇相手の探偵業が司の仕事であり、部屋の主とその部下達の生業なのである。



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