Baroque
天使と悪魔-Angel&Devil-

少年が椅子に腰掛けてからどれくらい時間が経ったのか、二人はずっと無言のままだった。

その間少年は目の前に座る男性の瞳や仕草から男性の腹の底を探ろうとしたが、ことごとく失敗に終わった。

男性は口元に常に微笑を浮かべながら、瞳を閉じて戸を叩く風の音に耳を澄ませたりしていたが、彼が何を考え何を求めているのか皆目見当もつかなかった。

彼は少年の話を聞こうと言ったが、自分からそれを催促することはなく、本当に少年の話に関心があるのかないのか今一つ掴めなかった。

「……」

ただ沈黙だけが流れていく。

その異様な空気に痺れを切らしたのは、少年の方だった。

「…アンタが何者か知らないが、オレの話なんか聞いてどうするってんだ?」

少年が尋ねると、男性は静かに目を開けて少年を見つめた。

「別にどうもしないさ。まあ強いてあげるなら、ボクの好奇心さ」

「好奇心…か。妙なことに首を突っ込むとロクな目に遭わないぜ」

「そうかい?それじゃあ肝に銘じておくとしよう」

「……」

どこまでも男性は掴みどころのない人物であった。

しかし不思議と目の前にいる自分とは何の所縁もないこの男に、自分の身の上話をしたくなってきた。
それを話したところで、おそらくこの男はずっと微笑を浮かべたまま何も意見など言って来ないのだろうが、無性に話したい衝動に駆られた。

「……」

少年はしばらく悩んだ後、深く息を吐いて、それからぽつぽつと話し始めたのだった。

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