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これの続き的なの

 俺は基本ハッピーエンドが好きだった。
幼い頃大好きだったお伽噺もお姫様と王子様が最後まで幸せに幸せに暮らすような終わり方の物が多かった。

でも現実は甘くないらしい。
それに気が付いたからって何かが変わったわけでもないし、俺は今まで通りでハッピーエンドが大好きなままだった。
だって、お伽噺くらい幸せな終わりの方がいいでしょ?
俺な好きなのはお伽噺のハッピーエンドで別に現実にハッピーエンドを望む訳じゃない。
お伽噺のような出来すぎた話あるわけない。
そう思っていた。

 俺の机に俺が休んだ日の授業全ての板書をまとめられていたノート。
ペラペラとノートを捲って読んでいくと丁寧な字でさそうだし。
ノートの主が彼女だと良いのに、と俺は思うようになっていた。

“返さなくて結構です、貴方の役に立てたのなら良いのですが”
と書いてあってそのノートを何回も何回も読み直すうちに俺は顔も名前もわからない女の子に惹かれてしまった。

 そして、日に日にこのノートを書いた人物が気になり始めて一言お礼を言いたくなった。
こんなこと出来るのはクラスの女の子で間違いないと思った俺は今まで以上にクラスの女の子へと話し掛けるようになった。
もちろんノートの事は隠してだ。
普段あまり話さない子に話し掛ける時は流石の俺でも緊張したんだ。
特にいつも窓際の席で難しそうな文庫本を読んでいたみょうじちゃんに話し掛けるのは。

「よかったら俺とお話ししない?」

 普段は互いに挨拶くらいしかしない仲なのに俺がいきなりそんなことを言ったからなのか彼女は小さく笑うと、いいよ。と頷いてくれた。
それから彼女とよく話すようになった。仲良くなるにつれて彼女の読んでいた本たちは実は童話集だと知った。

「子供っぽいでしょ?」

「ううん、でもなんか意外だった」

 そして、日に日に増える彼女との会話、他の女の子たちのように自分を飾ったような話をしないで彼女はいつも自然に話してくれる。
いつしか俺は彼女との会話が心地よく感じるようになった。
そう言えば彼女は頭良かったよなぁ。
あのノート書いた人もノート見る限り頭良さそうだし。

 でもある日突然何だかんだでノートの主を見つけた。
彼女とは全然違う女の子。
ノート主に当初の俺の目標であったお礼という名の告白をする。
返事はもちろんオッケー。
女の子と付き合うことになって真っ先に彼女へ何て報告をすればいいのだろうと俺は悩んだ。
俺の中で彼女の存在は下手したら付き合うことになった女の子より大きいのかも知れない。
仲良くなるにつれて苗字を呼び捨てで呼ばれるようになって、くだらない事で盛り上がったりするのが楽しくて。不機嫌そうな横顔とか会話の最中に一瞬だけ見せる笑みとかすべて、すべてどこかいとおしくて。
ああ、これじゃあ俺はまるで彼女に恋をしているようじゃないか。

 昼休み、彼女と話したくて人気のない階段に向かう。たしか彼女のお気に入りの場所だっな。
階段に着くと案の定彼女は其処に居て、俺はいつものように話し掛ける。そして、それとなく自然に恋人ができたことを告げた。
彼女は何て言うだろうか?俺はドキドキと高鳴る鼓動を小さく深呼吸をしてなんとか抑えながら俺は彼女を見つめた。

「及川は馬鹿だね」

 彼女の言葉を理解するのに時間はそんなに掛からなかった。
俺はなんて間違いを犯したのだろう。
今にでも泣き出しそうな彼女と俺。
この光景を誰かが見たらなんて言うか。

「ごめんね」

俺の口から溢れた言葉に彼女は堪えきれなくなったのかついに泣き出してしまった。
静かな階段に響き渡る彼女の声。

「私は気づいて欲しいなんか思ってなかったのに、好きになってもらうつもりもなかったのに」

俺は泣きじゃくりながら言葉を一生懸命紡ぐ彼女の頭に手を伸ばし頭を撫でた。
本当は抱き締めてあげたかった。でも俺がそんなことをする資格なんてない。

「ただ見てるだけで、幸せだった、役に立てたら、なぁって…」

彼女の言葉が俺の胸に突き刺さる。
俺が先走って告白なんかしちゃうから、相手をちゃんと確かめずにしてしまうから。
彼女はこんなにも苦しむんだ。

「なまえ」

「…ほら、ずるいなぁ…
私の名前知ってたの?」

「…知ってるよ、ねえもし俺がさ」

「聞かない」

 俺が言おうとした言葉がわかったのか彼女は両手で耳を塞いだ。
俺が何度話そうと彼女の肩を揺さぶるが彼女は聞く耳を持たない。

「ねえ、お願い話を聞いてよ…」

「及川」

「…やっと聞いてくれる気に」

「今は聞きたくないよ、だから」

 わかるでしょ?と彼女は俺の顔をじっと見つめならそう呟いた。
その言葉の意味を理解するのに少し時間がかかったが俺は理解すると同時に彼女に此処で待っててと伝えると教室へと戻るため来た道を駆けていく。
勘違いで付き合うはめになってしまった子には悪いけど別れてもらおう。
告白しといた癖に振るとか最低だな、俺。
でも向こうもノートの事嘘吐いたのだからいいよね?

 目のまわりを真っ赤にさせて、一人廊下で待っている彼女のためにも俺はケリをつけてやる。

だってたまには
ハッピーエンドを望んでもバチは当たらないでしょ?
 



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