page.1



 朝、ミラちゃんの家の玄関のドアを開けると真正面にディーノが立っていた。
 無言で。無言でじっと立ってんの。ノックするでも声かけるでもなく。怖いよディーノ。
 なんかよく分かんないけど圧力を感じるよ。

 じとーっとした目で見下ろしてくる高身長の男の視線から外れようと、蟹歩きで横にずれてみてもディーノも顔を動かして視線がついてくる。
 …………。

「なんか言ってよ!」
「おはようございます」
「はい、おはようございます! ごめんなさい!」

 反射的に謝っちゃった! 何に対してか分かんないけど謝っちゃった!
 ディーノが怒ってる理由が皆目見当もつかない。どうしたの、低血圧なの朝に弱いの?

「ハル、あせすごい」
「言わないでホズミ!」

 緊張で手汗がすごいから、繋いでるホズミには丸分り。なんだけど恥ずかしいから言わないでくれ。
 ホズミは私を不思議そうに見て、それからディーノに目を移し。

「ディー、ハルがこわいって」
「それもっと言わないで!」

 私の考えさえもホズミに丸分りだったらしい。私の思考回路は子供にすらスケスケなのか。スケルトンか。シースルーか。

 あれ、どうしたんだろう、目から塩水が。

「ディー、泣かせた」
「むしろホズミのせいでしょう」
「敢えて言う、共犯であると!」

 二人してお互いに罪をなすりつけるとは卑怯な。
 ていうか、ホズミがディーノの事をディーって呼んでるんだって今日初めて知った。
 いいなぁー、仲良くなった感じがして微笑ましいなぁ。

「で、ミラというあの女の子は?」
「ああ、ミラちゃんなら近所のおばちゃ、お姉さんがついててくれるから大丈夫だよ」

 朝早くに近所の人が、ミラちゃんがまた家出してないか様子を見に来たのだ。
 そしたら泣き腫らしてそれどころじゃないミラちゃんがいて、面倒見のいい彼女はアタイの出番じゃないかコンニャロ! と率先してミラちゃんの傍にいると名乗りをあげてくれた。

 おせっかいと紙一重の面倒見のいい近所のおばちゃん。
 親しみを込めて彼女の事を「おばさん」と言ったらおっそろしい目に遭いました。

 何があったのか詳しくは言いませんが、彼女の事は今後一生「お姉さん」と呼ぶと誓いました。
 話が逸れた。
 とまぁミラちゃんはお姉さんに任せて、私は一旦屋敷に帰ろうというわけです。

「ソレスタさんはお屋敷にいる?」
「いますよ、昨日も俺が帰ったら優雅に侯爵と晩酌中でした」
「私、今ほどソレスタさんを偉大だと思った事ないわぁ。そんでディーノも参戦した?」

 ディーノはにっこりと笑っただけで答えてくれなかった。というかその笑みが答えというか。
 そうですか逃げましたか。まあそうだよね。私でも見なかった事にしてさっさと自室に閉じこもるわ。

 侯爵とソレスタさんの会話ってどんなのだろう。全く想像つかない。
 うーん、ソレスタさん二日酔いになんてなってないでしょうね、話するどころじゃないとかだったらどうしよう。

 吐いたら楽になるのかな、だったら容赦なくリバースさせるけど。
 



|




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -