小説 | ナノ

1. 生まれた


悠人は薄暗い空間で目を覚ました。彼は生まれた瞬間に首をひねられたことを自覚し憤慨したが、自分を殺した人間が地獄に行くことに思い至ると満足したように何度も頷いた。

悠人が急に締め付けられるような頭痛に息を詰めると、その次にまぶしさを感じて顔をしかめた。うるさい泣き声が自分から出ていることに気付いてようやく二度転生したことに気付いた。
さすがに生まれた瞬間死ぬのは申し訳なく思ったのだろうと考えた悠人は神に感謝した。出ばなをくじかれはしたが今度こそはと決意した。

悠人はジョンと名付けられて健やかに成長した。イギリスに生まれた彼は、立って歩けるようになった頃には綺麗なクイーンズイングリッシュで両親の名前を呼んで2人を喜ばせた。久しぶりに笑顔を見た彼は心が満たされるのを感じて、人との触れ合いを一層大切に思った。
両親の笑顔をみたくて、ジョンはたくさんの本を読んで知識をつけた。アンダーソンという名家に生まれたのだから、より賢くなることが一番の親孝行だと考えたのだ。

「すごいわジョン。よくできました」

彼の予想通り両親は年の割に賢すぎるジョンをほめて、誇りに思った。ジョンは学ぶことが楽しくなった。
ジョンが親戚じゅうから天才とたたえられるようになった時、彼の両親はアンダーソン家が魔法を使う一族だという事を打ち明けた。彼は驚いたが、それ以上に新たな分野に胸をときめかせた。5歳にして粗方の知識を詰め込み終えた彼はすぐにでも魔法を習いたかったが、今年からスクールに通うため学校に慣れてから始めることになった。
彼にとってスクールの授業は知っていることばかりで退屈だったが、新しい出会いは彼をわくわくさせた。
彼は遊びと魔法を両立して望み通り人生を謳歌した。




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