舐め合い


ニルティエかつライ→ニル前提のライティエ
無理矢理とかあるので注意





ここは、どこだ。
ティエリアは目を覚まし、見覚えのない場所にいることに気付いた。
ロックオン・ストラトスとの地上ミッションのために用意されたホテルの一室、ではない。限りなく似てはいるのだが、家具やベッドの配置が違う。
思考は靄がかかったように朦朧としている。何かを飲まされたか?
記憶を探る。直近の記憶。自分の部屋で酒を飲んだ。その時に一緒にいたのは――ロックオン・ストラトス。
意識が覚醒し、慌てて身を起こそうとした。
「――なっ」
動けない。既に体は起きていた――立った状態で拘束されていた。手首はまとめて縛られている。それが頭の上まで持ち上げられ、壁に縫い止められている。
ようやく現状を、しかも最悪の現状を把握したティエリアは、さらに最悪なものを見た。
「目は覚めたか? 教官殿」
ティエリアの目の前、ベッドの端に腰掛けた男はにやにやと笑った。
「ロックオン・ストラトス――!」
拘束されたティエリアを前に、悠然と脚を組んで座っている。
「なんのつもりで……!」
怒りが沸き上がる。殴り掛かりたい衝動に駆られる。しかし自由にならない腕に縄が食い込むばかり。絶望より先に驚愕が立つ。
「まさかうらぎ」
「それこそまさか、だろ」
立ち上がったロックオンがティエリアの頬に触れる。ティエリアは懸命に首を反らし、逃れようとしたが容易く捕われる。
「こんなに可愛い教官殿がいるってのに」
耳元で囁かれ、肌があわ立つ。間近に迫る翡翠の瞳。
「兄貴も馬鹿だよな。こんな人を置いて死ぬんだから」
直球な言葉に目を見開く。過るのは喪失感と、忘れたはずの痛み。
忘れてはいない。忘れたいだけだ。彼がいないということに、気付きたくない。
目の前にいるロックオンはティエリアの傷を抉る。ロックオンはそんなことは絶対にしなかった。
同じ顔が喪失感を埋めることはないのだと、思い知る。失ったものは、ずっと存在しないまま。二度と戻らない。
「ね、ティエリア」
にっこりと笑って、ロックオンは同意を求めた。同じ声。でも確実に違う声。
「違う」
「何が」
「彼は、そんなことは……」
「置き去りにしただろ? ……俺たちを」
悪意ある笑顔だ。ロックオンはそんな人じゃなかった。
「兄貴が最後に考えたのはあんたのことじゃなかった」
「っ、やめろ……」
強く言ったはずの言葉は、弱々しく広がる。部屋にむなしく響く。
「泣いてんのか?」
「ロックオンは、そんな人じゃ」
「じゃあさ、兄貴の何を知ってるわけ?」
ティエリアの力ない反論は途中で遮られた。
「何を教わった?」
翡翠の瞳はまっすぐティエリアを捉える。意地悪く、笑う。


「俺に教えて?」


ロックオンは言って、ティエリアの唇を塞いだ。
「――っ」
突然のキス。呆気にとられている間に、僅かに空いた唇の隙間をこじ開けるように、ぬる、と舌が入ってくる。
反抗できない。依然縛られたままの手首では何もできない。
「く、っ……ん」
歯列をなぞっていく舌を追い出そうと、舌で押し返す。その舌を、絡め取られた。
「ん、ふっ」
思考が掻き乱される。呼吸もままならない。
唐突に解放される。
「こういうこと、してたんだろ? 何、今更純情ぶってんだよ」
「ちがっ」
やはり、反論は許されない。再び唇が塞がれる。より荒々しいそれは、ティエリアの僅かな抵抗すら許さない。噛み付くようなキスに、ティエリアの意識は霞んでいく。酸素が足りない。
侵入してきた舌に歯を立てる。だが、噛み切るわけにもいかない。
目の前のこの男もまた、マイスターなのだ。ロックオンがそうだったように。彼の名を受け継いで。
躊躇った隙に上顎をぞろりと舐められた。
「――っ、あ」
思わず体がびくりと反応を示した。ティエリアの反応がロックオンを喜ばせる。
「ふぁ……」
歯茎をゆっくりと舌先が辿っていく。人に触れられる久々の感覚。ぞわぞわする。ゆっくり、ゆっくり下半身が疼き始める。
「はぁ、は、ぁ」
ようやく解放された時には言葉を発することができるような状態ではなかった。喘ぐように酸素を求める。
膝ががくがくする。立っていられない。それなのに壁に縫い止められた腕のせいで倒れることもできない。
縄で縛られた手首が痛い。

「気持ちいい?」

ロックオンの声がする。耳を塞ぎたい。塞げない。ロックオンと同じ声がティエリアを犯す。
「誰、が」
「もう立ってられないのか? 早いな。それとも、兄さんより巧い?」
自重を支えられないティエリアの足が震える。しかし、ロックオンはティエリアを支えようとはしなかった。
ティエリアはロックオンを睨み付ける。
「死者を、冒涜する気ですか」
自分で言った「死者」という言葉に胸がちくりと痛む。
「冒涜? はっ、そんなんじゃねぇ」
ロックオンは肩を竦めた。
「俺はお前を犯したいだけだ」
その言葉に、どう反応するのが正しかったのだろう。
目の前にいるロックオンがロックオンでないことはわかっている。

だが。

ティエリアは、確実に欲情していた。ロックオンと同じ姿のロックオンに。

「ティエリアは、兄さんが好きだったんだろ」
「だ、から何だと言うんだ」
会って間もない人間に、真情を言い当てられた。ぎり、と奥歯を噛み締める。身体を苛む熱ごと、叫びたいような気持ちを押し込める。
確かに、好きだった。
あの想いを単語として捉えたことはなかった。しかし名前を付けるならば、確かにあれは恋情で、愛情だった。焦がれる想いに自分の本心すらも焼かれ、気付かなかっただけで。
「兄さんが好きだった人はどんな人なのかと思ってさ。俺は兄さんの片割れ。ほら」
間近に迫る顔。逃れようとしても後ろは壁で、どうにもならない。
「同じ顔、だろ」
ティエリアに見せ付けるようにロックオンは笑った。この場に似付かわしくないウインクに、ときめくはずはない。

ない、のに。

「ロック、オン」
「そうだ、俺はロックオンだよ、間違いなく」
会ってから間もないはずなのに見慣れた顔。その見慣れたウインクに、どうしたらいいのかわからない。
「ティエリアは兄さんのことが好きだった。でも、兄さんの『一番』は教官殿だった?」
「……っ、わかるわけ、ない」
「兄さんの一番は俺――家族だったのかもしれない」
「そん、なの、どうだって構わない。彼の自由だ」
唇を噛み締める。
本当に?
本当に、どうでも構わないのか。
彼の気持ちが欲しくはなかったのか?
血が滲む。唾液に溶ける。鉄の味が口に広がる。
「強がってさ……可愛い」
顎を大きな手で掴まれた。噛んでいた歯を無理矢理開けられ、指がねじ込まれる。
「唇噛むなよ。美人が取り柄なんだろ?」
「く、ぁ……」
小さな口内を長い指が暴れる。
「強い、ね……だから気に入ったのかな、兄さんは」
ロックオンがぼそりと言った言葉が、音としてしかとらえられない。
「ん、ぐ……っ」
舌を指で掴まれ、外に引き出される。
吐き気。
嗚咽が漏れる。唾液が溢れては顎を伝い、首を辿っていく。
苦しさに涙が頬を伝う。間接照明に照らされた雫がきらりと光る。昏い。
流す涙が懇願にでも見えたのだろうか。
解放され、ティエリアは荒い息をつく。休む間もなく、服の裾から入ったロックオンの手がティエリアの胸をまさぐる。
胸の尖りを爪で引っ掛かれ、身体が強ばる。
「もう硬い。エロい体してんなー。苦しいのに感じた?」
「ちが……」
「ふーん」
こりこりと転がされる。痺れるような甘さがじわじわと身体を、思考を、侵食しはじめる。
彼との時とは全く異なる交わりだ。
それなのに、思い出すのは彼のことばかりで。
「っ……」
声を飲み込む。息が漏れる。ロックオンに、声を聞かせるつもりはない。
「慣れてるな」
間近にある顔を見たくはない。目を閉じる。胸から広がっていく快楽が、はっきりと感じられる。
「なぁ、兄さんにどんな風に抱かれた? 俺にも教えろよ」
理性ある獣がティエリアを見つめる。ティエリアの向こうにいる彼を見つめる。

「ねぇ、可愛い可愛い教官殿?」

服が引っ張られる。衝撃と共に、びり、と大きな音が耳に運ばれた。
勢い良く服が破られ、ティエリアの細く、白く、しかし僅かに赤い肌が顕になる。
「何を……!」
外気が冷たい。空気が、視線が、言葉が、ティエリアを切る。
「何って、してたんだろ、こーゆうこと」
胸の飾りをねっとりと舐めあげられる。身体が震える。
手が自由にならない。すぐ近くにあるロックオンの頭を引き剥がすこともできない。ティエリアは、一瞬だけその淫猥な光景から目を逸らし、しかしすぐに、きり、と睨み付けた。見下す。
「……下衆が」
「それが? 極上の食べ物があって、見逃す馬鹿はいないだろ」
ロックオンは舌を出すとぺろり、と唇を舐めた。艶やかに光るロックオンの唇に、ティエリアはしばし見入った。
どくん、と心臓が脈打つ。

――ロックオン。

「どうしたぁ? 見惚れたか?」
「そんなわけが……な、やめろ!」
パンツを下着ごとおろされる。逃げようにも拘束は解けず、縛られた手首が悲鳴をあげる。
身を捩っても、それはロックオンを助ける結果に終わった。足元に布が絡み付く。
「へぇ、綺麗だな」
ロックオンのその言葉に嘘はないのだろう。感嘆の言葉と共にまじまじと見られ、涙が溢れる。
彼もそう言ってくれたんだ。
初めての行為に怯えている僕に、優しくそう言って、涙を舐めとってくれて――

「汚しがいがある」

目の前のロックオンは邪悪に獣の笑みを浮かべた。
晒された性器に勢いはない。羞恥と恐怖が勝っていた。伸ばされた手がティエリアの足を掴む。その先を思い描くのは容易くて、ティエリアは目を丸くした。
「や、めろ」
覇気などない。最早虚勢を保つことなどできなかった。
足を固く閉じる。腰をひく。後ろは壁。下がれない。
力強い腕がティエリアのうっすらと筋肉のついた、ほっそりとした白い足を持ち上げた。抵抗が役に立たない。
「……っ」
床につく、右足の爪先だけで体重を支える。左足はロックオンに持ち上げられている。
ひそやかな蕾が、ロックオンの視線に捉われた。ロックオンの指が窄まりをそろりと撫でる。ティエリアの意思に反し、甘さを知っているそこは、ひくりと物欲しげに震えた。
「い、や……」
「だーめ」
ロックオンは愉しげに笑って、指をつぷり、と秘所に突き立てた。
「ゃ、いや、だ……っ」
異物感。紅の瞳を濡らす雫が溢れ、ぱたぱたと落ちる。
彼にしか暴かれたことのないそこが、彼以外に対して開いていく。
「痛いか?」
入れられた人差し指がぐるりと中を掻き混ぜる。乱暴な動きに息が詰まる。
「しら、ない」
「それくらいわかるだろ?」
曖昧に答えるティエリアを嘲笑い、ロックオンはいきなり指を増やした。無理矢理押し入った三本の指が内側を犯す。
「……くっ、ぁ……っ」
苦しさに力を込めてしまい、指を締め付ける。どうにもならない。内臓を掻き出されるのではないかと錯覚するほどの不快感。雫がとめどなく流れ落ちる。
「ここか?」
「ひ、ぁ……ぁ、っ……」
指先が探り当てた一点をぐりぐりと刺激され、苦痛と快楽がない交ぜになった感覚がティエリアを襲う。顔が歪む。
「感じやすいんだな」
にやにやと笑いながら、ロックオンはティエリアを乱していく。
「だったら、もう平気だろ」
指が抜かれ、唐突な安息にティエリアは大きく息をした。安堵も束の間、ジッパーの開く音に息をのんだ。
「まさ、か……」
「ティエリアがいい表情するから、感じちゃっただろ?」
ロックオンの欲望が現れた。膨らみきったそれは、先走りのせいで凶悪に光っている。
「むり、だ。そんなの」
「無理、って言うなよ。どんなミッションもこなすのがガンダムマイスターの役目、ってな」
凶器だ。それ以外の何物でもない。
まだ解けていない蕾にそれがあてがわれる。
「入れるぜ?」
「無理だと、言っている……!」
「知るかよ」
熱くて硬い感触に、おののく。逃げられない。
ぬぷり、と先端が埋め込まれる。ほんの少ししか入ってないにもかかわらず、苦しい。
次の瞬間、一気に貫かれた。
「く、ぁ、あぁっ――っ」
悲鳴しか出せない。後半は声にもならない。熱い。切り裂かれる。骨が軋む。裂ける。身体が真っ二つにされるような。涙が止まらない。頬を伝うそれを、ロックオンの舌がねっとりと拭い取った。予想外のあたたかさに反応する余裕もない。
「狭っ……力抜けよ。き、つい」
「あなたが、いけない、んだ」
「そうですかっ、と」
勢いを失ったティエリア自身を掴まれた。
「なに……っ」
「答える必要はねぇ。わかってるんだろ」
裏筋を指先がちろちろと辿る。
「ぁ……」
ゆるゆると扱かれる。焦らすような愛撫に意識が後ろから逸れる。微かな甘さが積み重なり、直接的な刺激を求めて揺らめきそうになる腰を、かろうじて残っている理性で押し留める。
「ん、あぁっ」
締め付ける力が弛んだ隙に、ロックオンは動いた。下から突き上げられる。
圧迫感。異物感。指とは圧倒的な差のあるそれに、蹂躙される。無理に押し入るロックオンの欲望がティエリアの身体を開いていく。
「ぐ、ぁっ、く……」
漏れ出る声は意味を持つ言葉を作らない。視界が霞む。涙のせいばかりではないとわかった。意識が飛びそうになる。
「ぁ、あ……」
酸素を求めて浅い息を繰り返す。
挿入が徐々に滑らかになっていく。同時にティエリアの意識が霞んでいく。それは、ティエリアの裡がずたずたに傷つき、血を流していることを意味した。
二人の、内面のように。
「あったかい」
ロックオンが恍惚に呟く。
「ほら」
ロックオンがティエリア自身の先端を擦る。
「んぁ……っ」
麻痺していく痛覚に、快楽が突き刺さる。身体を支える足がひきつる。内壁がロックオンのそれをぴったりと包む。
その刺激にロックオン自身はずしりと重さを増し、ティエリアの中に欲望を吐き出した。
「っ……あ……」
どくどくと溢れる白濁がティエリアの体内を満たしていく。熱い。熱さを身体の中心に受け、ティエリアは目を閉じた。
ようやく、解放される。
解放されなかった甘さは下半身で疼いているが、この肉体は解放される。
「……っ」
ずるりと引き抜かれる。
白濁がつぅとむき出しの腿を伝い落ちる。白濁には赤が混じっていた。
ティエリアは解放感にぼうっと宙を見た。何も考えたくない。
腕を壁に縫い止めていた縄がほどかれ、ティエリアは床に崩れ落ちた。白い華奢な身体がどさり、と俯せに床に倒れる。
ロックオンはそれを見下ろしていた。
「ロック、オン」
擦れた声で名を呼ぶ。彼の名であると同時に、目の前の男の名だ。力の入らない手で拳を作る。


自分で呼んだ彼の名の響きに、何故か。
満たされたと、思った。








せっせと続きを書いておりま、す…



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