お嫁さん!


ニルティエ&ライアニュ現代新婚パロ
1万フリリク「ニルティエでライアニュの甘々パロ」です








偶然というか必然というか、実は故意だったりというか。
こんな状況になった所以はこれより前に遡るわけだが、このマンションには新婚ほやほやが二組住んでいたりする。


「おかえりなさい」
「ただいま」
いつものやり取りで出迎えたティエリアに、ニールはにこにこと袋を差し出した。
「なんだ」
「やるよ」
「僕に、か……?」
軽く目を見開いているティエリアの髪をくしゃくしゃと撫でた。
「当たり前だろ。俺の可愛い嫁さん」
「――嫁、という文字は女偏で構成されていて、女性に使う言葉だ。家に入った女、ということを示していると考えられるが、いずれにせよ……」
「照れ隠し、可愛いな」
事実を直接的な言葉で言い当てられ、ティエリアはわたわたとリビングに逃げ込もうとした。
「僕はニールの間違いを正そうとしただけだ!」
立ち去ろうとするティエリアをニールが引き止める。
「逃げるなよ、ティエリア。ほら、ばんざい」
ニールに片手を取られ、持ち上げられる。促されるままに両手をあげたティエリアは、淡いオレンジのエプロンのリボンをするりと解かれ、脱がされてしまった。
「今から料理をするというのに、何を……」
「いいからいいから。ちょっと目ぇ瞑ってろ」
がさごそと袋の音。ぱさり、と上から何かを被らされた。
「開けていいぞ」
不審に思いながら目を開ける。ニールにくるりと体を反転させられ、玄関に備え付けられている鏡に映る自分の姿を見て、ティエリアは真っ青になった。




同時刻。ニール家の隣の隣の部屋。
「アニュー。おみやげ」
キッチンに立つアニューに、ライルは後ろから抱きついた。アニューは手に持っていたじゃがいもを取り落とした。
「もうっ。帰ってきたならそう言ってよ。驚くじゃない」
意志の強そうな瞳がライルを睨みつける。
「驚かせたかったんだから、言ったら意味ないだろ。ただいま」
「……おかえりなさい」
楽しげなライルの様子に、アニューはがっくりと肩を落として包丁を置いた。
「そんなことしてると夕飯が遅くなるわよ」
「へーきだって。俺のプレゼントが絶対に役に立つ」
ちぅ、とライルはアニューの首筋を吸って赤い跡を残した。
「ちょ、っと。やめてってば」
エプロンの後ろのリボンを解き、淡いピンクのエプロンを床に落とす。アニューの振り上げた拳から逃げるために距離を取り、アニューに袋を差し出した。
「何、これ」
アニューの振り上げた拳が宙で止まり、力をなくしてゆっくりとおりた。
「だから、プレゼント」
「私に?」
「当然だろ。兄さんに渡すなんて論外だし、ティエリアは……まな板だけどまぁアリか」
アニューは訝しげに眉をひそめた。
「まな板とあなたがくれるものにどんな関係があるっていうのよ」
「見ればわかるって」
ライルのウインクに、渋々袋を開け、出てきた中身に、アニューは心底迷惑そうな顔をした。


 + +


ばたり、と二軒の玄関のドアがほぼ同時に開いた。
『おい』
そっくりな声が重なってマンションの廊下に響く。幸いこのフロアには三室しかなく、残り一部屋の住人は留守にしているようだ。
「奇遇だな。丁度会いにいこうと思ってたところだ、ライル」
「俺もだよ、兄さん」
ディランディ兄弟が顔を見合わせた。にやり、と笑う。
「兄さんに見せたいものがあるんだ」
「へぇ、ホント奇遇だな。俺もだ」
どちらの部屋もドアは開けっ放し。
「兄さんからお先にどうぞ?」
「んー、じゃあ同時だな」
せーの、とばかりに二人はそれぞれに名前を呼んだ。
「ティエリア」
「アニュー」
二つの部屋から物音がして、最初に顔を出したのはアニューだった。身体はドアに隠し、顔だけをひょこりと覗かせている。
「ちょっとライルっ! 恥ずかしいじゃない、こんなの」
一方、ティエリアが姿を現す気配はない。
「ティーエリア。出てこいって」
「嫌、だっ。こんなの……万死に値する」
玄関に戻ったニールがティエリアの腕を引っ張り、廊下に連れ出した。ティエリアを目にしたアニューはぽかんと口を開け、ライルは一瞬の後に笑いだした。
「可愛いだろ?」
ニールに無理矢理前に押し出されたティエリアは、ゆったりとしたフリルがたっぷりとあしらわれた、白いふりふりのエプロンを纏っていた。
「こ、んなの……」
地面を見つめ、裾をぎゅっと握っている。
「なぁ、兄さん」
「なんだ弟」
「やっぱ双子なんだな、ほら」
アニューがドアの陰からおずおずと出てくる。薄いピンク色の、これもまたフリルたっぷりのエプロン。
「こんな実用的じゃないやつ、どうするのよ。大体、私なんかに似合わないし……」
顔を真っ赤にして部屋へ戻ろうとするアニューをライルが引き止めた。
「似合ってるぜ? いつもよりもっと美人に見える」
「ちょ、っと。他の人がいるのに恥ずかしいこと言わないで」
「事実なんだから仕方ないだろ」
「ライル……」
ライルとアニューが二人の世界に入り始める。それをニールのいつもより幾分低い声が邪魔した。
「――ライル」
「っと、なんだよ、兄さん」
ニールはすぅ、と息を吸い込むとライルを睨み付けた。
「お前は何にもわかっちゃいねぇ」
「はぁ?」
「いいか、ライル。ふりふりエプロンといったら白に決まってるだろ。ティエリアを見てみろよ」
「な、何っ……」
ニールはもじもじと身を小さくしているティエリアをライルに示した。
「この清楚さ、ピンクじゃありえない」
ニールは後ろからティエリアの肩を抱いた。
「何言ってんの、兄さん。ピンクに決まってる。俺の可憐なアニューを見てみろよ……あぁ、野郎にピンクは似合わないか」
ライルはアニューを示しながら、ニールを挑発するようににやりと笑った。
「俺の嫁さんにピンクが似合わないわけないだろ。いつもピンクのカーディガンを着こなしてるこの愛らしさ」
すり、とニールはティエリアに頬擦りした。
「だけどな、このすらっとした高潔さは白いエプロンでこそひき立てられるんだ」
「そりゃ、ティエリアには俺のアニューみたいな柔らかくて豊満な胸はないわけで? すらっとしてるだろうよ」
「ライルっ……」
顔を赤くしつつも黙って傍観していたアニューは、ライルの袖をひっぱった。
「――セクハラで訴える」
ティエリアが静かに呟く。握り締めた拳には力が入って関節が白くなり、ふるふると震えている。
「とにかく」
ニールが、ライルが宣言する。
『俺の嫁さんの方が可愛い!』
ニールとライルが睨み合う一触即発の雰囲気に、ティエリアとアニューは息を呑んだ。
その時。

「もう、僕の家の前を占領しないでくれる?」

言い争っている二人に、割って入った声。四人が揃って声のしたほうを見る。声の主はチャリン、と鍵を鳴らした。
「リジェネ・レジェッタ……!」
「そんなに驚かないでよ、ティエリア。君たちがいるのは僕の家の前なんだからさ。傷つくなぁ」
ちっとも傷ついていない様子で、リジェネは飄々と言った。
「それにしてもティエリア、可愛いカッコしてるね。アニューまで」
リジェネは四人を押し退けると自宅の鍵穴に鍵をさして回した。がちゃりと重い音がする。
「それじゃあね、新婚さんたち」
リジェネがドアを開けて入っていく。ドアが完全に閉まりそうになって、また少しだけ開いた。リジェネが顔だけ出して、人差し指を立てる。
「そうそう、なんか言い争ってたみたいだけどさ、僕にしてみれば白もピンクも邪道だね。不毛だ。そんなのどっちでもいいよ」
その言葉に、呆けていたニールとライルは眉をぴくりと動かした。
「何だと……?」
「じゃあ何ならいいってんだ」
二人の言葉に、リジェネはにっこりと笑った。


「裸エプロンに決まってるでしょ」


ばたり、とドアが閉まった。
「ライル」
「兄さん」
「今日はもう解散だな」
「あぁ」
それぞれがティエリアとアニューの手を取り、玄関に戻っていく。
「ちょっと、ライル……?」
「ニール? っ、まさか!」
今回はアニューよりティエリアの方が察しが良かったらしい。
両家のドアが乱暴に閉まる。鍵がかけられる音がした。





その夜、二つの扉の向こうで何があったかは……神のみぞ知る?







あんまり甘くなくてすみません…
もう一つネタを詰め込もうかと思ったんですが、長くなりすぎるのでまたいつか。
楽しいリクをありがとうございました!






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