1-4
「大丈夫か?」
そう尋ねながらユキは青年に手を差し出す。
手を差し出された青年は、じっとユキを見つめる。
(……?)
何を見ているのだろうか。自分の顔に何かついているのか、それとも、後ろに何かがあるのか。
そう思ったが、ふ、と視線を逸らされ、
「ああ」
と言って、青年がユキの手をとり、立ち上がる。
ユキが青年に怪我がないかどうか見ていると、左肘から血を流しているのが見えた。
「Mi scusi!」
顔を前で手を合わせて謝る。
「俺がちゃんと見ていればぶつからなかったのに!」
「別にいいぞ、これくらい。すぐ治るしな」
「手当てするからうちに!」
「いや……」
「手当て!」
「……おう………」
青年を無理やり引き連れて、ジェシカの待つ家へと戻る。
怪我してるのにそのまま帰すとか、自分が個人的に許せないのだ。
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