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07 初めて家にあげた異性



どうしよう、どうしよう!!

有名人を呼べるような部屋じゃないんだけど!!



「あ、あのっ!! やっぱり定食屋とかに行きませんか?」
「えー俺様、もう筑前煮食べる気満々なんだけどー」
「う……けど、私の部屋汚いですし……」
「その方が生活感あって良いよ」



そういう汚さとかじゃないんだけど……。


一人暮らしって、掃除とかしなくても誰にも怒られないから、ついつい片付けるのサボっちゃうんだよね。
下着とか色々出しっぱなしだし。




「それに、もう材料買ってなまえちゃんの家に向かってるのにそういう事言う?」
「……すみません。けど、私の家に来るなら少し外で待ってもらわないといけないんですけど……」
「んー俺様、汚くても気にしないよ?」
「そ、それはだめです! 真剣に汚いんで!」
「あは、そうなの?」




猿飛佐助の方を見て、手を前で思いっきり振れば、くすりと笑った。
わ、どうしよう、御宅田さんの格好なのに格好良いと思っちゃった。



赤くなりそうな顔を隠すために、前を向くともう私のアパートが近くに見えていた。




「あ、このアパートです」
「へーそうなんだ」
「二階なんで、私も荷物持ちます」
「え? なんで?」
「だって、エレベーターないですし。猿飛さんも二つも買い物袋持って上るのは辛いと思って」
「それなら大丈夫だよ。俺様結構力持ちだったりするし」
「けど……」



どう見ても重たそうなんだけど。
顔は帽子と眼鏡で隠れてるからあんまりわかんないけど、手の血管浮いてる。

そりゃ、こんな買い物袋二つパンパンに入ってたら、重たいよね。
それをスーパーから駅を経由して私の家までずっと持ってたんだから、血管も浮くよ。




「なまえちゃんに夕飯ご馳走してもらうんだからそれくらいしなきゃね」
「けど……お金も払ってもらっちゃいましたし」
「だから、女の子にお金払わせるのは俺様のポリシーに反するってさっき言ったでしょ?」
「……そうですけど」



ほんと猿飛佐助ってすごい。
材料のお金だけじゃなく、切符代まで払ってくれるなんて。
芸能人ってギャラはどんだけ貰ってるんだろ。



格好いいよりも、給料のことが頭に入ってくるなんてがめついな、私。


そんなことを思いながら、階段を上がって私の部屋の前に着いた。



「じゃあ、ここで少し待っててください」
「りょーかい」


猿飛佐助の声を聞いて、部屋の中に入った。



「うはぁ……」


汚いよ。女の子の部屋だとは思えない。

下着は出しっぱなし。皿は洗ってない。洗濯物の山。朝食べた物や、本の出しっぱなし。
何で今まで掃除しなかったんだろう。



……とりあえず、クローゼットに入るものは全部入れよう。
そんで、皿を洗って、洗濯物は今洗えないから、洗面所は立ち入り禁止にして全部洗面所に放り込もうよう。
掃除機かけて、終わり。


計画を立てて、私は動き出した。










「ふーっ……やっと終わった……」

汗を拭って、綺麗になった私の部屋を眺めた。
今、クローゼット開けたら雪崩が起こるだろうな。


うん、これからはちゃんと掃除しよう


なんて思いながら、玄関を開けた。



「お、お待たせしました」
「ん」


携帯をいじってた猿飛佐助は荷物を持って部屋に入った。




「綺麗だねー」
「は、はい。ちょっと頑張りました」
「なんか、なまえちゃんって感じがする、この部屋」
「え? そうですか?」
「女の子っぽいものが全然無い」
「うっ……それは……」



だって、流行の物とかわかんないし!
もし自分が良いなと思って買った物がみんなから見たらダサい物だったら嫌だし。



「まー俺様、こういう部屋の方が落ち着くけど」
「ほんとですか?」
「うん」



良かった。人を不快にさせるような部屋じゃなくて。

ほっと胸を撫で下ろすと、猿飛佐助が床に買い物袋を置いた。



「じゃあ俺様、そこの部屋で待ってて良い?」
「あ、はい。テレビでも見て待っててください」
「んー」



猿飛佐助がベッドに凭れて座ったのを確認してしゃがみこんだ。




「ち、筑前煮だよね……?」



できるかな。……いや、作ったことないからレシピ無しじゃ絶対無理だ。
だって、あんな輝かしい笑顔で、久しぶりに食べたいから作って。なんて言われたら断れないよ。
今考えたら、素直に作った事ないので無理ですって言えばよかった。

ああ、私の馬鹿。



しかも付け合せの味噌汁とほうれん草のお浸しも作ったら何時間かかるんだろう。


「あはは、泣きそう」

けど泣いたって状況は変わらないからシンクの下を開けて、料理本を探す。




確か、お母さんが一人暮らしするときに料理本を送ってくれた筈なんだけど。
一回も使わずここに放り込んだと思うんだけどな。




「……あ。あった」


引っ張って引きずり出せば、一回も使っていないはずなのに、端が折れてたり埃を被ってたりと古びてた。
埃を掃って筑前煮を探すためにページを捲っていると、筑前煮のレシピが載っていた。



「良かったぁ……」



無かったらどうしようかと思った。
必要なものを買い物袋から取り出して並べていく。


全部出し終えて、太股を叩いて立ち上がった。



「やるしかないっしょ」


もし、失敗したら全力で謝ろうなんて脳内で数時間後に自分が土下座してる姿を考えて袖を捲くった。



(さあ、成功できるのか)
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