4年のクリスマス。 毎年のことのように実家に帰るはずだった。 けど今年はお父さんがアフリカに三ヶ月出張になってしまって、お母さんもそれについていくことになってしまった。 そのため私は日本には帰れなくなってしまった。 こんなところにいるより日本にいるほうがよっぽど幸せだけど、クリスマスにはほとんどの生徒が帰省しまうため、まだましだと思うことにした。 いじめてくるやつがいなければ自分の好きなことができるし。 それにリリーは帰ってしまうけど、セブルスは毎年残るため、一緒にいられるから嬉しかった。 しかし、セブルスとクリスマスや新年を迎えることに胸を躍らせているとなんと、今年はセブルスも実家に帰るらしい。 結局私は一人でホグワーツに残ることになってしまった。 相当落ち込んだけど、ポッターたちも毎年帰っているからまあいいかと楽観視していた。 頑張って呪文の練習をしようと意気込んだ。 そうして、私はリリーとセブルスを見送った。 寂しかったが、しばらくの我慢だ。 今年の居残り組はハッフルパフが2人でスリザリンとレイブンクローはいないらしい。 グリフィンドールは私とあと男子が一人だけだとリリーが言ってた。 その言葉に私は心が躍った。 生徒が少ないのは都合がいい。 誰のことも気にせず怯えず好きなことができる。 列車を見送った後、図書館に足を運んだ。 大きな机を一人で占領して資料を大げさに広げる。 宿題を終わらせるために羊皮紙に羽ペンを滑らしていく。 暖かな日差しを受けて気分良く宿題をしていると陰が差した。 どうせハッフルパフの誰かだろうと気にせずに続ける。 「相席いいかな」 かけられた聞き覚えのある声に顔を上げる。 私が驚きで返事できないでいると、ルーピンは対して気にした様子もなく私の広げられた資料を少し片付けて自分の勉強道具を広げた。 向い合わせになったルーピンと目が合う。 「ど、どうして……」 「僕たちも今年は残ることにしたんだよ」 「っ……」 僕『たち』ってことは、ポッターたちも残っているんだ。 一気に気持ちが沈んでしまった。 「頬に傷が出来てるよ」 この前女子生徒に攻撃呪文の的にされた時についた傷だ。 もうかさぶたになっているそこをルーピンの傷だらけの指が滑る。 思わずその手を力いっぱい払う。 驚いて手を引っ込めたルーピン。 私も終わってから自分の行為に気づいた。 たまらなく気まずくて羊皮紙に目を向ける。 「な、馴れ馴れしい」 「……ごめんね」 ルーピンの謝罪に余計に罪悪感が湧いてきた。 流石に今の言葉は言いすぎた。 けどもう言ってしまった言葉は取り消せない。 レポートで気を紛らわせようとしたけど先ほどとは打って変わってなにも思いつかなくなってしまった。 まるで英語を忘れてしまったようだ。 レポートにはインクの染みができた。 「僕が来たから、宿題が手につかなくなった?」 「え」 「僕が目の前にいると邪魔かな」 思わずルーピンを見ると、この前のように捨てられた子犬の目をしていた。 私がまるでいじめてるみたいだ。 「前も言ったけど、私といるとルーピンにいいことはないよ」 「どうして」 「だから、ポッター達に見つかったら絶交されるよ。ルーピンにとったらあのクズたちは大切な人なんでしょ」 呆れたように私は言う。 なんでこんなことをいちいち説明しなきゃならないんだ。 ルーピンはそんなに馬鹿でもないだろうに。 人と話すのは苦手なのに。 「僕が聞いているのは、どうしていいことがないと一緒にいちゃいけないの」 「それは……」 「僕は、友達を選ぶときに利害なんかで選ばないよ」 「そ、そんなの、私だって……」 ルーピンのもっともな言葉にうまく言葉が返せない。 けど、ルーピンの話をそのまま受け取ると、ルーピンは私と友達になろうとしていることになる。 そんなわけないのに。 「僕は君と友達になりたいんだ。これは贖罪のためじゃないよ。純粋に君に興味があるんだ」 「っ!」 ありえない言葉が帰ってきた。 もう意味がわからなくて。 なんでもいいからルーピンから離れたかった。 私は荷物をまとめて立ち上げる。 「今日のクリスマスパーティーみょうじさんも来てね!」 私が出ていこうとした時にそう言い放った。 返事なんか出来る訳もなく図書館を飛び出した。 私と、友達に! 友達になりたいって言った! 頭の中がそれで埋め尽くされる。 そんなやつこんな学校にはいないはずなのに。 「いらない。そんなの、いらない」 私にはリリーとセブルスがいてくれるだけでいいんだ。 ほかの人間なんていらない。 自分にそう言い聞かせた。 (湧き上がる別の感情に混乱した) [戻る] ×
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