それでも僕は



ジェイドは国を出る前に、一応は元仲間に挨拶でもしていこうかと考え、ガルディオス伯爵邸に立ち寄った。

庭先で花の手入れをしていたペールに声を掛けると、ガイの私室まで案内してもらう。

「ガイラルディア様、お客様がお見えです」
「ぅえっ!?」

奇妙な返答に、不審に思ったペールが扉を開ける。

「ちょっ、ペール!?」

焦ったガイの声。
同時に、ジェイドの目の前を通過していく白いもの。

反射的にソレを捕まえたジェイドに、ガイが大慌てで声を飛ばす。

「ジェイド!ソレを広げるなよ!?」

しかし、時既に遅し。

ジェイドが捕まえたソレは、紙飛行機であった。
となれば、やはり広げるだろう。

中を見たジェイドは、やや目を見開いて、その後、微妙な表情でガイを見た。

「…………ガイ」
「あぁ〜……」

ガイは頭を抱えた。
ソレはジェイドにだけは絶対に見られたくなかったのに!!

「貴方、恥ずかしくないんですか?
――こんな熱烈なラブレターを紙飛行機になんてして」
「恥ずかしいから、見るなって言ったじゃないか!!
いや、その前に、ラブレターじゃねぇし!」

紙飛行機の中身は、ルークに当てた手紙だった。

――お前が大切だ。
――お前がいたから、今の自分がいる。
――お前だけが、自分にとっての"ルーク"だ。

――……会いたい。


もう一度、紙面に目を落としていたジェイドが怪訝そうな視線を向ける。

「………これで、ラブレターでは、ないんですか?」
「そうだぜ。
俺の、ルークへの率直な気持ちだ」

ガイは、そう恥ずかしげもなく、胸を張った。

深く溜め息を吐いたジェイドに何を思ったか、ガイはふと視線を落とした。

「………アイツの所まで、届かないのは承知してんだけどな。
どうにかして、気持ちを伝えたかったんだ……」

そう言って、苦く笑う。

ジェイドは、そんなガイを無表情に見て、手紙を軽く掲げた。

「……こちらは、私の方で処分しておきますね」
「…………あぁ」

ガイは苦笑したまま、軽く肩を竦めた。

「そうしてくれ。
――それで?お忙しい旦那が何の用だい?」

ようやく、いつもの調子に戻ったガイに、ジェイドは軽く礼をする。

「しばらく、空けることになりましたので。
陛下をよろしくお願いします、と依頼しに来ました」
「へえ?何処に行くんだ?」

口調から、任務ではないだろうと踏んだガイが訊ねる。

「ヒミツです♪」

意味深な笑みを浮かべ、解答を避けたジェイドは、何の未練もなく、ガイに背を向けた。

「では、頼みましたよ」
「へいへい」

ジェイドが身にまとっていたのが、見慣れた青の軍服ではなかったことに、ガイはやっと気付いたが、その時にはもう、ジェイドの後ろ姿はガルディオス邸の門を遥かに通り過ぎていた。



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