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来世に蛇の夢を見る

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リドルは誰も好きにならない。リドルは誰も愛さない。唯一彼が好んで傍に置くのは人ではなく蛇だけだ。ならば私は、蛇になりたい。
「それで蛇になったのかい?」
ゆるりと嗤うリドルは相変わらず青白い顔をしていて、笑った顔が、蛇みたいだと思った。
「そうよ」
ようやく成功した動物もどき(アニメーガス)。それは思ったより体力を消耗するものだった。慣れればこの疲労感も無くなるのだろうか。
「くだらない。実にくだらない動機だ」
リドルは吐き捨てるように言葉を返す。口元に浮かぶそれは嘲笑だった。
「いくら姿を変えてみても君が人間である事実は変わらない。アニメーガスはあくまで動物“もどき”だ。どれ程姿を似せた所で君は人間以外にはなれない」
「知ってるわ」
「なのに君は満足そうだね。どうして?」
多少は興味を引いたのだろうか。侮蔑の中に僅かな好奇心を覗かせてそう尋ねるリドルをじっと見返して、私はゆっくり言葉を返す。
「貴方気付いていないのね。蛇になった私を見る時の貴方の瞳がどんな色をしているのか」
暗い色の瞳の奥で 赤い光が明滅していた。押し殺した興奮と、口元に浮かぶ笑み。この人はそれに気付いていない。
「憐れだ」
リドルは気分を害したようだった。形の良い眉を跳ね上げて短くそう言い切ったリドルは、もう何も話さなかった。

生まれ変わりがもしあるのなら、私は次こそ、蛇になりたい。
そうしたらこの歪んだ人の好意のひとかけらくらいは、手に入れられそうな気がするから。人間である以上、どう足掻いても手に入らないものを。せめてそのくらいの夢は見させて欲しい。

「私は蛇になりたいの」
そうしたら貴方は愛してくれるかしら。

(リドル/来世に蛇の夢を見る)


 

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