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愉しげに哂うひと

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長く煙る(けぶる)睫毛の下で 血のように赤い瞳がゆるり とこちらに向けられる。
そんな長い睫毛で、艶めいた目線で、こっちを見ないで。しなやかに長い指先でゆるゆると輪郭を撫でて、極上の笑みで、少し掠れた声で、名前を呼ばないで。

勘違い、させないで。

だって嘘なのでしょう 貴方は誰も愛さない。恋などしない。人を信用しない。執着こそすれ、貴方は私を好きなわけじゃ、ない。

そんな、の

「ずるい…」
はらはらと流れ落ちる涙を指で掬い上げて、リドルは微笑んだ。ぴったりと密着した体は熱く、やけにリアルで愛おしかった。
「ずるい?どこが?」
「わかってるんでしょう」
「ああ」
「ならやっぱり貴方は酷い人だよ」
「君も素直に気持ちを認めてしまえば良い。そうすれば、楽になれる。素直な君は好きだよ。ほら、言ってごらん?僕を満足させることができたら、可愛がってあげても良い」
歌うようにするすると。口付けの合間に交わす会話。唇が触れそうなほど間近で、笑みを含んだ言葉を紡ぐひと。
「あげない。言葉になんて、してあげない。」
泣きはらした瞳で挑むように睨みつける。目じりは赤く、紅を注したようだった。
この気持ちは、私だけが知っていれば良い。認めてなんて、やるものか。
「強情だね…」
言葉とは裏腹にリドルは至極うれしそうに笑う。艶めいた吐息が耳朶を掠め、その度熱が上がってゆく。
「どうせ貴方が飽きるまで、なんでしょう?使い捨ての玩具なんて、まっぴら」
「それでも君は、拒めない」
「そうだとしても、認めない」
「賢明な判断だ」
きっとこの人は私が想いを認めた途端に興味を失くす。わかっているから、私はそれを認めない。
いつかリドルが飽きてしまうまで、私とリドルはこうして不毛なやり取りを続けるのだろう。誰もしあわせになんてなれない。誰もしあわせを望んでいない。こんな歪な関係を、私たちは終わりが来るまで繰り返す。
ぐるぐると、最期まで。

(リドル/愉しげに哂うひと)

 

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