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kobakoまとめ *2021.10月号
・ほぼ魔族長と部下夢主(+たまにリザル)の会話文です。
・時系列等々バラバラ
・series設定の話も含まれています。


▼ 傘を手に入れた主従

「……何だこれは」
「空で売ってた、“雨を防げる棒”らしいです。空じゃあんまり雨は降らないですけど、だからこそ濡れたくないって人の声を集めて出来たらしくて」
「人間どもが何を喚いていたかなんて興味はないよ。大体、こんな棒でこの雨が防げるわけが無いだろう。一滴でもワタシに雨水を当てたら、お前を一日雨ざらしにするよ」
「ふふん、ただの棒だと思うなら、ご覧に入れて差し上げようじゃないですか」
「前振りはいいからさっさと終わらせろ。お前のくだらない話に付き合ってる暇なんて、」
「えいっ(バサァッ!!」
「ッ!!?(びくっ」
「…………」
「…………」
「……マスター、これ開いた瞬間、体びくってしなか、」
「死にたいか?」
「嘘です。勘違いです。何も見てません」

▼ 傘を手に入れた主従2

「ほら、この開いた部分が屋根代わりになってちゃんと防げてますよ、雨」
「……だから何」
「マスター……拗ねてます?」
「……八つ裂きにされたいのかな?」
「う、嘘です……。で、でもマスター、これで濡れるの嫌いなマスターも、お体濡らさずに済みますよ!」
「はッ、どうせ完全に防ぎ切ることは出来ないんだろう? そんな中途半端なものを使うくらいなら、部屋から出なければいいだけの話だ。こういう場合は、外に出た方が負けなんだよ」
「天下の魔族長がドヤ顔で引きこもり発言しないでくださいよ……」

▼ 傘を手に入れた主従3

「……そもそも、雨を防ぐにはこの棒を四六時中手に持っておかなければならないのだろう? 馬鹿部下が主人に配慮を見せようとしない限り」
「可能なら私が持ちますけど、私とマスターの身長差だとかなり無理があるんですよ。……だから、一回でいいので、使っていただけたら嬉しいなって……」
「はぁ……。……これで満足か?」
「そこに私がお邪魔したら、満足です!」
「は」
「…………」
「……何、その顔は」
「……なんか、一緒に入ってみたはいいものの、異常にドキドキするというか……そわそわする絵面ですね、これ……」
「いい加減学習しないね、お前も」

▼ 傘を手に入れた主従4

「……空では“アイアイガサ”って言うらしくて、ギラヒム様とぜひやってみたいなと思い、なけなしのルピーでこれを買ってきまして、早速やってみたところ、想像以上の破壊力でした」
「順を追って説明を聞いても愚かだという感想しか出てこないね」
「時にマスター。……私は何故、腰抱えられたまま未だここから出してもらえてないのでしょうか」
「お前から乗り込んできたのだろう。寛大な主人が仕方なく、付き合ってあげているというのに文句を垂れるなんてね」
「……雨、まだ止んでないですけど、お散歩付き合ってくれるんですか?」
「今だけはね。途中で気が変わって、お前を雨の中に置き去りにしてしまうかもしれないが」
「……じゃあ、気が変わらないよう、頑張って楽しいお話します」
「勝手にすればいい」

▼ いつもよりあったかめの湯たんぽ

「っくしゅ、」
「ふむ。お前が言っていた通り、悪化して寒気を感じているようだね」
「……そです」
「仕方ない。慈悲深く愛情に満ちたこのワタシが、特、別、に、お前の身を温めてあげようじゃないか」
「……ありがとございます」
「フ、本来なら床に這いつくばって全身で感謝を示させるところだが、許してあげよう。ほら、お前からももっとこっちに身を寄せるんだよ」
「……マスター」
「何だい」
「看病というか、付き添いは嬉しいんですけど。……本音は熱出てホカホカしてる私の体抱きたいだけですよね?」
「…………。……チッ」
「チじゃないですよ、なんでちょっと隠せるつもりでいたんですか。風邪ひいた部下を便利グッズ扱いしないで下さい」

▼ かぼちゃ殺害事件

「……毎年、この時期になると空ではみんなかぼちゃを食べたり中をくり抜いて火を灯したりするんですよ」
「ほう」
「で、大地でもそういうこと楽しみたいなと思いかぼちゃを調達してきまして、頑張って中をくり抜いてみようとしまして」
「結果、この惨殺された状態になったと?」
「…………」
「この食物も哀れだよねぇ。食されるために生まれてきたというのに、心無い破滅的不器用のせいで無駄に生を終えてしまうこととなったのだから」
「かぼちゃ側に同情された……」
「ここまで無慈悲な惨状を見ればね。清らかなワタシの心は食物にすら憐れみを抱いてしまうんだよ。ほら、少しでも罪悪感があるなら素直に謝罪したらどうだい?」
「……かぼちゃさんごめんなさい」
「フ。……馬鹿らしい構図」
「マスターがやらせたんじゃないですかッ!!」

▼ だいたい読まれてる

「あともう一つ、この時期の空の慣習があるんですよ」
「興味ないね」
「…………」
「不躾な拗ね顔だね。聞いて欲しいなら素直におねだりしたらどうだい?」
「…………お話、聞いて、欲しい、です」
「フン。……何」
「……さっき話したかぼちゃのお祭りに合わせて、主に小さい子たちが仮装をするんですよ。もともとは魔除けとかそういう意味があったらしいんですけど」
「そんなことをしたところで魔族が退けられるわけがないのに、つくづく人間は愚かだね」
「それは、そうですね。……で、その仮装グッズをですね」
「却下」
「先に続き察して先に切り捨てないでくださいよ!! たぶん当たってますけど!!」
「くだらない発言をしている自覚があるなら最初から口にするな」
「くだらなくはないです!! 私にとって……いや、世界にとって必要なんです!! ──我らがギラヒム様の仮装がッ!!」
「真顔で訳の分からないことを喚くな」

▼ よくわかんないけど楽しそう

「とやっ」
「ッ!!?」
「た、たか! 予想以上に高い! 足つかない!!」
「……お前」
「はい?」
「主人の背後からいきなり飛びかかるなんて、振り落とされて脊髄を砕かれる覚悟は出来ているようだね?」
「いやあの、美しいお背中をぜひ間近で見たいなと思った次第でありまして……て、ていうかマスター、私の体力じゃこのままここにぶら下がった状態でいるの、きついので、屈んでいただけると嬉しいかなって……!」
「随分横柄なことじゃないか。ならワタシはこのままお前を振り回して、払い落としてあげるしか、ないねッ!!」
「ぎゃあッ!! ま、ますた、そんな勢いで体ひねらないで!! 遠心力で!! 腕が引っこ抜けそうです!!」
「いつまで耐えきれるか試してみようか!? そのままそこの柱に当ててみるとかねぇ!?」
「ごめんなさい調子にのってました助けてぇぇ!!」


「……リザルの兄貴、あれは今何が行われてるんすか?」
「遊ンでるだけだよ、見なかったことにしとけ。考えるだけ脳ミソの無駄遣いッてヤツだ」

▼ 魔族長とお勉強_他種族のスカウト

 他種族を魔王軍に勧誘しにいく魔族長に同行してみた。

*勧誘が上手だった場合
「君たちはこの地方に住まう亜人に弾圧されていると聞いているよ? もし魔王軍に加わるのであれば、見返りとしてあの目障りな亜人どもを掃討しに行ってあげよう。悪くない話だろう?」
「(交渉してるマスター、かっこいい……。けどその掃討、主に私がすることになるんだろうなぁ……)」

*勧誘がヘタクソだった場合
「こちらに加われば──このワタシ、ギラヒム様の肢体を、そして造形美を! いつだって目の当たりに出来てしまうんだよ!! なんとも素晴らしい条件だよね!? 安心して魅入られてくれて構わないよ!?」
「ま、マスター、待って、抑えて下さいッ……! その口説き文句で落ちるのたぶん私しかいないですから……!!」

▼ 魔族長とお勉強_共闘について

「……共闘の方法、ですか?」
「随分疑わしい声を出すじゃないか。このワタシが直々に、一馬鹿部下であるお前に付き合ってあげようと言うのに」
「一馬鹿部下ってちょっと語感良さげに言わないでくださいよ。……じゃなくて、共闘って私とマスターが一緒に戦うってことですよね? いつもみたいに私が矢面に立たされるんじゃなくて」
「それ以外に何がある。嫌だと言うのなら、次にワタシが前に出る戦線ではお前ごと斬り伏せてあげるけれど」
「もう何がしたいのかわからないですそれ。……嫌だとは全然思わないですけど、その、マスターから提案されたのが意外で」
「……いつまでもお前単身の力で切り抜けられる戦闘ばかりだとは思っていないからね。ワタシが前に出る場合もお前を最大限活用するために、共闘の訓練は必要なことだよ」
「納得しかないお答え……。……でも、ぜひ頑張りたいです。マスターの力になれるのなら」
「フ……力になる前に、ワタシに斬り裂かれてしまわない努力をしないとだけどね?」
「が、頑張ります。とりあえず、死なないように……」

▼ 部下お誘い-成功パターン

「……マスター」
「随分物欲しげな顔だね?」
「…………欲しい、です」
「──。……へぇ、珍しく素直におねだりするじゃないか。何もしていないのにそこまで欲情してしまっているなんて、部下のくせに強欲がすぎるよねぇ?」
「何も言い返せないです……」
「ワタシの美に酔いしれた者が自制心を失ってしまうのも当然の話ではあるけどね? それ相応の対価は支払ってもらうよ?」
「わかり、ましたから。だから……ください」
「フッ……悪い子」

▼ 部下お誘い-失敗パターン

「マスター……」
「何」
「えっと、その……甘えたい気分かなって思ってみたりしたんですけども……」
「ふぅん……甘えたい、ねぇ? そうお願いしただけですんなり与えてもらえると思っているなら、また一から教育し直さないといけないね?」
「う……、……何したら、いいですか」
「そうだね……足を舐めさせるのもそろそろ飽きてしまったし、」
「(マスターが飽きるほど足舐めさせられたんだ、私……)」
「……別のところを舐めさせるか、舐めるか」
「別って……」
「…………ククッ」
「ヒッ!! やっぱりいいです!! 強欲がすぎました!!」
「今さら逃れられるとでも? なに、痛いのは最初だけだよ。後はすぐに良くなる。それに終わればいくらでも甘やかしてあげるのだから、悪くない話だろう? ねぇ……リシャナ」
「む、むむ、無理です、許して──ッ!!」

▼ 触り心地が良かったらしい

「……(ぷにぷに」
「…………」
「……(ぷにぷにぷに」
「…………」
「……(ぷに…」
「……マスター」
「何」
「なんで、さっきから指で私の唇ぷにぷにしてるんですか……?」
「………………ぁ、」
「…………」
「……別に」
「(今絶対『あ』って言った……)」

▼ 勇者のアイテムを見る主従

「なんで勇者には便利そうな武器とか道具とかが与えられるのに、私たちには何もないんですかね」
「あれらを欲しいと思うお前の思考がそもそも理解出来ないけれどね」
「逆に欲しくないんですか? マスター。例えばあの、すごい風出てくるツボとか」
「使用用途がない」
「……マスターのマントをこう、下から」
「ああ、それならば一つだけ欲しいものがあったね」
「な、なんすか……」
「くだらないことばかりをのたまう部下を縛って、引っ叩いて、調教してあげられる『ムチ』には、ワタシも興味がある」
「ヒッ……! だ、だめですよマスター! きっとリンク君だってそんな使い方したりしてないはずです!」
「フッ、それがどうやら、あれを使って彼も強奪行為に勤しんでいるようだよ? 上手く使えば、お前の服も簡単に剥いてあげられそうだねぇ……?」
「勇者の武器はそんな使い方しちゃダメですッ!!」
「お前が言えたことではないよね」

▼ 勇者の装備を見る主従

「装備一つで熱防いだり泳げるようになったりするのは、羨ましさを超えてちょっとずるい気がします」
「へえ」
「……興味なさそうですけど。私がそういう場所に行けるようになったら、マスターにとっても得じゃないですか?」
「ないものねだりをするほど惨めでさもしい精神は持ち合わせていないさ。知的な支配者というのは今あるものを最大限に活用する方法を模索するものなのだよ」
「……私は最大限に使われても火がつけば燃えますし水の中では泳げません」
「はッ、だからお前はダメ部下なんだ。不可能なら不可能なりに、他の方法で主人の役に立つ方法を提示すべきだとは思わないかい?」
「(なんで無茶苦茶言われてるはずなのに言葉だけだと正論に聞こえるんだろう……)。……他の方法って、例えば何ですか」
「……火の中で踊ってみせて、主人を楽しませるとか、ね?」
「部下じゃなくて奴隷の使い方だと思うんですよねそれ……。せめてもう少し愛のある扱い方してほしいです……」

▼ 勇者の収集を見る主従

「素材ならまだわかるんですけど」
「…………」
「……あんなに虫、集めてどうするんでしょう。リンク君」
「知るか」
「リンク君にあんな趣味があったなんて知らなかったです、私。何に使うつもりなのかな……」
「…………(いじいじ」
「……マスター。心底話に興味ないからって私の髪で遊ばないで下さい」
「くだらない話しか提供出来ないお前が悪い。そんな生産性のない話をするくらいなら黙って勇者の監視をしとけ(いじいじ」
「へい……(こっちはこっちで部下の髪で三つ編み作ってるもんなぁ……案外世の中って平和なのかもなぁ……)」

▼ 勇者のことを見てたはずの主従

「…………」
「……マスター?」
「…………すぅ」
「(監視、飽きて寝ちゃった……。微笑ましいけど、背中から全体重かけて抱かれてて、重い……)」

▼ 勇者の服装を見る主従

「何度見ても、今年の騎士服はすさまじい色、してますね」
「趣味が悪いことこの上ないね」
「……辛口ですね、マスター。でも、だからと言ってあれ以外の色で何が当てはまるかって考えても思い浮かばないんですよね。最終的にあの色が一番しっくりくるというか」
「彼の着衣になど関心は欠片も湧かないけれどね。……だが、強いて言うなら、」
「言うなら、なんですか?」
「暑苦しい上に全くもって肉体のラインが出ない点は、早急に改善させるべきだね」
「…………つまり、あの状態から三分の二くらい布面積減らせということですか?」
「フ、そうだとも。そこまで来てようやく、ワタシが評価を下すに値する姿になったと言えるだろうね。……何なら、今から直接手を下してあげてもいいよ」
「(リンク君、逃げて──!!)」

▼ 主従を見る勇者

「マスターリンク」
「ん? どうした、ファイ」
「周辺状況の分析を行った結果、魔族の気配を感知しました。分析の結果、魔族長とその部下に監視をされている確率98パーセント」
「ああうん……気づいてた」
「現状最適な戦闘方法の分析も可能です。実行いたしますか?」
「いや……うん、大丈夫。何話してるかは聞き取れないけど楽しそうにしてる気配は伝わってくるし、こっちから反応見せて邪魔するのも悪いかなと思うし。たぶん、今日は奇襲かけられたりもしないだろうから。……ありがとな、ファイ」
「イエス、マスター。御用があればいつでもお呼び出しください」
「ん、わかった。……それにしても、何話してるんだろうな」

▼ べったり主従シリーズ_噛み族長

「…………(かぷ」
「ひん!!?!?」
「……悪くない」
「ほ、ほっぺ……!? 今私、ほっぺ噛まれたんですか……!?」
「そうだけど?」
「何でドヤ顔なんですか……!? そ、それになんか、ちゅーされるより恥ずかしいんですけど……!」
「なら、唇をあげようか?」
「ど、どどどっちにしろ、むず痒さと物理的な痒さが限界突破……いっ!?」
「ん……そう言ったものの、唇だけだと味気ないね? やはりこうして噛んであげた方が、お前を味わうことが出来る」
「うう……すごいカミカミしてくる……!」
「安心すればいい。今日は、噛み千切らないでおいてあげる」
「今日も明日もいつまでも千切らないでください……」

▼ べったり主従シリーズ_犬部下

*一ヶ月外出してた魔族長が帰ってきた日の夜

「リシャナ」
「はい」
「既に二時間経つけれど」
「太腿、痺れました?」
「違う。……いつまでそこにいるつもりだ」
「いつまでって……」
「あと、視線がうるさい」
「……一ヶ月出来なかった分、ずっと膝に乗ってずっと綺麗な御顔を見ていたいと思いまして」
「たしかにお前は馬鹿犬だけれど、そういう体現の仕方はしなくていい」
「……はい」
「…………」
「……(じっっっ」
「……リシャナ」
「はい」
「……ベッドに行くよ」
「は、ははい……!!」
「挙動がうるさい」

▼ 足を触られる

「…………(むに」
「ひっ!!?」
「……微妙だね」
「い、いきなり人の太腿揉んだ感想がそれですか、マスター……!?」
「包み隠さず忌憚のない意見を述べたまでだよ。……大体、お前も日頃から主人に同じことをしているだろう。極めて無礼なことに」
「私は一応許可取ってますしちゃんと最高でしたって感想しかお伝えしてません!! もちろん本心で!!」
「そういう問題ではない。……ふくらはぎの方は、多少はマシな感触のようだね?」
「ひ、て、手つきが、手つきが私の倍やらしいです、マスター……!! くすぐったいの通り越してぞわぞわ、します……!」
「勝手に感じていればいいよ。……ああ、触り方を工夫したなら、お前を調教する新たな方法として使えるかもしれないね?」
「特殊すぎますよ! せめて調教するならもう少しノーマルな方法でッ……、ひ、膝の頭指でわしゃわしゃしないで下さい──ッ!!」

▼ 不意打ちストレート

「今日も美人ですね、マスター」
「フン、わざわざ口に出さずともわかりきっている。……むしろ、お前が毎日そう言い張ることに裏を感じるよ。一体何が目的なのやら」
「む、裏なんてないですよ。心の底の底から思ってるだけです」
「……へえ?」
「空から落ちて初めて貴方のお顔を見た時から、今この瞬間まで。いつだってギラヒム様は綺麗で美人で世界一かっこいいって、私は思ってます。もちろん、この先の未来もずっと」
「……。…………。………………」
「……マスター? なんでそっぽ向い、ふぐむっ」
「…………これだから、単純思考は」
「むぐ……!?」

▼ ヘアサロン全治百年再び

「……たまには、いつもと違う髪型にしてみてもいいかなと思ったのですが」
「……このワタシが、わざわざ、手間隙をかけて、整えてあげた髪に、文句があると?」
「ち、違いますよ! そういう意味じゃなくて! 気分転換というか! 新たな自分を発掘というか!」
「フン、凡庸そのもののお前から発掘出来るものなどあるわけが無いだろう」
「う……、……じゃあ、マスターが持ってる膨大な引き出しの中から、私に合いそうな髪型を選んでいただいて、それで整えてください」
「……お前、不躾な上に若干馬鹿にしているだろう」
「してないですよ!! マスターに出来るだけ長く髪触ってて欲しいだけですッ!!」
「開き直って煩悩を叫ぶな。騒がしい」

 *

 〜数時間後

「……お、おおおぅ……」
「気色の悪い声を出すな」
「出ますよこんな……何で短刀しか使ってないのに毛先まで巻けてるんですか……」
「フ、美の神に愛されしこのワタシに不可能など無いのだよ。無論、そんな神に愛されたところでワタシが忠誠を誓うのはただ一人、だけれどね?」
「前半何言ってるのかよくわからなかったですけど、良い思いさせていただいたのでもう何も言えません……」

▼ 魔族長に詰められる

「それで?」
「い、いやあの、本当にゼルダちゃんとティータイム楽しんできただけでして、こっちの情報漏らすようなこともしてないですし、いかがわしいこととかもしてないです……」
「そうだろうね。していたなら、今頃お前の四肢には枷が嵌められて地下牢に監禁されているはずだからね」
「(いかがわしいことには突っ込まないんだ……)」
「そもそも、謝罪すべきはそこではないと、それすらもお前は気づいていないようだね?」
「……私がゼルダちゃんに会えるの楽しみにしすぎて、マスターに塩対応したこと根に持ってるのはなんとなく伝わります」
「はッ! だからお前は馬鹿部下なんだ! ワタシの愛を一身に受けておきながらその体たらくなのだからね!!」
「……へい」
「お前があの娘に会っていた時間は約十時間。そしてお前がワタシの元にいた時間は?」
「……十四時間ですね」
「お前は一日のうちの九割、ワタシの元にいなければならないのに。……これは重大な契約違反と言えてしまうよねぇ?」
「それ、私が他の人に会えるの二、三時間しかない計算になりますけど……おはようとおやすみは一緒なんだからいいじゃないですか……」
「良いわけがないだろうッ! やはりお前には躾が必要だね!? ワタシのこの怒りを刻み込んで、二度と外に出る気が起きない体になればいいッ!!」
「(愛されるようになったと同時に、ぶつけられるテンションも常に高くなった気がするな……)」

▼ 身長差30センチ以上なので

「……っ、」
「…………」
「……っっ!」
「……間抜け面」
「仕方ないじゃないですか、届かないんだから! ていうか、先にちゅーしたいって言ったのマスターなんですから、屈むくらいはしてくださいよ!!」
「主人に屈む手間をかけろと?」
「じゃ、ちゅーもしません」
「……チッ」
「ッわ……ぅむ!? 」
「────」
「ん、む……、」
「……、……満足か?」
「満足っていうか……言い出したのはマスターですって……! あ、あと、爪先立ちしんどすぎるので、そろそろ下ろしていただけたら嬉しいかなって……ひぃ!? なにおしり揉んでるんですか!!?」
「ん……わざわざお前に姿勢を合わせてあげたんだ。これくらいはされて然るべきだよね?」
「さ、触り方がやらしいです! なんでそう丹念に揉み込む感じで触って……服の中にまで手突っ込まないでくださいッ!!」

▼ たぶん考えてること口に出してるだけ

「ワタシには欠点など存在しないのだよ」
「あ、はい」
「いや……むしろ、欠点が存在しないことが唯一の欠点だと言えてしまうのかもしれない。不完全から生まれる美すらワタシは掌握しなければならないのだから、如何ともしがたいね」
「(またなんか始まった……)」
「しかしこの障壁を乗り越えたその時、ワタシは完全な美を得るかわりに不完全な美を失ってしまう。……ならば、そのどちらにも属することが出来る今のワタシは、完全という概念すら凌駕してしまっているのかもしれない」
「そですね」
「完全という概念を超えた美……そう、まさに究極美だよッ!!」
「…………」
「……おい」
「えっ?」
「……今の話、聞いていなかっただろう」
「聞いてましたよ大丈夫です。マスターは究極美人です、宇宙を凌駕した艶めかしさです、“あるてぃめっと美人”ってやつです、大好きです」
「フン! 知っているとも!! 今日も素晴らしいね!! このワタシの美しさはッ!!(バァンッ!!」
「(独り言に相槌返して欲しいタイプ……まあご機嫌良さそうならそれで何より……)」


**以下R15くらい**

▼ 敏感すぎる魔族長の体を拭く

「ほら、仕事だよ」
「……自分で拭いた方が早いと思、」
「仕事、だよ?」
「……へい」
「まったく、以前はシャワー後のワタシの肉体を拝みたいとあれだけ必死になっていた癖に。仕事になったら渋るなんて、天邪鬼の扱いは面倒だね」
「お仕事が嫌な訳じゃないんですけど……」
「っ……、何に文句があると?」
「……太腿拭きます」
「とっととやれ。……っく、」
「……内腿、拭きます」
「んっ……、ぅ」
「…………」
「ぁ、……っん、う」
「──ッッなんで!! 拭いてるだけで!! 感じてんですかァッ!!!」
「ふっ……繊細な肌というのは些細な刺激も敏感に感じ取ってしまうものなんだよ。お前には無縁な話だろうけどね?」
「お肌が敏感ってそういう意味じゃないですから!! なんで命令に従って体拭いてるだけで罪悪感に苛まれなきゃいけないんですか! だから嫌だったんですよ!!」

▼ なんでそんなに堂々としてるのかよくわからない

「ねぇ、リシャナ」
「だめです」
「……お前のせいで、こんなふうになってしまったのに?」
「マスターが勝手に勃たせたんじゃないですかっ……! 外にいるのにいきなり匂い嗅いでくるから!」
「お前も普段からしてるくせに随分な言いようだねぇ? ……一度出せば、きっとすぐに治まるよ?」
「嫌ですよ外では!! 帰るまで我慢しててください!」
「へぇ……そんなことを言ってしまって良いのかな?」
「な、何が、ですか」
「お前がここでしないというなら──ワタシは勃ったままのこれを、お前以外に見せつけてしまうことになるんだよ?」
「は」
「お前がだぁい好きなこれを、本当はお前だけが見ていいはずのこれを。その他大勢に見せてしまうことになるんだ。……お前はそれを、許してしまっていいのかな?」
「隠す努力はしないんですかッ……!!?」
「するわけがないだろう。必要がないのだから。……でもお前は、そういう訳にはいかないよねぇ? お前が大好きな主人のモノを、守らないと、ねぇ?」
「くっ……なんで私何も悪いことしてないのに弱みにつけ込まれてるんですかッ……!?」


11月号もお楽しみに!