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kobakoまとめ *2021.4月号
・ほぼ魔族長と部下夢主(+たまにリザル)の会話文です。
・時系列等々バラバラ
・series設定の話も含まれています。


▼パンティの話

「…………え、マスター、パンツのこと知らなかったんですか?」
「知る必要がなかったからね。日々部下の扱いに悩まされる繊細なワタシの頭は余分な情報を蓄えないよう出来ているんだよ」
「……履こうとは思わなかったんですよね?」
「そんなものでこのワタシの美しい肉体を隠すなんて世界の損失だろう?」
「何も言い返せない」

▼ 胸の話題になると訳の分からない論争をしだす主従

「だからですねマスター、私は統計学的に見たら胸も身長も平均サイズなんですよ。たまたま、本当にたまたま豊かな体つきの女性陣が周りに多いだけで」
「……わざわざ主人の部屋にまで押し入って何かと思えば。お前の夢の話に付き合っていられるほどワタシも暇ではないのだが」
「だっかっら! 夢じゃなくて統計でこう出てるんです! 数字で! 夢から最もかけ離れた現実で!!」
「へぇ? お前は主人であるワタシより空の人間どもが書いたこんな本を信じると。手塩にかけてお前の極貧な胸を育ててあげているというのに、随分な仕打ちじゃないか」
「極貧でもないし育ててもらう必要もないんですよもともと!! マスターが平均だと認めてくれたらこの子も私も満足出来るんです!!」
「主人に不敬を働くだけでなく思想の強要までするとは。貧相な体に慣れてしまえば心まで貧しく寂れたものになってしまうようだね。ワタシは初めてお前に対して心の底から哀れだという感情を持ったよ」
「ここにくるまでの過程でもっとあったと思うんですよね、哀れだと思うタイミング」

▼ 主人の奇行から逃げる

「ッひぃ!!?」
「…………、」
「な、今、なんで、ほっぺた舐めたんですか……? え……?」
「強いて言うならそこにお前がいたからだよ。無垢で愛くるしい主人の行動にそもそも理由は必要ないけれどね」
「どこから突っ込めばいいのかわからないんですけどまず何でドヤ顔なんです……?」
「あふれ出るワタシの麗しさが留まるところを知らない故にだよ」
「返事もらっても全く意味がわからな、ッいぃ!? まだ舐めます!? 美味しくないですよ私!!」
「ああ、味は虚しいほどに感じないね。本当にお前はダメな部下だよ。やはり教育が必要だ」
「教育してどうにかなるものじゃないですそれ! ていうかもう無理です!! この線! この線から先来ないで下さい、絶対!!」
「お前の爪先で描いた線に何の効力があると? お前の爪先もワタシのモノだというのにねぇ?」
「ヒィッ……ふ、不法入国ッ!! 領空侵犯!! えーきゅー戦犯ですマスター!!」
「自分でも意味のわかっていない言葉を喚くな」

▼主人がお疲れ

「……お疲れですか?」
「……ん」
「私じゃなくて、ちゃんとした湯たんぽ抱いた方があったかいと思いますよ?」
「……いい」
「…………背中さすります?」
「……ん、」

▼拗ね部下

「……拗ねてないです」
「ああそうだね。そもそも部下の身であるお前が主人の行動に文句を言うなんて、あってはならないことだから、ねぇ?」
「……そです。だから拗ねてないです」
「…………」
「………………ふん、」
「拗ねているだろう」
「拗ねてないです」

▼拗ね部下その後

「む、んむー……ぷはっ、なんですかもう! 腕の中で窒息してしんじゃうかと思った……!」
「お前の不躾な態度がいつまでも軟化しないから、物理的に溶かしてあげてるんだろう?」
「結論の意味がわからないです……! ……そもそも拗ねてないってさっきから言ってるじゃないですか!」
「お前がそう言っているうちは解放してあげない」
「ううう潰れる、圧縮されちゃう! 溶ける前に砕けちゃう!」
「『拗ねてましたごめんなさい』と言えば済む話なのにねぇ?」
「拗ねて、ないですっ!」
「なら、ワタシに抱き潰されるしかないな。哀れ部下の命もここまでのようだ、冥福くらいは祈ってあげよう」
「なんで拗ねただけで絞め殺されなきゃいけないんですか!! ……拗ねてないですけどッ!!」
「自分で掘った墓穴に開き直るな」

▼部下、初めての雷

「ぎ、ギラヒム様! そ、空がすごく光ってます!!」
「ふーん。で?」
「で? じゃなくてッ! だ、大丈夫なんですか!? 今から何が起きようとしてるんですか!?」
「…………」
「ぎ、ギラヒム様?」
「……ああそうだ。お前は知らないのだったね。あれは雷と言うんだよ」
「かみ、なり」
「自然現象の一種だが……ワタシとしたことが一つ困ったことを思い出してしまってね」
「は、はい?」
「──あれはお前のような人間だけを狙って落ちてくるんだ」
「へ……」
「そういうわけで、お前はこのままではあの雷に打たれて死んでしまう」
「へ……へ!?」
「だが安心するといい。大地にも劣らない無限の心の広さを持っているこのワタシが、お前を守ってあげよう。……ただし、」
「は、い?」
「お前が心を込めて、丁寧に、丹念に、ワタシの足を舐めるというのなら……だけどね?」
「……は、」
「お前はまだまだワタシのために生きなければならないからねぇ?」
「う、ぐ……」
「主人の役に立つためにも、これは必要なことだよねぇ……?」
「………………なめ、ます……」
「フッ……イイ子」

▼主人不在時に食べ過ぎて肥えた部下

「……おい」
「っ!!?」
「一か月ぶりに帰ってきた主人を放ってベッドの中で引きこもっているなんて、部下の分際で不敬が過ぎるね? リシャナ」
「ちが、うん、です……これには深い訳が……!」
「お前が何を喚こうとワタシには関係がないよ。とにかく、出てきてもらおうか?」
「あああ抱き上げるのは、だめですッ!!」
「────」
「ごめん、なざい……見ないでください……」
「ふぅん……しばらく見ぬ間に随分と魔物の餌に適した姿になったものだねぇ?」
「……空で、カボチャが収穫の時期で、パンプキンタルトが、美味しすぎて……耐えられ、ませんでした……」
「主人の不在時に勝手に空へ出向くだけでなくこんな醜態を晒すなんて、どれだけ愚かなんだろうねぇ。しかも、他は肥やしておきながら胸には虚しいほどに栄養が行き届いていないようだし」
「私が一番思いましたよそれはッ……! 傷口直にほじくらないでください……!」
「知ったことか。……それで? お前はいつまで主人の首元にしがみついているつもりだ」
「マスターが私の姿から目を背けてくれるまでです……」
「なら仕方ない。さっさと肉食の魔物の檻に放り込みに行くとしよう」
「あああ嘘ですっ!! ちゃんと現実見て絞りますから!! まだ出荷しないでーッ!!」

▼ギラヒムダンスを見た部下

「うん、平常運転だなって思いました」
「フン……やはり愚昧なお前はあの華麗にして魔性すら宿るワタシの舞を形容する言葉を持ち合わせていないようだね?」
「華麗も魔性もついでに色気もあるのは認めますけど、踊らなくても伝わるので大丈夫です」
「へえ……? お前にしては随分欲のないことを言ったものだね。万人が心を揺さぶられ、万感の極地に至る芸術美をその目で見られたというのに」
「ちょっとその極地は私の手には負えなかったみたいです、見てるだけで精一杯」
「なら! もう一度! 今ここで! 今度はお前の脳に焼き付けてやろうじゃないか! 心の底からの感涙に咽び泣けばいいよ!!」
「あ、ほんとここでやらなくて大丈夫です、せめて帰ってからで。外でスイッチ入れないでくださいマスター」

▼つやっつや

「……本当、ずるいくらい髪質良いですよね」
「当然。絹のような美しさとはワタシの髪のために作られた言葉だからね」
「しれっと嘘つく……。でもこうして寝っ転がったまま触ってると、幸福感でそのまま死んじゃいそうです」
「それで死ねたなら、彼方でもワタシに感謝すればいいよ。……対してワタシがお前の髪に触っても、何の感慨も湧かないけれど」
「……にしてはよく触ってるくせに」
「耳をねじるか頬を千切るか、決めかねているだけだ」
「ひねくれもの……」

▼ウツシエと主従

「ウツシエ、って言うらしいです。空で流行ってるみたいで。ここ押したらこの枠に入ってる景色を残せるとかなんとか」
「──つまり、ワタシの美を後世にまで残すための箱だと?」
「……もうそれで大丈夫っす」
「へぇ! お前にしては良いものを持ち帰ってきたね! それならすぐにでも今この瞬間のワタシを収めようじゃないか! ワタシの美は永遠のものだが、この瞬間の美は儚くも永久のものではないからね!!」
「すみませんマスター、ちょっと何言ってるのかわからないです」

〜主人ウツシエ堪能後
「後で自分用にも焼き増ししようかな、このおびただしい写真たち」
「素晴らしいね……この瑞々しい肌、艶めかしい体のライン……」
「楽しそうで何よりです……」
「……さて、せっかくだ。お前にも特別に主人と同じ枠内に入る権利を与えてあげよう」
「え……え!? わ、私はいいですよ!!」
「なに、遠慮はいらないよ。どうせお前が横に立ってもワタシの存在に霞んで見えなくなるのだから」
「一緒に撮る意味ありますそれ?」
「ほら、喚いていないでとっとと準備しろ」
「うー……」
「────」
「──撮れました」
「フン、相変わらずの間抜け面だね。このワタシの隣に収めてあげたと言うのに」
「…………」
「で、お前はいつまでその顔をしているつもりだ」
「な、なんか、マスターと一緒にいるところをこうして客観的に見ちゃうと、急激な恥ずかしさが湧いて、ソワソワします……」
「……たまに、お前が羞恥を感じるタイミングがわからない」

▼大トカゲと拠点のお片付け

「リザル、こっちの箱ももう燃やして大丈夫」
「燃やしても燃やしてもキリねェな。定期的に片づけねェからこうなンだよなァ」
「でもリザルみたいに火が吹ける魔物の子たちがいるとこうして一気に燃やせちゃうからそこはすごく楽だよね。空にいた頃のお掃除、倍くらい時間かかってたもん」
「お嬢は楽だろーケドこっちァそこそこに体力使うンだかンな? うめェモン用意しとけよ」
「それは任せて。マスターのご機嫌取り用に備蓄したお酒コレクションから一本提供するから」
「お嬢も図太くなったなァ」

 *

「おわ、すンげェ見た目の武器だな、これ」
「ほんとだ。武器っていうか……拷問器具、っていうか」
「ま、そーゆーいたぶンのが好きな魔族もいッからなァ。ンなことで食える部分減らす奴の気がしれねェケド」
「……でもこの形、なんか見たことある気がする……よう……な、」
「お嬢?」
「……違う、これ、マスターの私物だ……」
「私物? こンな武器使ってたのかよ?」
「んーん、半分くらいはあの人の趣味。……たぶん私に“使う”用」
「…………あァ」

▼引きこもり長

「マスター」
「…………」
「マースーター」
「…………」
「……ギラヒム様」
「…………」
「……寒いのはわかりますけど、天下の魔族長がお布団こもって頭しか出てないってすごい光景が生まれてますよ」
「…………うるせぇ、埋めるぞ」
「…………(素が出るくらい寒いの苦手なら上裸で寝なければいいのに)」

▼マモノの味覚

「……魔族の味覚って人間と違うのかなって思ってましたけど」
「何」
「さも当たり前かのように私のパンプキンタルト、奪って食べるじゃないですか」
「フン、別に人間どもが作った味に興味があった訳ではないさ」
「じゃなんで全部食べちゃうんですかっ! せっかく空から持って帰ってきたのに!」
「当然だろう? お前のものはワタシのもの。ワタシのものはワタシのもの。──そしてお前の内臓すら、ワタシに支配される運命なのだから」
「タルト頬張りながら訳の分からないドヤ顔しないでくださいよ……。人食べちゃうくらいだから人間の食べ物はマズく感じるのかなって思ってましたけど、普通に食べられちゃうんですね」
「種族による……というより、ワタシのようなごく一部の上位の者のみ、だけれどね。下位になるにつれて、血と肉の味しか感じられなくなる」
「え、そうなんですか?」
「その方が合理的だろう。お前たち人間と違って、魔族に味覚など必要ない。空腹さえ満たせたなら、それで生き続けられるのだから」
「……納得、ですけど。……余計に私がタルトとられた理由の方が納得いかなくなりました」
「強いて言うなら、趣味だね」
「開き直られた……!!」

▼通過儀礼

「おかえりなさいです、マスター」
「ああ(マント放り投げる)」
「(マントキャッチ)シャワールーム、もう準備終わってます」
「ん」
「…………(マントたたむ)」
「…………」
「…………すぅ」
「……匂いを嗅ぐな」
「ばれたか……」

▼ 与えられた理由に縋りたかっただけなのかもしれない
※部下一年目腹パン模擬戦の話、痛いだけの話なので注意

「──ほら、オシマイ」
「ッかは……!」
「ふむ、肋骨が何本かいってしまったようだね? やはり脆いね、人間の……ましてや雌の体は」
「ぐ……げほッ……」
「三度とも手加減はしてあげたけれど……さすがに次は内臓が歪んでしまうかもしれないから、今日は終わりにしてあげようか。使えなくなってしまうのは本望ではないしね」
「………………ま、す」
「……?」
「ま……だ、……やれ、ます……」
「────。壊れてしまうかもしれないのに、まだ立つなんてね」
「……やらなきゃ、気、すまない……だけです」
「ふぅん。……まあ、嫌いじゃないよ。その血反吐に濡れながらも足掻こうとする顔」
「…………、」
「いいよ。壊れてしまったなら回復兵のところまで引きずってやるくらいはしてあげよう。だからせいぜい、少しでも主人を楽しませるんだね……!」



5月号もお楽しみに!