Log


kobakoまとめ *2023.12月号
・ほぼ魔族長と部下夢主(+たまにリザル)の会話文です。
・時系列等々バラバラ
・series設定の話も含まれています。


▼部下の苦労

「そういえば、トカゲ族のみんなって寒さに弱くないの?」
「弱ェよ。つか、獣の血が入ってる魔物は大体寒さには弱ェな」
「へぇー……でも、たしかにほかの獣型の子たちは動きが鈍くなったりしてるけど、トカゲ族の子たちは普段とあんまり変わらなく見えるんだよね」
「……そりゃあ、動かなかったらお前のご主人サマに殺されッからな」
「へ」
「しかも罵倒つきでな。寒さごときで動かなくなるお前たち下位の魔物はどーのこーのッて。……自分は分厚いローブ纏ってな」
「……。……なんか、ごめんね」

▼ここ一人分なんだ

「さむさむ……」
「──リシャナッ!!」
「ふぁい」
「主人を放って一人こんなところで温まっているとは、お前はなんて薄情な部下なんだろうねッ!? 罰としてその身をもってワタシを! 温めてもらおうかッ!?」
「……やです」
「は?」
「私のベッド、二人で入ったら絶対に一人溢れますもん。押し出されるの、どうせ私ですし」
「…………」
「……だから、やです」
「……リシャナ」
「ふぁい」
「……交わったら、溢れないよね?」
「!!!?」

▼本能的嫉妬

「マスターって」
「何」
「私以外の魔物をペットにしたこと、あるんですか」
「あるとも」
「…………ふーーん」

 *

「いや妬くなよ」
「なんかこう、反射的に、嫉妬の気持ちがむらむらと……!」
「だから踏まれたり足舐めさせられたりすンだぞ、お嬢」

▼無意識だった

「(むにむに」
「あ、あの、マスター?」
「何」
「何って、その……何で私の太もも、ずっと揉んでるんですか?」
「…………」
「…………」
「……むぅん」
「(あ、聞いちゃダメなやつだこれ……)」

▼あったか戦争

「じゃーんです、マスター!」
「……何」
「最近あんまりにも寒いので、トカゲ族の子に防寒性ばっちりなローブを作ってもらいました! これで寒い地方に行く時も安心です!」
「ふぅん。……どれ」
「へ。……ひっ!!?」
「ふむ。悪くない」
「いや悪くないじゃなくて、二人用じゃないですからこれ!! 一緒に入るのは無理あります!!」
「部下のくせに一人で熱を享受するなんて烏滸がましいと思わないのかな? お前の熱はワタシのモノ、だよ」
「意味がわからないです……!!」

▼マッサージ中

「……むん」
「あ、痛かったです?」
「別に。このワタシに痛みなどという概念は存在しない」
「大きく出てきた……。……えと、もう少し優しく押しますね」
「フン」
「ん……しょ、」
「むぅん」
「……まだ痛いです?」
「全く」
「もう少し強くってことですか?」
「……むん」
「……御意です(言葉じゃない文句が多い……)」

▼条件反射で

「マスター」
「ん」
「朝見たら、昨日私が作ったパンプキンクッキーが半分になってたんですけど……何か知りません?」
「知らない」
「そうですよね……。うーん、魔物の子が食べたのかな……」
「ッハ! このワタシが下位の者どもにワタシの獲物を与えるわけがないだろう!!」
「……。……食べました?」
「……知らない」

▼さわってたいの

「むぎゅ」
「…………」
「まふたー質問です」
「何」
「何で私は今、まふたーの手のひらに、ほっぺを挟まれているのでしょうか」
「さあ、何故だろうね?(もにもに」
「ちょっといひゃいです」
「知ったことか(もにもにもに」
「……触るかわりに、ちゅーひてくらはい」
「…………」
「…………」
「……却下(もにもにもにもに」
「むぐー!」

▼フンフンコーラス

「ふふふんふふんふんふん」
「……は?」
「マスターがたまに歌ってる鼻歌です。ふふふんふふんふ、」
「ッハ!! これだから馬鹿部下は!! お前のその耳は飾りでしかないようだね!!」
「えー……うまく歌えてません?」
「全く違うねッ! 手本を見せてあげるから、その耳と脳にようく刻み込むんだね!!」
「はーい」
「フフフンフフンフンフン」
「ふふふんふふんふんふん」
「フフンフンフンフフフン」
「ふふんふんふんふふふん」
「フッフフフンフンフン……」


「おい、あの頭おかしい主従黙らせてこい。敵地でフンフンうるせェッてよ」
「俺には無理ッす……!!」

▼センチメンタルですみっこぐらししたくなった長

「マスター?」
「…………」
「あの、どうしたんですか? そんな隅っこで……」
「……リシャナ」
「はい」
「リシャナ」
「は、はい」
「……何でもない。……ベッドに行こうか」
「……? は、はい」

▼信頼?

「……ここのこの地点、やっぱりあの一族の主力部隊が固まってるみたいですね」
「ふむ」
「部隊長級の子たちで太刀打ち、出来ますでしょうか」
「……いや。ここにはワタシとお前で行く。……その方が早く済むだろう」
「わかりました。…………」
「……何」
「あ、いえ。……頑張りますっ」
「フン」

「(……他の魔物の子より私を選んでくれてるの、やっぱり嬉しいって思っちゃうな)」
「(……えへへ)」

▼負傷部下

「──っ、」
「ああ、やはり触れると痛いようだね……?」
「そりゃ、そうです……。ざっくり、切れてるんですから……」
「そうだよねぇ……? だからこぉんなに、イイ顔を見せているんだよねぇ……?」
「なんで、興奮してるんですか……」
「するに決まっているだろう。もう少し傷口を広げたらどんな顔をしてしまうのか、気になってしまうほどにねぇ……?」
「い、嫌です……!!」
「ッフ……大丈夫。広げた後に、ちゃあんとワタシが治してあげるから。だから……ね?」
「(ああ……これ、だめかも……)」

▼もふもふ事変

「さむさむ……」
「……リシャナ」
「はい」
「お前はこの森に住む亜人の居場所を知っているね?」
「亜人って……キュイ族のことですか? 知ってますけど……」
「なら、それのもとにこのワタシを案内しろ」
「案内って……え、あの子たちに何するつもりですか?」
「お前が聞く必要のないことだよ。お前は黙ってワタシを案内すればいい。それだけだ」
「(声のトーンが本気だ……ここは逆らえない……!)」

 *

「キュー、へんな姉ちゃん、へんな兄ちゃん、そろそろオイラ、お腹空いてきたキュ」
「うるさい騒ぐな。八つ裂きにするよ」
「……マスター、まだモフモフし足りないんですか? 私もですけど」
「……お前も、余計なことを言えば口を裂くよ」
「はーい」
「キュー……」

▼崖際主従

「こ、この崖、降りるんですか……!?」
「ああそうだよ。お前のような非力な人間でも簡単なことだろう? 一歩踏み出し、重力に逆らうだけなのだから」
「それ、下でマスターがキャッチしてくれるんですよね……?」
「…………フ」
「フってなんですか!? どういう意味のフですか!?」
「意味など自分で考えろ。ほぉらリシャナ……ワタシがこの下で、受け止めてあげるから、落ちてみようか……?」
「イイ声で囁かないでくださいッ……!!」

▼んなことより寒い

「この時期の森は静かですね。生き物がみんな眠っていて」
「…………」
「マスター?」
「……リシャナ」
「はい」
「今すぐにこの森全てを焼き払って暖をとらせろ」
「(あ、今情緒出すの無理そう)」

▼魅惑のまふらー

「あったかあったか……」
「……リシャナ」
「はい?」
「それは何」
「“まふらー”ってやつです。空で見つけて買ってきました。すごくあったかいんです」
「………………」
「あの、マスター、その目は……」
「部下のくせに、主人を放って温もりを享受すると言うんだね、お前は」
「……えっと、マスターも入ります?」
「……どうやって」
「んと……こう、一旦ほどいて、」
「…………」
「はい、二人で巻けまし、た……」
「……何」
「いやあの、思ったより、お顔、近くて……」
「ああそうだね。……お前の肌の匂いまで伝わる距離だとも」
「か、嗅がないでくださいッ!!」

 *

「よ、よく考えたら、ほんとにこれ、恥ずかしいです。顔、熱いです……!」
「知ったことか。お前がし始めたのだから、責任を取れ」
「せ、責任て、何をどうやって……!」
「さあ。それは自分で考えることだね」
「あぅぅ……」
「……それにしても(じっ」
「な、なんですか……(顔、近い、綺麗すぎる……!)」
「……何故こんな間抜け面のくせして、噛みつきたくなる唇をしてるんだろうね」
「!! いや、その、えと……!」
「……頂戴」
「──!!!」

▼目指せお清楚

「じゃーんです、マスター!」
「……何、その服は」
「空でくすね……拝借してきた式典服です! 私も清楚な服を着たら、も少しお淑やかに見えるのかなと思いまして」
「寝言は寝て言え」
「バッサリ……。でも、お淑やかとまではいかずとも、普段と雰囲気は違くないですかっ」
「……そうして口を開くから台無しなのだと、まだわからないのかな」
「…………(しゅん」
「……けど」
「? ……ひッ!!?」
「清楚なものを穢すという行為の良さは……体感出来るかも、ねぇ?」
「脱がしたら意味ないです!! た、助けてーッ!!」

▼部下があれをされた場合

「……まさか、勝手に空に出向くだけでなく、他の雄の匂いをつけて帰ってくるなんてね」
「だ、だから! 少しお話しただけで、指一本触れてないんですって……!」
「言い訳は聞かない。ワタシは今……猛烈に! 強烈に! 激烈に気分が悪い!!」
「ひッ……!?」
「……とは言え、お前のような馬鹿部下に振り回されるのも魔族長としてどうかと思うからね」
「は、はい……」
「全治五百年で許しておいてあげる」
「あ、ありがとうございま、」
「(れろれろれろ」
「!! ま、マスターッ、綺麗なお顔でれろれろしちゃダメです!! ……いや、それもそれでそんなマスターも私は好きですけど……でもたぶん世間的にはダメな気がします!!」
「支離滅裂な言葉で喚くな」

▼れろれろ談義withリンク君

「リシャナに質問」
「はい、リンク君!」
「……あの至近距離でアレ(れろれろ)されたら、さすがのリシャナも恐怖感じるよな?」
「まあ……さすがの私も悲鳴あげるかな……」
「だよな、なんか安心した……」
「……けどね」
「え?」
「……舌出してる時のマスターもかっこいいって思ってしまう時は、多々、ある。……あるんです」
「……慣れって怖いな」
「怖いよねぇ……」

▼れろれろ談義withリザル

「ッフゥン、このワタシに刃向かうとは、いい度胸をしているじゃないか。イイ声で鳴くまで、存分に、いたぶってあげよう(れろぉ」
「…………」

 *

「……やっぱりかっこいいと思っちゃうんだよねぇ」
「そりゃーもうお嬢の性癖ッてやつだろ」
「そうなのかなぁ……。……あ、なら」
「あ?」
「リザルにやってみてもらって、かっこいいなと思ったら性癖って言えるかも。だからリザル、一回、」
「絶対やらねェ」
「えー……」

▼寒い日の一幕

「へくしっ」
「おや……」
「うう……風邪、ひきました」
「そのようだね、可哀想に。……ほら、こちらへおいで」
「あい」
「体が冷えてしまっているじゃないか。お前の主人が、今から温めてあげるからね」
「……ありがとうございます」
「……可愛い」
「……あい」


「(今日はすんごくご機嫌かつ甘えたモード、みたい)」
「(幸せ……なんだけど)」
「(風邪ひいた原因、たぶん昨日マスターにお布団奪われてベッドから落とされたからなんだよなぁ……)」

▼聖なる前夜

「明日は聖なる夜、らしいですよ。マスター」
「ハッ、誰の許可を得てそんなことを名乗っているのやら」
「さあ、誰なんでしょう。でも、空の人たちは恋人同士でご馳走を食べたりパーティーをしたりしてるみたいです」
「ふぅん」
「…………」
「…………」
「……(つんつん」
「……主人の手の甲をつついて、何のつもりかな」
「……その、私も聖なる夜の恩恵を受けたいかなって思ったり…………」
「そんな権利がお前にあるとでも?」
「…………(しゅん」
「……、……聖なる、ね?」
「!!(手、握られた!)」
「こぉんなに欲にまみれた馬鹿部下がいると知れば、その聖なる夜とやらを名付けた連中も考えを改めるだろうね?」
「う……欲まみれですみません」
「全くね。……けれど」
「……?」
「そんな愚かな名前を名付けられた夜を、ワタシの欲で汚してやりたいという気分には、なったかもねぇ?」
「へ」
「お前から誘ったのだから、いいよねぇ……? リシャナ……?」
「(な、なんか変なスイッチ入っちゃった……!!)」

▼聖なる夜2023

「(今日は“聖なる夜”ってやつだけど……)」
「全く、こぉんな雑魚どもに費やす時間はないというのにね……!」
「(いつも通り、戦闘の真っ最中……)」
「最後の一人くらいには慈悲を与えてあげたいところだけれど……今日は遊んであげる時間がなくてね。……一瞬で終わらせてあげよう」
「(あ、そろそろ終わるな。……それにしても)」
「ハッ──!」
「(戦うマスターのかっこいいところがたくさん見られたから、これはこれで満足かな)」
「……終わったよ、リシャナ」
「あ、お疲れ様です」
「……顔、寄越せ」
「はい?」
「(ちゅ」
「!!!?」
「……これが欲しかったのだろう?」
「え、あ、なんで……」
「お前が言ったんだろう。今日は聖なる夜だと。……たまにはこうして飴を与えてあげないと、天邪鬼な馬鹿部下はすぐにワタシの手元から離れようとしてしまうからね?」
「……マスター」
「ほら、このワタシが、欲深い部下であるお前のために、一瞬で終わらせてあげたんだ。……とっとと帰るよ」
「……ありがとうございます、大好きです、マスター」
「知ってる」

▼おぱんつないない

「大掃除しますよ、マスター!」
「ふぅん」
「今年はマスターの部屋からしますので、隠したいものがあるなら今のうちですよ!」
「そんなものはない」
「……ほんとですか? 去年は私のパンツが発見されたと思うんですけど……」
「それは隠すものではないからね。……本来そこにあるべきもの、だよ」
「そですか……」

 *

「昨日は勢いで納得しちゃいましたけど、返していただいていいですか、私のパンツ」
「却下」
「即答……」
「お前にワタシの所有物を持つ権利はないはずだけれど?」
「いや、それ以前にもともと私の所有物なんですよね……」
「ッフン、わかっていないね、お前も。返して欲しいのなら、交換条件を提示してもらおうか?」
「ええ……なんですか、それ……私のパンツなのに……」
「お前たち人間は等価交換という仕組みを使っているのだろう? なら、同じことをすればいい」
「等価って……私のパンツと何が同じ価値あります……?」
「フゥン、やはりお前は駄目部下だね? 今、持っているだろう」
「……、……え、まさか、今私が履いてるパンツですか……!? 意味なくないですかそれ……!!」

▼魔物たちのアコガレ

「……今日もマスターはかっこよかった」
「そーかい。お嬢も大概飽きねェな」
「……リザルはかっこいいと思わない? 両刀使う時のマスター」
「……。…………まァな」
「……ちょっと恥ずかしそうなの、なんで?」
「うるせェな。食うぞ」
「はーい」

 *

「……両刀、な」

 ──自分には縁がない、と切り捨ててしまうことはとても簡単だった。そうする術を持っていた時もそれを試みることはなかったのだから、今さら何を言っても“ないもの”ねだりにしかならない。

『お前たちリザルフォスを含む半獣型は、確かに人と同様剣を握ることが出来る。……しかし、所詮それは人の真似事に過ぎない』

 かつてあの人が告げた言葉。笑ってしまうほどに端的に告げられた事実。
 あの人が言う通り、獣の血が入った自分たちが武器を振るったところで“人以下”にしかなれない。真似事は目標、つまり理想を、超えられない。

 そう、わかっているのに。
 あの人の剣技にどこか焦がれる衝動が存在しているのも、また事実だ。

「バカみてェな話ダナ」

 今は失われた右腕。先のない二の腕に括り付けられているのは、あの生意気な後輩が自身に贈った短刀。 
 それを見るたび、あの人の剣技に魅せられる後輩の顔が頭を過ぎる。
 激しく同感、はしないものの、その姿を否定できるほど自身も剣に冷めていない。

「あーーあ。……めンどくせェの」

 他の半獣に比べて客観視が出来てしまう、という自他ともに認める自身の評価。それがこんなところで発揮されてしまうなんて。……こんな感情に気づいてしまう羽目になるなんて思わなかった。しかし気づいてしまったものは仕方がない。

 自分たち魔物は、人間の憎悪から生まれた。つまり、自身の成り立ちの根源には人間の感情が少なからず息づいているということ。
 ならば、二つの黒刃を振るう長の姿を目にして湧き立つ衝動──あの後輩の言葉を借りるなら、“アコガレ”と言うべき感情の奔流を、自身の根源に眠る人間性のせいにしてもバチは当たらないだろう。



次回もお楽しみに!