Log


kobakoまとめ *2023.11月号
・ほぼ魔族長と部下夢主(+たまにリザル)の会話文です。
・時系列等々バラバラ
・series設定の話も含まれています。


▼おえかき部下

「空にいた頃、今の時期は“芸術の季節”って言われてたんですよね」
「フン、哀れなものだね? そうのたまう人間どもは、ワタシという完全芸術が存在することを知らないのだから、ね?」
「そですね。……で、そんな季節なので、私も絵を描いてみたんです」
「ふぅん」
「これです」
「……。…………。…………。……お前の空想上の化け物かな?」
「リザルと全くおんなじこと言われた……。……いちおう、キュイ族なんですけど」
「……この奇怪な楕円が?」
「……出直してきます」

 *

「マスター、おえかき再挑戦です」
「……お前は部下のくせに、暇を持て余しているのかな?」
「他のお仕事はぜーんぶ終わってるので、今はマスターと一緒にいるのがお仕事ですっ。……と言うわけでマスター、これ、何でしょう!」
「…………」
「…………」
「……合成実験に失敗した人間の成れの果て」
「……正解は、リザルでした」
「……どこが?」
「うう…………」

 *

「リザルリザル」
「ンあ?」
「この人だーれだ」
「……。……ギラヒム様ダロ」
「ぴんぽん! さすがリザル!」
「……どっちかッてェとその隣に描いてあるよくわかンねェ物体が何なのかが気になるンだケドな」
「これは……ラネールにいる機械亜人です」
「……ギラヒム様とそれ以外で画力の差、激しすぎねェ?」
「……観察度合いの違いかなぁ」

▼とろとろ顔をしてるから

「リシャナ」
「マスター……、ん」
「────(ちぅ」
「──……ぷは」
「…………」
「……あの、マスター」
「何」
「その……いつも、ちゅーした直後の私の顔、凝視するのって、何でなんですか……?」
「……見ていたいから」
「さ、さよう、ですか……」

▼調理室で見つけてきた

「リシャナ、リシャナっ」
「はい?」
「これをあげよう」
「……。……まな板ですか?」
「お前に相応しいと思ってねっ」
「…………ありがとうございます」

 *

「……そんなかんじで嬉々として渡してくださるマスターが可愛くて、すんごく馬鹿にされてるってわかってても受け取っちゃったんだよね」
「お嬢、あの人のこと甘やかしすぎじゃね?」
「自分でもそう思う……」
「難儀だなァ」

▼倉庫で見つけてきた

「リシャナ、リシャナっ」
「はい、マスター」
「今日はこれをあげよう」
「……なんで、ドラム缶なんですか」
「お前に相応しいと思ってね!」
「……。…………ありがとうございます」

 *

「で、お嬢の部屋には今、まな板とドラム缶が置いてあると」
「……だって、一応マスターからのプレゼントだし」
「……お前がそれで良いならいいケドよ」
「……良いのかなぁ」
「シラネ」

▼森で見つけてきた

「リシャナ、リシャナ」
「……はい、マスター」
「これをあげよう」
「……。え、みかん、ですか?」
「そうだとも」
「……。…………。……なんでですか?」
「不躾な問いだね? このワタシが、可愛い部下であるお前のために、わざわざ与えてあげるというのに」
「見た目も匂いも普通……。……あ、まさか、みかんによく似た毒のある木の実とか、」
「何か、文句でも?」
「い、いえ……」

 *

「それで、すんごく慎重に確認して一口食べてみたんだけど……やっぱり普通のみかんだったんだよね」
「単純に機嫌が良かったンじゃね? ま、警戒する気持ちはわかッケドよ」
「……なんでみかんなんだろ」
「さァな」

▼なんか閃いた

「マスターにもらったまな板と、ドラム缶と、みかん。並べてみたけどすごくシュールな光景になっちゃって」
「まァ……そうだろうな」
「そのまま置いとくのも味気ないし、どうにか活用しようかなと思うんだけど、何か良い案ない? リザル」
「いや、みかンは食っとけよ」
「そうなんだけど、せっかくだからこう、良い雰囲気で食べたいなと思い……」
「良い雰囲気ッてどういう」
「まな板とドラム缶を有効活用して、みかんを最大限に美味しく食べられるような雰囲気」
「俺に聞くなよ……まな板はともかく、ドラム缶はご主人サマに追われた時にでも入っとけや」
「やっぱりそれくらいだよねぇ……。……ん?」
「ンあ?」
「そっか、そうだ、入ればいいんだ!! リザル先輩、やっぱり天才!!」
「いや、今の流れで何を思いつくンだよ、怖ェよ……」

▼なんかできた

「じゃーんです、マスター!」
「は」
「マスターにいただいたドラム缶風呂、です!」
「…………」
「そして、マスターにいただいたまな板をお湯に浮かべて、その上でみかんを食べる……完璧です!!」
「…………」
「……いかがでしょう?」
「……リシャナ」
「あい」
「暇を持て余しているなら、剣技の練習でもすることだね」
「……あい」

▼はいりたい

「ふぃー……ドラム缶風呂、最高……」
「リシャナ」
「……! ま、マスター……!!」
「…………」
「…………」
「…………」
「……えっとあの、全裸で見つめられても、ここ、物理的に一人しか入れ、」
「は?」
「……はい、代わります」

▼ちょこれぇと棒げぇむ

「マスター、これ見てください」
「…………」
「この、ちょこれえと棒を、私が咥えて……」
「…………」
「はひ、あとは、はんたひ側からまふたーが、食べてくらはい」
「…………(ひょい」
「ふむ!?(棒、盗られた!)」
「…………(ちゅ」
「!!!!」
「……これで満足かな?」
「な、な、なんで……!?」
「フン、馬鹿部下の馬鹿な発想に、このワタシが付き合ってあげるとでも?」
「うぐ……見透かされてる……」

▼ロック部下

「へいへいです! マスター!」
「は?」
「空で流行ってるロックってやつ、大地でも流行らせてみようと思いました。かもんべいべー! です」
「…………」
「それでは聞いてください、『魅惑の生足』!」
「……リシャナ」
「はい」
「死にたいのかな?」
「すみませんでした」

 *

「そもそも楽器を弾けなきゃロックってやつ、出来ないみたいなんですよね」
「……まだあのふざけた態度をとろうとしているのかな?」
「私自身は大真面目だったんです。かっこいいなって思って。……本当は、ギターって楽器が弾けたらいいんですけど」
「…………」
「私が楽器弾くと、魔物たちがびっくりして厳戒態勢とっちゃうから……よくないですよね」
「刺激された魔物たちに食われたいと言うのなら、すればいいよ」
「…………(しゅん」

▼超真顔だった

「……私、ようやく気づいたんだ、リザル」
「何が」
「マスターのこと。わかってるつもりで、全然わかってなかった」
「……おう」
「マスターは──私がわざわざマントをめくりに行かなくても、挙動が激しいからじっくり見てればすぐ下を覗けるんだよね」
「………………(このままこの主従に従ってて良いンかね)」

▼さらさらつやつや

「いつも私の髪がいじいじされてるので、今日はマスターの髪をいじいじします」
「ふぅん? ……やれるものならやってみればいいよ」
「…………(さらさら」
「…………」
「…………、(さらつや」
「……フ」
「……さらつやすぎて、触ってるだけで罪悪感と敗北感が湧き上がってくるの、何故なんでしょうか」
「それはワタシが美の化身ゆえ、だよ」

▼ほんとはこわい、魔族のはなし

「……マスター。さっきの一族、すごくすんなり協力してくれるって言ってくれましたね」
「あれらは力量を測る目に長けているようだからね。誰が強者なのか、一目見て理解したのだろう」
「だからあんなに素直だったんですね……。でも、すごく丁寧に敬語使われて、頭下げられて、なんだか魔物っぽくないなって思っちゃいました」
「フ、だからお前は駄目部下なのだよ。あれらの本当の姿を見破れないなんてね?」
「本当の姿、ですか?」
「ああいった一族は強者に取り入るため、あのようなへりくだった態度をとることに長けている。……が、その分、弱者に対しては容赦がない。もしあの場にお前一人で行ったなら、」
「い、行ったなら……?」
「即座に吊し上げられ、爪を剥がされながら釜茹でにされて、果てにはひき肉にされていたことだろうねぇ……?」
「ひ、ひぇぇ……」

▼失敗した日

「マスター? なんで見張り台に……」
「主人の世話を放棄してこんなところにいるなんて。……職務放棄の罰として、ここから突き落とされたいと捉えていいのかな?」
「痛いのはできれば……嫌です。……でも、今日はそうされても、仕方ない……ですよね」
「フン。自覚があるならまだ救いようがあるか。……ほら」
「わ! え……な、なんでぎゅー、してくれるんですか……?」
「普通なら、あんな失態を犯した部下などその場で切って捨てるのだけれど。……お前にはこちらの方が、効くと思ってね」
「あ、う……マスター……気抜いたら、泣きそう、です……」
「フン、ここで泣いたなら惨めそのものだけれど。泣きたければ泣けばいいよ」
「そんな前置きされたら泣けないです、泣きません……! ……ぐす」

▼よこしま部下

「マスター、見つけました。封印、あっちです」
「ふむ。……予想通りのようだね」
「さすがマスターですっ。じゃ、行きましょう」
「…………」
「……なんですか?」
「今日はやけに機嫌が良いと思ってね。たったこれだけでご褒美はあげないよ?」
「そ、そういうわけじゃないですよ。マスターのお役に立てて、嬉しいなぁと思ってるだけです!」
「ふぅん。……まあいい。とっとと先に進むよ」
「あい」

「(……今日は暑くてマスターがマントを羽織ってない日)」
「(つまり、マスターのお体眺め放題な日)」
「(……むふ)」

▼ぷいぷい

「あ、マスター。かわいいネズミがいますよ」
「……ふぅん」
「えへへぇ、ぷいぷい言っててかわいいですねぇ」
「…………」
「よしよーし。ほら、頭撫でてあげますよー」
「…………リシャナ」
「はい?」
「……その奇抜な鳴き声は何」
「へ? ……あ、ぷいぷいのことですか? そう聞こえませんか?」
「聞こえない」
「あれー……」

▼仕上げはご主人さま

「よし、あとはケープのリボンを結べば身支度完せ、」
「リシャナ」
「はい」
「こちらへ来い」
「は、はい」
「…………」
「……??」
「……(くるくる、きゅ」
「!!(マスターがリボン結んでくれた!?)」
「……フン」
「あ、ありがとう、ございます……。けどなんで……」
「さあね。気分だよ」
「は、はい……」

▼罪づくりなお寝顔

「(ううん、今日はなんだか寝付けないな……。……こういう時は、)」
「……すぅ」
「(マスターの寝顔を、じっくり観察しよう)」
「…………すぅ」
「…………(……かっこいい)」
「…………」
「……(お肌、つやつや)」
「…………」
「……、(ど、ドキドキしてきた……寝られない……!!)」

 *

「……おはようござ、」
「遅い」
「ごめんなさい。……でも、一割くらいはマスターのせ、」
「あ?」
「……すみませんでした」

▼格上長

「さっきの魔物、すんごく凶暴って聞いてましたけど、案外落ち着いていましたね」
「フン、このワタシが直々に迎え入れに来てあげたんだ。そんな無礼を働くほど低脳ではなかったようだね」
「……気になったんですけど、やっぱり魔物の子たち目線だと姿を見ただけで誰が格上かわかるものなんですか?」
「逆にお前はわからないのかな? このワタシの麗しい容姿を一目見て、誰が格上なのか」
「私から見たら、マスターはかっこよくて綺麗な大好きマスターです。……あ、そういうことですか?」
「そういうことだよ」


「そういうことじゃねェだろ」
「今俺、あの二人が何話してんのかまったくわかんなかったっす……」

▼それでも起きなかった

「……はっ!」
「────、」
「ま、マスター……私、寝ちゃってました……」
「そのようだね」
「マスターのお膝の上で、爆睡して……え、どのくらい経ちました……?」
「二時間」
「ひ!? え、あ、う、マスター、ごめんなさい……」
「…………」
「ま、マスター?」
「……フン、せいぜい感謝するんだね。本来なら、床に叩きつけてすり潰してあげなければならないのだから」
「は、はい、気をつけます……、…………」
「…………」
「……マスター」
「何」
「なんか、首の皮が痛いんですけど……もしかして、」
「フ。……美しく染まっているよ?」
「どれだけ吸ったんですか……!?」

▼不器用でいてほしい

「マスターマスター」
「何」
「ふん!(パチィンッ!」
「…………、」
「どうですか! ちょっとだけコツ掴んで指パッチン出来るようになってきたんです! これでもうバカにされ、」
「リシャナ」
「はい」
「お前はどうあるべきか、わかるよね?」
「…………。……(すかっ」
「ッフン。わかっているなら無駄口を叩くな。いいね?」
「……(指パッチン出来たら怒られるのかぁ)」

▼新しい鏡での儀式

「よし、鏡、ピカピカになった!」
「リシャナ」
「はい?」
「そこをどけ」
「はい」
「──フゥン!!」
「…………」
「ふむ、これでいい」
「あ、はい、お疲れ様です(とりあえず鏡を見たらワンポーズ……)」

▼ウワサ長

「マスター、ラネールに行ってた中隊の子たちがあの一族の勧誘に成功したみたいです」
「へぇ。存外、呆気なかったものだね? 警戒心が強く攻撃的な一族というのは出鱈目だったということか」
「一応、臨戦態勢は取られたみたいですよ。ただ、背後に魔族長がついてるって知った途端、態度が変わったそうです」
「ッフゥン! ようくわかっているじゃないか! 立場をわきまえるだけの頭はあるようだね!」
「そですね。……でも、あんなに遠くの地の魔物にまでマスターの凶あ……強さが伝わってるって、世間って案外狭いんですね」
「ハッ! やはりお前は馬鹿部下だね!? それは世間の狭さゆえではない。ワタシの! この! 世界を震撼させる美貌ゆえ! だよ!!」
「……そですね。(強さと言動のインパクトゆえだろうなぁ)」

▼毎日生誕祭

「リシャナ」
「はい」
「ッハァン!!」
「……。……?」
「……おい」
「はい?」
「何か、言うことは?」
「え。……今日も美人ですね?」
「やはりお前は駄目部下だね? それは周知の事実だ。……今日の、この、ワタシを見て、何か言うことは?」
「……えーと、今日のマスターはより一層お肌ツヤツヤですね?」
「ッフゥン!! そうだとも!! ワタシの美は日々! 生まれ変わっているのだよ!! 故に見る者に与える印象も日々変化する!! これこそまさに、移ろい行く儚い美!!」
「…………(何言ってるのかよくわかんないけど、毎日違う感想言えってことかなぁ)」

▼あい

「──リシャナ!!」
「…………あい」
「お前の愛してやまない主人が!! 大地にとっての宝であるこの、ワタシが!! お前のもとへ帰ってきてあげたよ!! さあ、喜びに打ち震えるがいいよ!!」
「………………あい」
「…………」
「…………あい」
「おい」
「あい」
「主人であるこのワタシの帰還を迎え入れないとは、お前の怠惰も極まったね?」
「……ちょっと、お仕事のしすぎで、疲れちゃって」
「ッハ! 軟弱なものだね!!」
「…………あい」
「…………」
「……リシャナ」
「あい……?」
「おいで」
「……ふあ」
「その怠惰な行動は後々躾直すとして。……頭を撫でてあげるから、せいぜい心から感謝をするんだね」
「……!……ありがとう、ございます」

▼あい 〜別日

「リシャナ」
「あい」
「…………」
「え、あ、はい?」
「……お前は今、情緒という美しさを無下にしたせいでワタシの唇を得る機会を一つ失ったのだよ」
「!!!」

▼幸せといわれるべき夢

「……たまに、思うんだよ」
「……? なんですか?」
「お前に、幻覚をかけてみたいとね」
「へ……何の幻覚、ですか?」
「幸せな幻覚だよ。そう……お前が、空の世界からワタシの手元へと帰って来ずに、ずぅっとそこで暮らす、夢」
「なんで、そんな……」
「お前がもし、あの空の世界で普通の人間と同じように過ごして、知らない人間と恋に落ちて、ワタシという存在を知らないまま生きたら。……今と比べてどんな顔を見せるのかと思ってね?」
「……あんまり、考えたくない話、ですね」
「そうだ。魂の根幹からワタシのモノでしかいられないお前が、ワタシという存在がいない世界でどういうふうに生きるのか。……実に興味深いじゃないか」
「……幸せじゃないといいなって思いますよ。私は。……マスターと一緒にいられない世界なんて、幸せじゃないに決まってます。……決まってるんです」
「そう。そういう顔が見たいんだよ。ワタシは。……そしてその幻覚を見終えたお前が、ワタシという存在を思い出して……見せる顔が、ね?」
「それは……底なしの意地悪すぎます」



次回もお楽しみに!