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kobakoまとめ *2023.8月号
・ほぼ魔族長と部下夢主(+たまにリザル)の会話文です。
・時系列等々バラバラ
・series設定の話も含まれています。


▼4章幕間のお話

「む、無理です、マスター、それは全力で遠慮させていただきたいで、」
「却下」
「却下じゃないですっ!!」
「お前に拒否権など存在するはずがないだろう。お前の命運も、体もワタシのもの。それであるなら……お前の排出物も、ワタシのもの、だよ」
「さすがの綺麗でかっこよくて大好きなマスターでもその発言はいかがなものかなと思います私!!」
「お前がどう思おうと知ったことではないね。さあ、リシャナ。──汗を、舐めさせろ」
「絶対嫌ですッ!!!」

▼裸の王様(物理)

「リシャナ」
「……全裸になっちゃったんですか、マスター」
「リシャナ」
「な、なんですか」
「……リシャナ」
「まさか……抱き枕、要求してます?」
「……。……リシャナ」
「いやあの、せっかく全裸になったのに私を抱き締めたら、意味がないのでは、」
「リシャナ」
「……はい、つべこべ言わずに枕します」

▼親しい前に主従

「『二人でいる時は話し方を変える』」
「は?」
「っていうやつ、やってみたいです」
「……端から端まで意味がわからない」
「親しい人同士だと、そういう約束をするみたいなんです。例えば普段は敬語で話してる人が、二人きりの時は敬語をやめてお話しする、とか」
「へえ……? 馬鹿部下を極めた駄目部下であるお前が、このワタシに、そんな口を利きたい、と。……そういうことだね?」
「はい。……。…………。…………」
「何、その間抜け面は」
「……そう思ったんですけど、マスターにそんな口利いたら死ぬなって本能が警告してるので、やっぱりやらないでおきます」
「ッフン、懸命な判断だね」

▼タメ口チャレンジ

「……でも、やっぱりタメ口使ったら距離感縮まるのかなぁ」
「いや何の話だよ」
「マスターに、敬語をやめてお話したら案外距離が縮まるのかなって話」
「……別に何も変わらないンじゃね? あの人の機嫌が悪くなるだけで」
「やっぱりリザルもそう思う?」
「つーかそもそも、お嬢にそンな度胸ねェだろ」
「いや、意外と使ってみたらいけるかも! えーと……おはよ、ギラヒム……、ッ……サマ」
「言えてねェじゃねェか」
「……マスターって何であんなに『様』つけたくなる雰囲気あるんだろう」
「……そう見えてンのはお嬢だけだろうケドなァ」

 *

「ま、マスターっ」
「何」
「お、おは……おはよ、う……」
「……既に夜だけれど」
「わ、わかってるます……」
「…………」
「…………う」
「……ッフン、挙動不審もここまで極まると哀れとすら思えてしまうね。そこまでして、このワタシに不躾な口を利きたいのかな?」
「……もう諦めます。なんだか変に意地になっちゃってました」
「ハッ、やはりお前は愚かな馬鹿部下だね?」
「うー、…………わる」
「ん?」
「……ぎらひむのいじわる」
「────」
「…………、」
「……リシャナ」
「は、はい」
「もっと……自分が何を言っているのかわからなくなるまで、虐めてあげよう、ね?」
「!!?」

▼思いの外刺さった

「ほら、馬鹿犬。とっとと床に跪いて、美しいワタシの足を置くための土台となるんだよ」
「犬なのか土台なのかどっちなんですか……」
「どちらも、だよ。お前は犬なのだから、床にいるのが本来の姿だろう?」
「ううう、今日はいつにも増して扱いが雑……!」
「雑も何も、ワタシはあくまでも犬に対する扱いをしているまで、だよ。……ほぉら、懸命に鳴いて、主人に媚びてごらん?」
「うー……、…………わん、わんわん」
「…………」
「わ……、……あの、何で黙るんですか、マスター」
「……、……別に」
「??」

▼魔族長のまじかこいつシリーズ_戦闘編

「マスターに大事なお話があります」
「……?」
「戦闘中、なのですが。私が前線で頑張って戦います。だから、」
「……ふむ」
「マスターは、動きがかっこいいので敵の攻撃を避けててください」
「…………(一瞬でも真面目に聞いてあげようとした自分が馬鹿だった)」

▼天邪鬼長

「明日は久しぶりのマスターと二人っきり遠征ですね」
「……そうだね」
「えへへ、よろしくお願いします、マスター」
「却下」
「なんでですか!!?」
「……なんとなく」

▼じめじめいらいら

「(空気がジメジメしてるなぁ……)」
「…………チッ」
「(マスターのご機嫌も最悪だなぁ……)」
「……リシャナ」
「はい」
「……どうにかしろ」
「えっと……この湿気をどうにかするのは、私には無理です。マスター」
「……どうにか、しろ」
「えー……リザル、呼んできます? 炎吹いてもらうとか」
「……むぅん」
「(ああ、お気に召してなさげ……)」

▼うわぁ……みたいな目された

「(ぐぅ」
「…………」
「お、お腹鳴っちゃいました……」
「…………」
「なんでいつもみたいに笑ってくれないんですか!!? 哀れな目で見ないでください!!」

▼あらがえぬ貧しさ

「──どうですか、マスター! リシャナさんの今年の水着です!!」
「…………」
「部下としての激務の合間を縫ってスカイロフトで手に入れた、今年の新作です! 根暗な私でもちょっとだけ胸を張れる、“べりーきゅーと”なデザインってやつです!!」
「…………」
「……あの、マスター? 何か、ご感想は……」
「……お前は何年経っても、極貧でしかないんだね」
「何年経ってもおっぱいばっかり見ないでください!!」

▼形から入ってみようと思った

「私も魔術、使ってみたいです」
「……何度同じことを言わせればその中身の入っていない頭は理解が出来るのかな」
「もしかしたら、マスターとおんなじ行動をしてみれば使える可能性が一ミリくらい生まれたり」
「例えば?」
「……同じ格好、してみるとか」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あの、マスター?」
「勃った」
「!!!?!?」

▼魔族長のまじかこいつシリーズ_武器編

「マスターマスター」
「……何」
「これ、三秒だけ持ってくださいませんか?」
「…………(ひょい」
「わあ!! やっぱり鎌も似合いますね、マスター!! あわよくばポーズも決めてくださったら私が幸せになれます!!」
「……お前の首を刎ねていいなら考えてあげても良いよ」

▼武器マスター

「……かっこよかった、いろんな武器を持つマスター」
「マジで病気ダナ。お嬢のゾッコン加減に慣れちまった自分に引いちまうわ」
「……リザルはかっこいいと思わない? マスターのあんな姿やこんな姿」
「そーゆー目で見てねェからな。ま、どの武器も軽く使いこなせちまうあたりは素直にスゲェと思うケドよ」
「自分が剣だから、武器のことは詳しいのかな。……はっ」
「ンだよ」
「もしかして……マスターが私のことをそばに置いてくれてるのって、武器として使いやすいからって理由だったりする……?」
「……いきなり話が飛躍したが、あながち無いとも言い切れねェのがまた何とも……」

▼指ペロ

「痛っ……」
「……何」
「紙で指、切っちゃいました……」
「フン、間抜けなものだね。……それに今さらそんな傷ごとき、お前が普段負っている傷に比べれば取るに足らないものだろう」
「戦闘の怪我とは感じ方が違うんですよ。なんかこう、細く長く痛い感じが、ですね」
「……なら」
「!!?」
「こうして主人が咥えてあげれば、どうなるのかな?」
「いやえとあの、どうというか、ぞわぞわするというか……!」
「痛みを忘れられているなら良かったじゃないか。……ほら、血液ごと、吸ってあげる」
「ひ……!!」

▼これで前置き

「マスター」
「何」
「マスターは何でそんなに美人なんですか?」
「ッフゥン……そんなことも知らないだなんて、お前はやはり愚かな部下だね? しかしそれはこの世界を生きていく上で知っておかなければならない常識、というものだ。なにせこのワタシの美しさこそ、世界の真理に紐付いていると言っても過言ではないのだから。つまり、だ。ワタシの美を理解するということは、この世界に生きる者として最低限必要な資格を得るということなのだよ。無論それを怠っていたお前は愚か極まりないけれど、寛大で大空のように晴れやかな心を持つワタシが特・別・に、教えてあげようじゃないか。この事実を知ったなら、お前はもう戻れない。森羅万象へ抱く美しいという感情の矛先が全てワタシに向くのだよ。何とも幸運なことじゃないか。さあ、この世の真実に向き合う覚悟はあるかな……?」
「はぁい(久々にマスターの声、たくさん聞けて幸せ)」

▼甘くない

「マスター、そろそろオネムじゃないですか?」
「別に」
「やわらかーい膝枕が欲しいなとか思ったりしてませんか?」
「全く」
「……部下の愛情が欲しいなとか、思ってたりしませんか?」
「微塵も」
「……。…………ぐすん」
「……リシャナ」
「……なんですか」
「お前の膝を柔らかいと思ったことはただの一度すらもないよ」
「わざわざ言わなくていいですッ!!」

▼ものすごく真面目に怒られた後

「(じーーーー」
「……マスター」
「何」
「……なんでいつも、ものすごく怒られた後の私の顔、じっくり見ようとするんですか」
「興奮してしまうからに決まっているだろう?」
「ううう、情緒がめちゃくちゃになる……」
「フッ……こぉんな姿、見ない方が損、というものじゃないか。むしろ愚かなお前にすら視線を注いであげるなんて、この上なく寛大なことだと思うけれどねぇ……?」
「怒ったのマスターじゃないですか……」

▼噛み合ってそうで噛み合ってないキュ

「……今日もマスターはかっこよかった」
「キュー、変な姉ちゃん、ちょっと何言ってるのかわかんない、キュ」
「ごめんね。ほんとはね、いつも聞いてくれる先輩がいるんだけど今遠征に出てて。でもどうしても誰かに聞いてほしくて。と思ってたところにキューちゃんがいたから……」
「キューちゃんじゃないキュ。マチャーだキュ。……あと、“ますたー”って、たまに姉ちゃんと来る、変な兄ちゃんのことキュ?」
「うんそうだキュ。変な兄ちゃんのことキュ」
「キュー……オイラにはよくわからないキュ」
「……私も、何であんなにかっこいいのかわからないんだよねぇ」
「そういうことじゃないキュ」

▼相手にしたらいけないタイプケロ

「……今日も今日とてマスターはかっこよかった」
「……ガタガタケロ。いきなり何言ってるのかわからないケロ」
「ごめんね。今は遠征中で聞いてくれる先輩がいなくて、でもどうしても誰かに聞いて欲しくて。そしたらロボケロちゃんがいたから」
「理由になってないケロ……怖いケロ……」
「大丈夫大丈夫。マスターはたしかに怖いけど、それを忘れるくらいのかっこよさだから。“ぷらすまいなすゼロ、むしろぷらす”ってやつケロ」
「本当に何言ってるかわからないケロ……怖いケロ……!!」

▼真面目に聞く必要がねェかンな

「おかえりリザル」
「おう」
「……今日もマスターがかっこよ、」
「言わなくてもわかッから黙って仕事しろ」
「……はい」

▼食い気味でファイナルアンサー

「マスター」
「ん?」
「……今日もかっこい、」
「ッハ!! 当然だとも!! 何せこのワタシ、だからね!!? 存分に祭り上げてくれて構わないよ!!」
「(これが正解だった……)」

▼初恋事変

「……初恋かぁ」
「…………」
「……ね、リザル」
「ねじゃねェよ。俺がその話題に乗れる訳ねェだろうが」
「うぐ、お見通しだった……」
「どーせ飼い主の惚気話聞かされるくらいなら、先に布石を打っておいた方がいいと思ってナ」
「あ、私の初恋、マスターじゃないよ」
「…………へ?」
「私の初恋の相手、ギラヒム様じゃないの。空にいた頃、女神像の裏手に、」
「待てお嬢!! その先は言うな!!」
「むぐむ!?」
「……いねェ、みたいダナ」
「っぷは。……いねぇって、マスターのこと?」
「たりめェだろ。ていうかお嬢、ンなこと聞かれたらあの人が怒り狂うッてお嬢が一番わかってンだろ」
「……うん、そうだね。迂闊だった。ごめん」
「はァ……心臓にわりィ……」

 *

〜場所を移しました。
「……つうかマジかよ、あの人じゃねェッて」
「うん、あの人じゃないの。すごく小さい頃の話だけど」
「ンあー、あり得ねェ話じゃねェか」
「もちろん今はマスター一筋だけどね!」
「知ってる。……ンで、何を悩んでたンだよ」
「(やっぱり聞いてくれるんだ、さすがリザル)。んとね、空で読んだ雑誌で初恋特集っていうのを見たんだけど、初恋の人は忘れられないものって書いてあって」
「……おー」
「でも私、その人のこと、覚えてなくて」
「は? ンだよソレ」
「正確に言うと、顔が見えなかったんだよね。手と言葉だけというか。だから、一度くらい会ってみたかったなって思って」
「……よくわかンねェ話ダナ。どンな状況で会ったンだよ」
「んー……、頭の中?」
「……寝ぼけてンなら拠点帰るぞ」
「あーあーごめん! 説明端折りすぎた!! ちゃんと話す!!」

 *

「昔、住んでた島で迷子になったことがあってね。で、その時の記憶、なーんもないんだけど」
「話終わったじゃねェか」
「いやえと……上手く言えないんだけど、ぼんやり夢みたいなものを見てたことは覚えてて」
「……そこで出てきたヤツが初恋の相手ッてか?」
「うん、そう」
「……お嬢」
「なに?」
「……お嬢がちっせェ頃、“陰の者”ッて言われてた理由がなンとなくわかったわ」
「違うよ!? 想像上の人じゃないよ!!? ……たぶん!!」
「自信ねェンじゃねェか」

 *

「(リザルにはああ言ったけど、やっぱり気のせいなのかな、この思い出……)」
「リシャナ」
「(けど、気のせいにしてははっきりとした記憶なんだよね……いや、ところどころはうろ覚えなんだけど……)」
「リシャナ」
「(もう一回空に行ってみればわかるのかな。女神像の島、あんまり近づきたくないけど……)」
「…………、(ビシッ」
「ぴぎゃいッ!!?」
「ッフン」
「な、何でしょうかマスター……いつも以上に気合の入った、デコピンでした、けど……」
「愚かで間抜けなお前がこのワタシの呼びかけに無視をするからだろう? 本来ならばあと百発は入れてあげなければならないというのに」
「それは、たぶん頭の原型が無くなりますね……。それで、どうされたんですか?」
「…………」
「……マスター?」
「……何でもないよ」
「???」

 *

「リシャナ」
「はい」
「リシャナ」
「はーい」
「リシャナ」
「……なんですか?」
「……リシャナ」
「……あの、マスター。もしかして今、すんごく甘えたモードですか?」
「……、……チッ」
「ぐえ、ますた、首絞まる……」
「………………お前がこのワタシ以外のことを考えているからだろう」
「え、何でバレ……ごめ、ごべんなざ、ふぎゅー!!」

 *

「で? 何を考えていたのか、正直に白状したらどうだい?」
「……、……今日のご飯、何にしようかなって」
「…………」
「う……(素直に言わなきゃ拷問かけられそうな気配……)。……嘘です。話します」
「最初から言え」
「はい。えーとその……私の、ですね……初恋の相手について、考えてまして」
「ふぅん」
「……それだけです」
「つまり──いつものごとく、お前が愛するこのワタシのことについて考えていた、と」
「え」
「ッフン、当然の行いを説明するために随分まどろっこしいことをしたものだね。ワタシの貴重な時間を無駄にした罪は重いよ? リシャナ」
「あ、あのえと、実は……マスターじゃなくてですね、初恋」
「ワタシの時間を浪費した分、お前にはその身をもって償いをし……、…………は?」
「だから、その、えっと……」
「…………」
「…………」
「…………リシャナ」
「は、はい」
「今からその男を殺しに行く」
「!!!」

 *

「ま、マスター」
「…………」
「落ち着き、ましたか?」
「……あ?」
「だ、だから! 顔も名前もよくわからない人なんです! 探しようもないというか実在してるかどうかもわからなくて、ですね!」
「んな訳のわからねぇ言い訳で納得出来るわけがねぇだろ。噛み潰すぞ」
「それ以上言いようがないんですぅぅ……!」
「なら死ぬ気で素性を思い出せ、すぐに。今すぐに」
「そう言われましても……!」
「……いや、思い出すな。記憶から抹消しろ。欠片も残さず、その前後も含めて端から端まで、だッ……!!」
「そ、そう言われましても……!!」



「ありゃ痴話喧嘩ッすか?」
「ンだな。ま、言うなッつったのにビビって吐いちまったお嬢のせいだかンな。ほっとけ」
「リザルの兄貴、厳しッすねぇ」

 *

「…………すぅ」
「(やっと落ち着いて眠ってくれた……)」
「…………チッ」
「(ゆ、夢の中で舌打ちしてる……)」
「…………」

 眉間に皺を寄せたまま、ギラヒム様は私の胸に頭を押し付けて眠っている。白銀の髪に指を絡めると心底ウザそうな唸り声が聞こえてきた。夢の中でも私は彼に怒られているのだろう。

「(……それにしても、本当に私の初恋、誰だったんだろう)」

 リザルに話した通り、それは夢の中で会った人、と形容するのが一番近しい気がした。
 けれどそれを現実ではない、と切り捨ててしまうにはあまりにも生々しい実感だ。“出会った”という記憶は、私の中で事実として鮮明に焼き付いている。

「……ん」
「ぐえ」

 短く声音を漏らし、体勢を変えたギラヒム様が私の体に腕を回して思いっきり締め上げてきた。たぶん夢の中の私が技をかけられている。
 窒息する前に何とか脱出するけれど、逞しい腕は私に絡みついたままだ。気を抜いたら凶器となるこの腕と手だけれど、ツヤツヤの肌は相変わらずなのだから不公平だとも思う。

「────、」

 その時だった。艶やかな彼の手の感触を思い出していると、不意に一つの光景が頭をよぎった。

 それは、私に伸ばされた一つの手。
 その手の意図も、意味も、何もわからなかった。けれどかつてのわたしにはそれが救いに思えて。世界を変える、きっかけになる気がして。何より、

「……声」

 たぶん呼ばれたわたしの名前が──泣いてしまいそうなほどに、温かくて。
 だから私は、その人のことを忘れられなかった。

「…………」

 部下の胸に顔を埋めて沈没している主人の頭を再び撫でる。今度は少しだけ吐息を漏らしたけれど、少しだけ気持ち良さげに額を擦り付けられた。
 それがあまりにも愛おしくて、どこか懐かしい気持ちにすらなって。
 私はゆっくりと、彼と同じ眠りの世界に落ちていった。

 *

「おはようございます、マスター」
「…………ん」
「よく眠れました?」
「……、……ん」
「マスター」
「……ん」
「……大好きでしたし、ずっと大好きです」
「………………」
「……マスター?」
「…………馬鹿部下」
「……えへへ」

 *

「というわけで、無事仲直りです」
「そーかいヨカッタナ」
「……リザル先輩、なんだか腑に落ちてなさそうな顔」
「そーゆーワケじゃねェケド、すンげェフワッとした理由で納得したモンだなと思ってよ。あの人も」
「そこは私も不思議だったけど、翌朝にはなんだかすごく落ち着いてたんだよね。……あれかな、きっと私が前世からマスターにゾッコンって伝わったからかな」
「意味わかンねェよ。つか前世からって、親ナシだろ、お嬢」
「親ナシでも前世はあるから! ……たぶん」
「ンあー……いろンな意味で親の顔が見てみてェモンだ



次回もお楽しみに!