Log


kobakoまとめ *2023.4月号
・ほぼ魔族長と部下夢主(+たまにリザル)の会話文です。
・時系列等々バラバラ
・series設定の話も含まれています。


▼らい(あー)の日2023

「マスター」
「何」
「その……、……出来ちゃったみたいです」
「何が」
「…………こども」
「ふぅん。……、…………、…………は?」
「赤ちゃんです」
「………………」
「……なーんて、今日はうその、っぶぎゃ!?」
「………………」
「ま、マスター、何で私、いきなり押し倒されてるんです……?」
「……嘘の日、とか言ったね? ワタシとしたことが、馬鹿部下の馬鹿で粗末な嘘にほんの一瞬取り乱してしまったよ。……だが、」
「だ、だが、なんですか……?」
「……お前に“出来た”と言わせる感覚は、意外にもイイものだと思ってね」
「はい……?」
「躾の意味も込めて。本当に“出来”るまで……シてあげようかと、思ったんだよ。……覚悟は出来ているよねぇ、リシャナ?」
「ひ……!!」

 *

〜翌日
「マスター大好きです」
「ッフン、知ってる」
「んふふー」
「…………」
「…………」
「リシャナ」
「はい?」
「……日付、先ほど変わったね?」
「え? あ、はい」
「……ならいい」
「…………(にまにま」

▼はるうらら

「んふふー、あったかい季節になりましたねぇ」
「フン」
「そういえば、この間読んだ本にこんな言葉が書いてあったんですよ。──『変態は春の季語』って」
「…………」
「…………」
「……なぜそれをワタシに言ったのかな?」
「いえ、あの……、……すみませんでした」

▼マッサージ部下

「(ぐっぐっ」
「圧が足りない」
「う、御意です……。むん、(ぐっ」
「フン、やはりお前は貧弱そのものだね? 主人へのマッサージですら碌に出来ないなんて」
「前も言いましたけど……マスターのお肌が綺麗すぎて力入れるのが躊躇われるんです。……無条件で触れるのは嬉しいですけど」
「ハッ、そうだとも。このワタシのしなやかな筋肉は本来触れることすら許されない繊細な美の結晶体なのだよ。だがそれが故に、少しでも気を抜いたなら可憐な花々のように散ってしまう儚いものだ。だからこそ、きめ細やかな手入れをして、永遠のものとしなければならない。……そういうわけで、つべこべ言わず、誠心誠意、やれ」
「押忍……(今日はご機嫌だなぁ)」

▼すはすは

「わあ、花畑ですよ! マスター」
「そうだね」
「やっぱりこの時期のフィローネの森は癒されますね。いろんなところで花が咲いてたり、動物たちがお散歩してたり。ちょっとだけ摘んで、お部屋に飾ろうかな……」
「…………」
「うんうん、いい香り。癒され、」
「リシャナ」
「る……って、何ですか、マスター」
「ッフゥン!!(バサッ」
「……え、何でマント捲ったんですか」
「何故だって? お前が嗅ぐべきは、そんな花では、ないからに決まっているだろう?」
「……嗅いでいいんですか?」
「お前の嗅覚への調教が足りていないとわかったからね」
「……じゃ遠慮なく。すーーはーー」
「フゥン!!」

▼ずっと何色か考えてた

「…………」
「…………」
「………………」
「あ、あの……マスター?」
「……何」
「なんで、ずっと私の爪、見てるんですか?」
「…………」
「え、えっと……」
「……するなら、やはり赤だろうね」
「は、い?」
「……何でもないよ」
「は、はい……」

 その時私は気づいたのです。
 空で“ねいる”という爪を彩る技術が流行っていると、つい最近マスターにお話ししたことに──。

▼危ないあぶない

「私もいろんな武器、使えるようになってみたいです」
「へぇ……? このワタシが、懇切丁寧に、手塩にかけて、駄目部下を育ててあげたというのに何が不満だと言うのかな?」
「不満とかじゃないですよ。もちろんマスターが教えてくれた魔剣と魔銃が一番です! けど、いろんな武器使えた方がかっこよ……もとい、マスターのお役に立てるかなと思いまして」
「ふぅん。まあ、どうでもいいとも。お前が新たな武器の使い方を誤り自滅をしたとしても、ね?」
「えー……教えてくれないんですか?」
「教えるわけがないだろう。魔剣以外にうつつを抜かしているお前に」
「……魔剣以外の武器を使うかっこいいマスターを見てみたいななんて思ったり」
「ッフン!! ……教えるわけがないだろう」
「(今一瞬乗せられかけたな……)」

▼小さな手のひら

「難しいです。……戦術の立て方」
「だろうね。お前の小さな小さな脳で考えた戦術など、実際の戦場では一瞬で突破されてしまうだろうね?」
「むー……。でも、私の戦術に魔物の子たちの命がかかってるって考えたら、真面目に考えなきゃですね」
「そうだとも。数百の儚い命がお前の手のひらの上というわけだよ。お前の、手のひらの、上にね?」
「う……ここぞとばかりに圧かけてくる……」
「当然だろう。こぉんなに小さな手のひらの上に乗せられる哀れな魔物たちを想うとワタシの清らかな心は今にも砕けてしまいそうだよ」
「同感ですけど……すごく私の手のひらムニムニするじゃないですか……」

▼見送られる〜失敗

「じゃ、マスター。部下リシャナ、任務に行って参ります」
「ん」
「また三日後、会いましょう」
「……ああ」
「いってきます」
「…………、…………(ガシッ」
「え」
「…………」
「ま、マスター、どうしたんですか?」
「……ここで待っていろ」
「は、はい?」
「……ワタシも出る」
「ワタシもって……え、マスター、一緒に来て下さるんですか?」
「うるさい。喚いていないでここで大人しく待っていろ。余計なことを考えたら首を捻じ切る」
「ひ!!?」

▼精神攻撃

「リザルって、泳げるの?」
「泳げるケド……ンだよ藪から棒に」
「そうなんだ……。……この間森で見かけたボコブリンも泳げてたから、もしかしたら拠点にいる魔物の中で泳げないの、私だけなのかなと思って……」
「ンあー……可能はあンなァ。つか、あれから練習したンじゃねェのかよ」
「うん、した。したんだけど……」
「おう」
「……マスターが、『泳げないお前が一番可愛いかもね?』なんて見るからに嘘ついてる顔で言ってきて……嘘だってわかってるのにその言葉が突き刺さってて……練習、しづらくて……!!」
「……やっぱりしょーもねェ理由じゃねェか」

▼とらんぷ主従

「何だい、それは」
「あ、これですか? 空で今流行ってる遊びの一つで、“とらんぷ”ってやつらしいです」
「……こんな紙ごときで満足出来るなんて、つくづく人間は浅はかなものだね」
「結構面白いんですよ? これだけでいろんな遊びが出来るんです。たとえば、」
「…………」
「はい。こんなふうに扇形にして、私に見えないように持って、同じ数字が来たら手札を捨てていって……、……」
「……何」
「いや、あの……、……マスター、“とらんぷ”持つの初めてなのに、なんでそんなに色っぽく仕上がるんですか……?」
「ッフゥン!! 美の化身として、当・然だろう?」

▼主従の日予告編〜或る機械亜人の再誕の記録 前日譚

「『ラネール砂海に水が蘇っている』……って、まさか」
「海が広がっているんだろうね」
「え、え、海ってあの、おっきい水たまりのことですか……!?」
「…………」
「心の底から馬鹿にする目……。で、でも、そういうことですよね!?」
「……そうだね。お前の知能指数まで噛み砕いて言うとするなら」
「わあ! 見に行きましょうよ、マスター! 一緒に、海!」
「騒がしい。……本来ならば頭の弱い部下の躾をしてあげなければならないところだけど、女神の封印が存在している可能性が高いようだね」
「やった! マスターと海! 海辺の美人ー!!」
「フン」


4月は連続更新二年目のためちょっと少なめ更新なのでした。
次回もお楽しみに!