▼ おまけ
「お茶持ってきましたよー! 今日はちょっとしかこぼしませんでしたっ」
「ちょっとじゃねえだろ。半分しか残ってねえ」
やれやれと眉を寄せながらも兵長はカップに手を伸ばしてくれる。
「だが、進歩と言えば進歩か。前までは三分の一まで減っていたからな」
「この調子で頑張りますね」
少しずつでも、あなたの役に立てる人間になりたいから。
ソファへ腰を下ろした私がそう言えば、兵長がじっとこちらを見た。
「……別に、無理はしなくていい」
「え?」
「悪いものじゃないと言ったんだ、お前の失敗に巻き込まれるのも、少しは」
「兵長……」
どうやらドジな私と兵長の日々はまだ続くみたいだった。
「まあ、命には関わらないようにしますね」
「当たり前だ」
元々少ないお茶を飲み干してもらえたので下げようとすれば、肩を軽く押された。
あっさりと私の体勢は崩れる。
「兵長?」
「何だ」
「……この体勢は何でしょう」
現在、ソファへ横になっている私に兵長が覆い被さっている状況だ。
「間が抜けてるのは結構だが、小さな失敗は大きな過ちに繋がることもある。――それがどういうことかを今後のために教えてやろう、リーベ」
兵長の表情は変わらない。けれど、普段にはないその声音とまなざしにぞわりとした。前にもなかったっけ、こんな展開!
私は慌てて身をよじる。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ」
すると兵長は耳元で囁いた。
「待たない。さっさと現実を理解するんだな」
兵長な彼のセリフ 了
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