■ プロローグ
目立たずに過ごそうと決めていた。
なぜなら僕には目的がある。責任がある。役割がある。
そのために、まずはこれから三年間、この訓練兵団という場所で目立たないように生活をしようと決めていた。同期はたくさんいたけれど、彼らと深く関わることはしないようにと決めていた。
それが重要だと思っていた。
それが可能だと思っていた。
なのに――
「好きです! 大好きです! ベルトルト・フーバー! あなたに一目惚れしました! これからもっと好きになると思います! どうか結婚を前提にお付き合いしませんか!」
訓練兵生活初日。
同期が一堂に会する夜の食堂で。
すぐ目の前にいる亜麻色の髪の女の子の言葉によって。
僕は今、これ以上ないほどに目立っている。
(2014/03/17)
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