-7- [しおりを挟む] 「っだぁ……!」 ぱちり、開けた世界には、闇。何度か瞬きをするうち、黒に侵された天井の白が視界に映り込んだ。口は何故か開いていて、室内の空気を必死に取り込んでいる。 後頭部と接触しているのは、タオルケットにくるまれている枕で。私の頬を伝い続ける涙に濡らされてしまったらしく、びしょびしょで気持ちが悪い。 「ゆめ……?」 ぽつり、呟いた言葉は闇に融けた。鼓動が騒がしい。頭はぼんやりとしていて、現実とあの世界の境目を理解出来ずにいた。 彼は、誰。どうなったの。死んでしまったのだろうか。そんなの、嫌、私はまた独りに、 「っなら、ない、」 違う、私には両親も友達もいる。あの世界の私では、ない。 ただ、混乱していた。涙は止まってくれないし、心は全て哀しみに占領されてしまっている。 愛しい。切なさすら孕んだそれが、身体の内側から訴えかけてきた。 愛しいの。私は、あの人が。こんな感情は初めてでしょう、こんな切なさを感じたことは無かったでしょう。 ――また、逢いたいとは思わないの? 眠気が未だに抜けきらない私は、瞳を閉じてしまえばすぐに夢の世界へと旅立てるかもしれない。また、彼に逢えるかもしれない。 でも、恐かった。 確かに夢の続きを見ることは出来るかもしれないけれど、あの先に在るのは、哀しい結末だけだと。あの物語はバッドエンドでしか終焉を迎えられないのだと、わかっているから。 時刻は、午前三時。意識がはっきりとしてきてしまった私は、寝静まる朝方に一人、布団を抜けた。 |