15. [しおりを挟む] そして、その日はやって来た。ルカの手から睡眠薬が渡される日。私が六年という長い眠りにつく日。 要望通り、私はルカの部屋にいた。初めて見る彼の部屋はたくさんの本と写真で溢れている。私のだけではなく、恐らくアジトにいる人全員の写真を彼は部屋に貼っているのだ。仏頂面で写っている人もいるけれど、みんな例外なくどこか柔らかい雰囲気を持っている。ルカの人柄がよくわかって、なんだか安心した。私は、この部屋で眠りにつくのだ。 「ねえ、リアナ。お願いを一つさせてほしいの」 グラスと薬を両手に持って。私は、リアナの鋭い、でも光を失わない瞳を真っ直ぐに見つめた。 「彼を、ルカをよろしくね。彼が幸せになるようにして。お願い。 私に彼を突き放すことはできないの、私は最低だから、彼を縛り付けてしまったの。だから、あなたがルカを導いて。それがどんな道であっても、私は構わないから」 ルカが驚いたように私を見ている。あの日を境に決めたことだ。彼に幸せになってもらいたい気持ちだけは嘘じゃない。だから、私はリアナにすべてを託した。最後までずるい自分には嫌気がさしたけれど、これが最善であるとそう思ったのだ。私の口から「忘れて」とルカに願うことは出来そうにもなかったから。 リアナは何も言わず、それでもはっきりと頷いた。ルカが口を開く。それを遮るように、私はルカに微笑んだ。 「幸せになってね」 私の長い眠りをもたらすのがあなたの薬で良かった。だって、こんなにも気持ちよく眠りに落ちていくんだもの。あなたが愛情をこめてくれたお陰かしらね、ルカ。 |