灰色境界線 | ナノ



「そっかー、それは可哀想に」

 私の話を聞き終えると、慰めるように絵里ちゃんが私の頭を優しく撫でた。
 教室に帰るなり早速仲良くなった絵里ちゃんの席は、私の後ろ。どうすればいいのかと先程の出来事をもやもやと抱えたまま教室へ戻ると、絵里ちゃんは私に明るく声を掛けてくれた。

 優しそうな学級委員長、という私の判断は間違っていなかったらしい。校内を歩いていたと伝えたら、私が案内したのにと申し訳なさそうに言ってくれた。その流れで、私は溜まっていた泥を吐き出すように先程の出来事を絵里ちゃんに話したのだ。

 私はちょっとした事情で二年の進級時より僅かに遅れて転入してきているから、クラス全体の自己紹介などは聞けていない。
 この中学校は一年から二年へ上がるときだけクラス変えをするらしく、学年が変わったばかりの今ではあまりグループも出来上がっていないらしい。友達は作りやすいと思うよ、と絵里ちゃんが教えてくれた。
 とは言っても、私はそこまで社交的な人間ではないのだけれど。

「にしても、一年は下らないことやってんのねー」

 呆れたように、絵里ちゃんが窓の外で体育をやっている生徒を見つめる。
 私にはまだ解らないけど、きっと校庭にいるのが一年生なんだろう。



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