放課後、帰り支度を済ませ廊下へと出た綺に、紺野が静かに近付いてきた。 「浅葉病院に、集まります」 短くはっきりと、それだけを告げて、紺野は此方を伺っていた長瀬の元へと歩み寄っていく。警戒心が隠しきれていなかった紺野。当たり前か、と、小さく息を吐き出してから、綺も少し離れたところで待っている悠哉の元へと歩を進める。そんな綺の後方から、可愛らしい、小さな声。 『綺さん、あの、』 そんな声に振り向けば、ふわふわと宙に浮く彼女。柔らかそうな髪の毛を肩から流して、彼女は頭を下げた。 『ありがとうございます。本当に、本当に……』 深々と頭を下げ、腰を折る。暫くしてから見ることの出来た彼女の瞳は、涙で潤んでいて。彼女がどれほど紺野たちを大切にしているのかが容易に読み取れるほど、彼女は深く深く、もう一度頭を下げた。 貴方達を、絶対に笑顔にしてみせるから。 口には出さずとも、心の中でそう誓った綺だった。 |