暖房を入れっぱなしにしていたらしい。いつもの部屋に足を踏み入れた綺は、小さく溜め息を吐いた。切るのを忘れないよう言ったはずなのに。そう心の中でぼやきながら暖房を切る。充分に暖まってしまっている室内の生温さに気分を悪くしたのか、扉を僅かに開けた。 『此処は……?』 「俺達の溜まり場だよん」 ソファに勢いよく身を静めた悠哉が、戸惑いの表情を浮かべている彼女、一ノ瀬奏に人当たりの良い笑みを携えながらそう答える。 その時、僅かに開けられていた隙間から人が現れた。 「……雪、お前暖房切らなかったな」 「え、ごめんなさ、い……」 額に手を当てた俊輔の隣で、雪は既に室内へと入っていた綺の存在に気付いたようで顔を青ざめさせた。 まるで自分は関係無いとでも言うかのように、ソファへ早々と腰掛けノートパソコンを立ち上げる俊輔。 「雪、そこへ座りなさい」 綺が示したのは、ひんやりとした床。静かに返事をし、大人しくその場へと正座する雪。そんな和やかな雰囲気に一ノ瀬が優しく微笑んだのを、悠哉はじっと見つめていた。 |