08
審議の末、エレンの身柄は無事調査兵団が預かる事となった。
巨人化できるエレンを恐れている憲兵団に、エレンを制御する事などできない。
人類最強の兵士であるリヴァイと、それに次ぐほどの力を持つレイラならば、エレンを制御する事は容易。
「全く酷いね、ほんとに。痛いだろう?」
「少し……」
「で?どんな風に痛い?」
「え、」
「やめろつってんだろバカ」
「痛っ、」
巨人に対する興味のスイッチが入るハンジ。
そんなハンジの頭を書類を丸めた筒でパコーンッ、と叩いたレイラ。
「痛いじゃないかレイラ〜、何するんだよぉ」
「お前は自重って言葉を知らねえのかよ。びっくりしてんじゃねえか、ああ?」
どうせ地下牢からエレンを連れてくる時も暴走しかけたろお前、と虚をつくレイラ。
ギクッと大きく肩を揺らすハンジに、やっぱりなとレイラは壁に寄りかる。
「すまなかった。しかしおかげで、我々にキミを託してもらえる事ができた。効果的なタイミングで用意したカードを切れたのもその痛みあってのものだ。キミに敬意を。エレン、これからもよろしくな」
「は、はい!よろしくお願いしますッ」
どすっ、
リヴァイがエレンが座っているソファーへと腰を落ち着かせると、エレンは小さくひいっと悲鳴を上げる。
「なあエレン。俺を憎んでいるか?」
「い、いえ!必要な演出として、理解しています」
「ならよかった」
「しかし限度があるでしょ。レイラも近くにいたんだから止めてあげなきゃ。歯が折れちゃったんだよ?ほら」
「拾うな。気持ち悪い」
「これだって大事なサンプルだし」
「エレン。こういう奴らに解剖されるよりマシだろ?」
「一緒にしないでほしいなぁ。私はエレンを殺したりなんかしない。ねえエレン、ちょっと口の中見せてみてよ」
治療の為か、単なる好奇心か、おそらく後者だろうが、ハンジの言葉にエレンは戸惑いながら大きく口を開けた。
「えっ…?」
「ハンジ?どうした」
「もう…歯が生えてる……」
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