栞を挟む 

11

日も暮れようやく掃除を終えた後、食堂で息抜きにとそれぞれ茶をすすっている。
この時代に電気はない。
いくつかの蝋燭に火を灯し光を得ている。
誰も口を開かない長い沈黙の中、エルドが口を開いた。

「我々への待機命令はまだ数日続くだろうが、30日後には大規模な壁外遠征を考えていると聞いた。それも、今季卒業の新兵を早々に交えるらしい」
「それは本当か?エルド。ずいぶん急な話じゃないか。ただでさえ今回の巨人の襲撃は新兵には堪えただろうによ」
「ガキ共はすっかり腰を抜かしただろうな」
「本当ですか兵長、副兵長」
「作戦立案は俺達の担当じゃない。だがエルヴィンの事だ。俺達よりずっと考えているだろう」
「確かにこれまでと状況が異なりますからね…。多大な犠牲を払ってまで進めてきたマリア奪還ルートが一瞬で白紙になったかと思えば、突然まったく別の希望がふってわいた……」

エルドはじっとエレンを見つめる。
それにつられ、ペトラ、オルオ、グンタ、プードル、ビースもエレンを見た。

「未だに信じられないんだが、巨人になるってのはどういう事なんだ?エレン」
「その時の記憶は定かではないんですが、とにかく無我夢中で…。でも、きっかけになるのは自傷行為です。こうやって手を……」「……?エレン、どうして巨人になるには自傷行為が必要だと知っている」
「あ…それは……わかりません。気づいたら知っていて……」
「無意識にやっていたのか」
「お前らも知ってるだろ。報告書以上の事は引き出せねえよ。ま、アイツは黙ってないだろうがな」
「気になる事はとことん調べるからな、アイツは……。と言うより、アイツがいるから変人扱いされるんじゃないか?私ら。ったく…アレのどこに興味惹かれるのやら」
「下手に弄りまわされて死ぬかもな、お前」
「え…ッ、あいつとは…?」
「アイツはアイツだ。くれぐれも気をつけろよ、エレン。いざとなったら逃げろ、バラされるぞ」
「え、」

ガタンッ!!
食堂の扉が大きな音を立ててガタついた。

「ごは…っ!!」
「!!?」
「来たな……」

レイラとリヴァイは音の主が誰なのかすぐにわかったらしく、ペトラに開けてやれ。と指示を出す。
それに従ったペトラが鍵を開けると……

「こんばんわ、リヴァイ班とレイラ班のみなさん。お城の住み心地はどうかな?」
「早かったな」
「来なけりゃいいのに」
「いてもたってもいられないよぉ…!」
「ハンジ分隊長……」
「お待たせエレン。私は今、街で捉えた巨人の生体調査を担当しているんだけど…明日の実験には君にも協力してもらいたい!その許可をもらいに来た」
「実験…ですか?俺が何を……」
「それはもう、最ッ高…に滾るヤツをだよォ!!」
「あ、あの、許可については、自分では下せません。自分の権限を持っているのは自分ではないので…」
「レイラ!明日のエレンの予定は?」
「知らん。リヴァイに聞け」
「庭の掃除だ」
「ならよかった!決定!!エレン、明日はよろしくう!!」
「あ…はい、…しかし巨人の実験とは一体どういうものですか?」
「んっ?」
「え…あの、巨人の実験とは……」
「おい、やめろっ。聞くな」
「はぁ〜…やっぱり?聞きたそうな顔してると思ったぁ……」
「…えっ?」

Prev | next

Back to top 


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -