みじかいゆめ | ナノ



リヴァイの浮気話 A



「私の部下と何があったのか話してくれるかな。」

悪人のオーラを100倍くらい禍々しくしたような、不機嫌に机に頬杖をつくリヴァイを見下ろす。

「あ?」と高圧的に発された威嚇とも言える声にも、怖気てやるつもりはない。


「昨日、ナマエが部屋に逃げ込んで来たよ。酷い状態だった。」

怒っているのはそちらだけではない。
私だって怒っているんだと、あくまで冷静に声を続ける。

「無理矢理したんじゃないんでしょ。」

「・・・ふざけるんじゃねえよ。あいつとはちゃんとした関係だと、てめえも知ってるだろうが。」

「じゃあ何で?事後に服を身に纏う余裕も無く逃げ出す理由って何なの?取り乱したってレベルじゃ無かったよ、あれは。」

私とは目も合わせず、ただ横にそらした何処かを睨み付けるだけで黙りこくるリヴァイに腹が立って来た。

「・・・分かった、もういい。ナマエに近付かないでくれるかな。リヴァイとの事は応援してたけど、今回の件で目が覚めた。あそこまで恋人を傷付けといてダンマリするような男なんてロクな奴じゃない。上官として、優秀な部下を使い物にならなくさせられたら困るんだよね。次ナマエに接触したら、二度とリヴァイの目の届かない役職に飛ばすから。それじゃ。」

もう二度とリヴァイとは口も利きたくないと思った。
そうやって一生鬼みたいな顔して怖がられて誰からも愛されずに生きていけばいいんだ。

せっかくリヴァイを愛し、リヴァイが愛せる人間が側にいたのに・・・

昨夜の憔悴し切ったナマエの顔が頭に浮かんでやり切れずに目についた椅子を蹴り飛ばした。舌打ちが聴こえる。このくらい、いつもみたいに自分が蹴って壊した事にしてエルヴィンに報告しろよ。そして怒られればいいんだ。

ドアノブを回し、乱暴に引いたはずの扉が動かない。壁と一体化してしまったみたいだ。

目線を下に向けると、ドアストッパーのようにドアを壁に固定するブーツの先が見えた。


「今蹴り飛ばした椅子に座りやがれクソ眼鏡。俺とあいつの間に何があったのか教えてやるよ。」

胸ぐらを掴み上げられ、歯を食いしばって私を睨むリヴァイが目下に見えた。

さあ、話を聞かせてもらおうか。
あそこまでナマエを追い詰めた経緯を。

「納得出来る話なんだろうね?」

「はっ。納得出来る話かだと?」

リヴァイが椅子に腰掛け、片脚を組む。
私も転がした椅子を起こして座り、向かい合った。

「クソより汚え話だ。俺も、この世の中もな。」

自暴自棄に吐き棄てるようにそう言って、リヴァイは話し始めた。

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