みじかいゆめ | ナノ
これからは隣で @
” ナマエ・ミョウジ ”
ある一人の女性兵士の戦闘成績に目が留まったのは、俺が指揮する特別作戦班の顔触れを今までの戦闘成績の一覧表から選出している時だった。
何百枚もの紙の束に目を滑らせながら、つらつらと数字の風景を目で追っていく。
気の遠くなる作業だった。
正直目を動かす事にも疲れてきていて、長年の付き合いになる目の下の隈が痛い気さえしてくる。
ほとんどが討伐数一桁。
そして討伐補佐数も同じく一桁の列が並んでいて、これといって流れている目線を止める二桁の数字は紙を百枚ほど捲ってみても見えてこない。
この作業を始めて、もう二時間程たっただろうか。
取り敢えずここまで見たら休憩しようと、ぺらりと百と八ページ目になる紙をめくった。
”取り敢えずここまで”のページに切り替わった途端、ある数字が目に着く。
「・・・・ほう。悪くない。」
やっと見つけた。そう思った。
数字が綺麗に一列に並ぶ中、その女性兵士の数字は一つ頭を飛び出していた。
「討伐数 10 討伐補佐数 42。
ナマエ・ミョウジ・・・・か。」
名前の綴りを一文字ずつなぞりながら、用意してた紙に名前を写す。
二時間経ってようやく、戦歴録の隣に並べた特別作戦班選出用のメモ紙が白紙ではなくなった。
「ナマエ。」そう呼ばれている兵士にはハッキリと覚えがあった。
班長であるミケと並ぶと、小さな身体がより頼りなさげに見えていた兵士。
他の班員に隠れて、早朝に一人こっそり朝駆けしている兵士。
「ナマエ・ミョウジ。」
さっきまでの目の疲れがすっかり吹き飛んでしまった。
もう少しだけ作業を続けてみるかと弛んでいた背筋を伸ばし、頬杖をつく事も止めて再び作業を再開させた。
白い紙に綴られた名前の輪郭を視界の隅に感じ、ガラにもなく一人ニヤける顔を抑えながら・・・。
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