みじかいゆめ | ナノ



たまには、酔わせたい




仕事も終わり、皆が寝静まったあとの夜。


恋人であるリヴァイの私室に連れ込まれ、酒の相手をさせられていた。


「ナマエ。もっと飲め。それじゃ相手にならん。」

「いつも飲むな飲むなって言う癖に今日はどうしたの?」

「俺だってお前と飲みたい日があっても悪くないだろ。」

「そうだけど・・・でも正直、リヴァイのペースにはついていけないよ!
リヴァイも私が弱いの知ってるでしょう?」

リヴァイはお酒も人類最強なんじゃないかと思ってしまうくらいお酒に強い。

いつも飲み比べで酔い潰れたハンジさん(とは言ってもハンジさんも相当強い)を部屋に投げ入れたり、潰れた皆んなを鬼の形相、もしくは蹴りで覚醒させたり、飲み会後の悲惨な会場の後片付けを一人残って黙々とお掃除したりしている。

そんな恋人とは対照的に私はお酒に滅法弱い。
しかもその日の気分か何か分からないけれど何かに左右されて泣き上戸になったり笑い上戸になったりキス魔になってしまったりして、迂闊に飲めない。キス魔になることだけは避けたい。

そのせいで宴会でもアルコールに囲まれる中で一人水なので、後片付けまでしっかりしていた。勧められるお酒を断る事への罪滅ぼしの気持ちでもある。その片付けの場でリヴァイとは縁があり、いつの間にかこうして恋人同士になっていた。


「勿論知っている。承知で呑ませてるからな。」

余裕の表情で、何杯目かも分からない酒を傾けるリヴァイ。

あまりの強さに、恐ろしいものを見た気がしさえしてくる。


「止めてよ。どうなるか私も分からないんだから・・・。」

「安心しろ。どんなお前になっても俺が服従させる。」

さあ飲めと、まだ半分しか減っていないグラスに並々と液体を追加されてしまった。

「大体、泣こうが笑おうがキス魔になろうが構わないだろ。俺しかいないんだからな。」

「・・そう、なんだけど・・・。」

「まさか俺に嫌がられるとでも思ってるんじゃないだろうな?」


どきりとした。

相変わらず鋭い人だ。隠している思いも、リヴァイの前では全て無意味に晒されてしまう。


はぁ、と溜息をつき、抱えていたグラスをゴトリとテーブル置く。


「ナマエよ・・俺はお前を心底愛してるつもりなんだが、お前には伝わっていないのか?
へべれけのお前は愛せないとでも?」

視線に当てられ、少し俯く。


リヴァイが嫌がるとか、そんな風に思っているわけではない、と思う。

毎日毎日、愛の言葉を貰う訳ではないが、彼なりの愛情表現で大切にして貰っていると自覚している。


ただ・・・何だろう。

恥ずかしいとか、怖いとかそんな気持ち・・・。


粗暴ながらも、真っ直ぐな愛情を注いでくれる目の前の男を見る。

シャワーを浴びた後の、まだ湿り気のある髪と切れ長の瞳から色気が溢れている。



「あの・・ね。

リヴァイの前では、いつも可愛い恋人でいたい・・・・から。」


普段こういう甘えるような言葉は恥ずかしくて中々言えないのだけれど、半分飲んだお酒のせいかするりと口から出て行った。


珍しく目を見開き、少し口も開いてしまったリヴァイを見てやっぱり恥ずかしさがこみ上げる。

これもお酒のせいなのか、熱くなった顔を冷やそうと手のひらで頬を包むと「悪くない」と、楽しそうな声が聞こえてグラスを片手にリヴァイが私の隣に座り直した。



「酔ったお前は可愛くないのか?ナマエ」


私に問うリヴァイはなぜか珍しく口角を上げてどこか企み顔だ。


「あまり見せたい姿ではない・・・と思うの。」

「そうか。」

短く答え、笑みを深くした。


空いている手で顎をすくわれ、欲情した瞳に射抜かれる。


「試してみるか。」


息を吹きかけるように、腰を砕くような声で囁かれ、それだけで体から熱が溢れる。

熱に怠けた瞳でリヴァイを見ると、グラスを煽り、唇が近づいた。


柔らかな感触が押し付けられ、それだけで気持ちよくなってしまい唇を開くと、後頭部を手で押さえ込まれてコポリと口内に熱い液体が流れ込んだ。

驚いて目を開けると、見下ろす瞳が「飲め」と語っていて素直にごくんと飲み込む。

熱がさらに高くなり、頭がぼうっとしてきた。


「ふふ。」


珍しくリヴァイが笑い声を溢しているが、反応出来ない程には酔ってきているらしい。

楽しそうにグラスを煽り、私を捕まえて顔を近づけるリヴァイに全く反抗出来ずに ーむしろこのまま流されてみたいー 与えられた唇とアルコールを味わった。



「リヴァイ、もっと。」


そんな言葉が口からすり抜ければ、鋭い瞳が満足気に細められてその奥に熱情を見た。


「もっと酔え。ナマエ。」

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