冷たい手でもいいから
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それは寒い寒い冬の日
昼間よりかは幾分か静かな街にパンッと無機質な銃声が響く
『あれ、今の音なに?』
街を牛耳るかの有名なポートマフィアに所属する比野はそれなりの経験を積んで、それなりの地位に立っていた
いつも通りの仕事の一つで、我々のシマで許可なく密輸を繰り返すわるーい輩にご挨拶を・・・
ただそれだけのはずだった
じわりと肩に痛みが広がる
すぐにもう一発銃声が鳴り、次は横腹のあたりに痛みを感じた
駆け寄ってくる仲間のうち1人が銃声の主を撃ち殺し、比野さん!!と呼ばれるところまでは意識があった
目が覚めるとそこはどうにも無機質で冷たく暗い治療室だった
コツンコツンと人の足音が聞こえその足音すら愛おしく感じる
そう、足音の主は芥川龍之介
上司として、一人の男性として、お慕いしている所謂想い人だ
「目は覚めたのか」
『はい、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした』
「それはいい
お前を撃ったのは今回の標的の者では無かった」
『そう、ですか…』
芥川さんはきっと私があまり気負わないようにと優しい言葉をかけてくれているのだろう
だが、慕っている上司にそんな気遣いをさせていることに更に嫌悪感が募る
はぁ…と芥川さんからひとつの小さな溜息が零れる
「僕が其方に向かっていればお前は怪我をすることなく、今も隣に立って僕の名前を呼んでいるのだと思うと、どうしようも無く心が痛む」
『あ、芥川さん…?』
「あまり心配をかけるな」
そう言って伸びてきた手は私の頬に触れる寸前、ピタリと止まってしまった
冷たい手でもいいから
「僕の手は冷たすぎる」『それでもいいです』「お前は本当に物好きな奴だな」
冷たくも暖かい彼の手はとても優しく私の頬を撫でるのだ
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久しぶりの更新です
今更文ストにハマるという…芥川贔屓目。
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