曖昧クラリネ
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綺麗だなぁなんてぽつりと本音が零れた私の視線の先には、凛とした表情で黒板を見つめる轟焦凍。彼の顔面は整っている。
だからどうしたと言われてしまえばそこまでなのだが、最近の私はなんだかおかしい。気づいたら彼のことを見つめているし、サラサラした赤毛に触りたいとさえ思う。
この感情が恋なのかと聞かれると恋ではない、と思う。ただ見つめていたいし触りたい。それ以上でもそれ以下でもないのだ。
「なぁ、比野」
あぁ見つめていたのがバレた。授業後に轟くんが私に話しかけるなんて、絶対、絶対バレた。
なんて言い訳しよう、どうしよう、気持ち悪いって思われたかな。なんて考えていると、「比野?」と2度目の問いかけが。
あぁ、終わった。そう思いながらも
「どうしたの?轟くん。」なんてとぼけた返事をした。
「……比野さえ良ければ…なんだが、」
「うん?」
「次の休み、どこかへ出かけないか?」
思ってもいなかった問いかけに言葉が詰まる。どこかってどこ?なんで私?それってもしかしてデートのお誘い?
詰まる言葉とは裏腹にたくさんのハテナが頭の中を暴れ回る。
「………駄目、か?」
「いやいやいや!全然ダメじゃないよ!出掛けよう!」
「!よかった…どこ行く、とかまた連絡する」
そう言って私の席を離れていく轟くんの後ろ姿から何だか目が離せない。
私ってなんで轟くんのこと気になってるんだろう。え?気になってるの?これって恋なの?違うの?
曖昧クラリネ
「触りたいとか綺麗だとか轟くん以外には思わないけどなぁ。」
恋に気づくまでもう少し。
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