沈め石 01


 割竹を交差させて、格子をつくり、籠をつくる。その網目は、六角形の羅列の隙間を小さな三角形が埋めていて、星型が連なっているようにも見えた。ぼくの手にある竹籠は、目も荒く、歪んでいて不恰好だったけれど、遠くから眺めれば手鞠のように見えるのかもしれない。
 噎せるような草いきれを風が散らす。草は地を埋め尽くさんばかりに繁っている。家屋から川への道のりにおいて、よぎった暗がりに、前を行く叔父が、一瞬だけ沈む。麦藁帽子のふちを持ちあげて空を見上げると、悠然と鳶が旋回していた。
 叔父の家は山間にあった。瓦屋根で座敷蔵のある、和室と板廊下でできているその家に、叔父はひとりで住んでいた。叔父の家は川によって水田や集落と隔てられていた。普段は叔父しか使わないからか、その川には頼りない橋が架けられていた。欄干や柵といったものがなく、大人がひとりなんとか渡ることのできるくらいの、打ち付けた木の板を連ねて足場にしている細い橋だった。橋のはるか下に、流れる水のきらめきがある。細い川で、上流に近いからか、それなりに流れは急だった。これがもっと壮大であれば渓谷と呼んでもよかったのかもしれない。

「大雨が降ったりすると、昔はよく氾濫していたそうだよ」

 以前、そんなことを叔父は教えてくれた。
高く跳ねた水飛沫が、真夏の鋭い陽光に輝いた。両手で竹籠を抱えて、細い石段を注意深く川へと下りていく。そこで待っていてくれた叔父と合流する。ぼくと叔父の影が川底でゆらめく。麦藁帽子をかぶった子供の影と、眼鏡をかけている細長い大人の影。ふたつの影は、輪郭こそ水の流れによってさざめいていだけれど、くっきりとしていて、黒く、濃い。

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