夜歩き(企画)


艶やかな夜に虫の声がころがった。
雫の跳ねるような音が、重なり、さざめき、宵をふるわせる。
うだるような風が、潤んだなまぬるさを纏い、腕に脚に絡みついた。水の香にひそむ朽葉の香は、昼の名残たる倦怠感に、目を醒ますような鋭さを滑りこませる。
足裏の土は、サンダルの底を隔てていてすら、あたたかい。
頭上には満天の星。繁茂する下草のきらきらしさから浮遊した草いきれと、実りと眠りを呼び覚ます朽葉の香が、ないまぜとなって、畦道を走る。

「あぁ、いい風だね」

さらさらと金物めいた煌めきを撒いて波打つ青田の中で、私は傾ぎゆく星を見上げていた。

夜歩き
(見えずとも芳しい足音がそこに)

眼掻けさま提出
お題/夜風


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