めざまし(企画)


 音と呼ばれるものがある。
 物音、靴音、轟音、雑音。虫の音、楽の音、音律、音声。
 瞼を落とすと、そこには、いつだって暗闇がいてくれた。私は、時折ひかりがちらつく暗闇を、ふわふわと漂っている。
 泣き声、笑い声、怒声、歓声。囁き、呟き、喚き、叫び。
 たとえば、そのように表記されるようなものたちが、私の肌を這い伝い、皮膚をふるわせていた。
 音とは痺れに似ている。

「きこえているかな?」

 声と呼ばれる振動が、私の肌を撫でた。

「お目覚めの時間だよ」

 覚醒を促す音が、穏やかに、大気を伝う。
 私はその音に溺れるのがすきだった。

「おはよう、お寝坊さん」

 私はゆっくりと瞼を持ち上げる。
 眩い光に塗り潰された世界には、いつだって、やわらかな苦笑を湛えながら、私を見つめる君がいた。



めざまし
(私を引き摺りあげるのは、いつだって、この音)



earさま提出
お題/音



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