かみさま01


 かつり、と、硬質に繊細に大気を震わせる澄んだ音の残滓が尾を引く中、透きとおった平面に散らばる透きとおった小さな球体が、いくつか、転がってゆく。
 呑まれそうな星空を頭上にも足下にも展開したような、そもそも上下などという概念そのものが意味を成さないような星屑の海に自らの寄る辺として平面という境目を無理矢理に敷いたような、立つことはできても見ることは叶わない大地にひとつの人影が佇んでいた。そこではまるで広大な星座図が広がっているかのように散らばる数多の小さな小さな球体が、それらを見つめるその人影の足許で、転がりぶつかり軽やかな音を弾かせながら、ささやかで透明な燐光を煌かせ、新たな星座をかたちづくりながらまろび踊る。
 ゆるやかな流動と、静謐に混じる軽やかな音律。伸ばした腕のその指先から雫が滴り落ちそうなまでの底知れなさを伴う潤んだ闇の中で、その人影の手の内に在ったひとつの球体が、星座図を見つめるそのひとのその手にわずかな力が籠められたことで音もなく砕け、きらきらと飛沫に似た燐光と化し、音もなく舞い落ちて透明な大地に融けていった。
 奇妙な浮遊感と落下感を誘発する闇に平面を描くそれらの球体には失敗も成功もなく、強いて言うなれば、その存在そのものがあるひとによって生み出されたという、ただそれだけにすぎない。
 それを残酷だと、ひとは言うだろうか。

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