天使のためいき01
「神様」
蒼の薄闇を重ねた宵闇に。
「神さまー」
宵闇に貼りつく鬱蒼とした茂みの黒々とした平坦な影に。
「かーみーさーまー」
純白の羽根を背負い白い衣を纏ったそれそのものから燐光が振り撒かれているようなふわふわとした金髪と白皙の肌とを持つ人影が、きょろきょろと辺りを見回しながら捜しているひとの通称を呼ぶ。もっとも、自主休暇を宣言して執務室から姿を消したそのひとが秘書の呼びかけに応えるなどとは当の本人――神様秘書の天使も微塵も思ってはいないのだが、それでも神様がいなければ天界の諸々が回らなくなってしまうのだから、半ば諦めていたとしても上司の捜索を断念するわけにはいかない。切なさしか漂ってこないが、こればかりは致し方なかった。
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