きり丸と同じような境遇。土井先生の弟分。土井先生がきり丸と会う前に死亡。 ごめんなあ。助けてやれなくてごめん、幸せにしてやれなくてごめん。ああこんなに冷たくなって、私が悪かった、分かってるんだ、私のせいだろう、分かってる。だからもう勘弁してくれ、どうか、彼を 、私のせいなんだ、彼は悪くなかった。だから、彼を、私の、大事な子を、弟 を、だれか。助けてくれ。 「なあ土井先生」 「きり丸?どうしたんだ」 「この着物って売っぱらっちゃってもいいの?」 「……本当にどうしたんだ?熱でもあるのか?」 「ひでぇ!何でだよ!」 「いつものお前なら私に訊かず売っていただろう?」 「そりゃあそうだけど、…何かいっとう大事にしてんだなと思ってたからさ…」 「ああ、…売ってかまわん。元々お前にやろうと思ってたしな」 「やったぜ!うひゃひゃひゃ!」 着物を彩る濃い藍色は大事なあの子の好きな色だった。 「お兄ちゃーん、おれ、あのパフェ食いたいなあ」 「あっ俺も! 半兄の奢り!」 「お前らなあ…」 今私は平和な世に生を受けている。死に際に脳裏を我が物顔で陣取っていた、早死にした弟のようなあの子と、半分息子のように感じていたあの子は、二人とも私の弟として生きている。いや、あの頃の記憶を持っているのは私だけのようだから、姿のよく似た誰かなのかもしれない。それでもいい。どうせ私には存ぜぬ事だ。 「はあ、全くしょうがない奴らだな」 「やった!___兄行こうぜ!」 「こら、きり丸走るな。兄貴さんきゅー」 パフェパフェとひっそり喜ぶ___と、それを急かすきり丸を見ながら息を吐く。 これで世界はやっとハッピーエンドだ。 to list |