月が綺麗ですね




(愛染設定+怪盗キッド=快斗を___が知ってることを知ってる快斗)


怪盗にとって月は敵のひとつ。闇に紛れて姿を晦ますのに月夜は不向きだからだ。まあそんなことで失敗するようなオレーーー怪盗キッドではないが。だからこそ月下の奇術師なんて通り名が付けられたのだろう。

今日も華麗にひと仕事を終えて、ハンググライダーでベランダに降り立つ。と同時にガラリとベランダへのガラス窓が開いた。


「快斗、おかえり」

「おう、ただいま」

「怪我はない?」

「怪盗キッドだぜ?んなヘマしてねーよ」

「ふふ、よかった」


安心したように柔らかく笑う___に胸がきゅっと締め付けられる。写真撮りたいくらい可愛いなおい。つーかおかえりってなんか夫婦みたいじゃねえ?しかも怪我はない?って格好良過ぎだろ。なんていうか、とにかくいちいちツボだ。まあそもそも___自体がツボなんだけど。

ぼんやりそんなことを考えている間に、___はテキパキとオレのハットやマント、ハンググライダーを片付けていた。…色気ねぇな。慣れた手つきでスーツの上着に掛けられた手を取って、引き寄せる。


「わっ、か、快斗?」

「月が、綺麗ですね」


不敵に笑って見せる。どうだ少しは驚いたか。月明かりに照らされた___は少しだけ目を丸くして、そしてふっと微笑んだ。


「…ええ本当に。僕は貴方があの美しい月へ帰られないことを願うばかりです」


儚げな笑みを浮かべる___。その細い指でするりと撫でられた頬が熱くなる。うわ、なんだよそれ反則だろ。すっげぇ嬉しくて、バカみたいに心臓が煩くなる。いつも、オレばかりが___を好きみたいで哀しかったから、


「帰れるわけ、ねぇだろ。…お前が、___がここにいるのに」


自分で嗾けたくせにどうしようもなく愛しさが込み上げてきて、泣いちまいそうだ。そっとモノクルが外されて、___の左手が後頭部に回される。段々近づく距離に、ギュッと目を閉じる。と、ちゅっと可愛らしい音と共に額に柔らかい感触がーーー。


「へ?」

「月が見てるから、おあずけ」


ニコッと笑った___に、オレは言葉を失った。月なんか嫌いだ。


(愛しています)


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