終わりをずっと探している




同性を好きになった。自分でも何でかなんて分からなくて、でもただ好きだと感じた。報われないことなんて分かってる。同性が結ばれるなんて、元々出会いがそういう相手を求めるところだったか、マンガの世界かだ。オレが彼に出会ったのは普通に中学校で、信じられないくらい馬が合ったから仲良くなっただけで、だから、オレと彼が結ばれることはない。分かってる。分かってた。それでも本当は頭の隅っこのどこかで、オレは期待していた。オレが彼を好きになったように、彼がオレを好きになることもあるかもしれない、なんて。


(え…?)

目の前には手を繋いでいる男女。女の子の方はそんなによく知らないけど、男の方は知り過ぎる程知っていた。だって、好きだから。指先が凍り付いて、ピクリとも動かない。そんな、そんなわけ、だって、ぜんぜんそんなそぶりなかったじゃん。喉が張り付いて苦しい。溺れているような錯覚に陥って、だけどどこか頭は冷静で。


「___ー、はよ!」

「!、よね、や…はよ」

「ん?何かボーっとしてね?」


ポン、と軽く肩を手で叩かれてようやく体が動かせた。米屋は相変わらず読めない鋭い目で首を傾げる。何も言えずに、あー、いや、なんて言葉を濁らせながら目を二人に向ける。だいぶ先に行ってしまったけれど、分かる。あれは、出水だ。


「あ、弾バカのやつ結局付き合うことにしたんだな〜」

「え?おい、オレ知らなくてびっくりしてんだけど」

「そういや話してたとき___いなかったな。なんか告られて、別に好きな訳じゃねーけどタイプだから迷ってるっつってた」

まーあれはフるには勿体ねぇもんな。羨ましいぜ。

なんて笑う米屋にオレも笑って見せる。あーそういうことな、なんて何でもないような振りした。そっか、そうだったんだ。彼女かあ。そりゃそうだよなあ、出水結構モテるし。むしろ今まで彼女いなかったのがおかしかったんだ。そうだ、これは当たり前で、普通のことで、なんでもない。


「……なあ___、おれにしろよ」

「、は?」


米屋の方を向こうとしたとき、ぐっと身体を引っ張られる。ボスリとおれの身体が米屋の身体にぶつかって、米屋の真っ黒で男にしては長めの髪がオレの頬に当たる。え、いやいや、なにが、起こって、


「よ、よね、」

「…と思うじゃん?」


ぐっと、次は押し返される。得意気な顔の米屋にほっと息を吐く。なんだ、今の。全部冗談、だよな?なにそれこわい。何だか驚きと衝撃とで訳が分からなくなって、思わず噴き出してしまう。


「ぷっははは!あーびっくりした!突然抱き着いてくんなよ!」

「親友とられて寂しそうだった___くんを慰めてやったんだろーが」

「あははは!あーおもしれぇ!何か元気出た!サンキュな!」


バシッと米屋の肩を叩いて学校へ足を動かす。なんかどうでも良くなってきた。米屋凄いな。学校に着いたら出水を揶揄って、それから仲良くやれよって言ってやろう。だって、それが友達だよなあ。うん、大丈夫、笑える。きっとこの想いは捨てられないけど、捨てなくても良いよな。身体をじくじくと蝕んでいた痛みはとうに消えている。今度米屋になんか奢ってやろう。



「あーあ、ホントに、…おれにすりゃ良いのに」

あの弾バカに彼女が出来ても、きっと___は諦めないだろう。だって、おれも___が弾バカを好きになっても諦められなかったから。あーあ、上手くいかねぇなあ。


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