新婚ムード




「…えっと、___くーん……?」

「何ですか」



私とソファの間にサンドイッチ状態のスペインさんは今から殴られるとでも思っているのだろうか、顔を青ざめさせて両手で頭を庇っている。意味がわからない。キスしかしたことは無いとはいえ、私達は恋人なわけで、その恋人にソファに押し倒されようものなら普通は顔を赤く染めて恥じらいつつ私の首に両腕を絡ませるものだろう。



「な、なに怒ってるん?おれ何かした?晩ごはんトマトばっかやったから?あっ、それとも___くんの好きなワイン取り上げたから?でも飲みすぎは体によくないんやで!」

「……そもそも怒ってませんよ」



今の現状に呆れてはいるけれども。この一言を言えばぷるぷる震えて怯える姿が安易に想像できるので心に留めた。私ってば優しい。え?そうなん?よかったー。なんて言いながらぽやぽやした雰囲気にコロッと変わったスペインさんはやっぱり可愛い。けど相変わらず私の頭の中はさっきのスペインさんの言葉でいっぱいいっぱいだ。



「スペインさんが、悪いんですよ」



可愛いこというから。そう呟いて未だ押し倒したままのスペインさんに ちゅっとキスをする。



「ふぇ?えっ!?えええ!?ちょっ、え?そ、そういうことなん!?待っ、あ、あかんよ、そんな…っ」



押し付けただけのそれをゆっくり離せばスペインさんはぶわっと顔を赤く染めて私の胸を押し返す。やっと私の真意に気づいてくれたスペインさんの真っ白な半袖のYシャツのボタンを外す。更に顔を赤くして、まるで今日一緒に食べたトマトみたいになるものだから愛しくてたまらない。



「あ、や、そ、ソファはあかん!べ、ベッド、いこ…?」

「そういうのが、」



もう一回スペインさんの唇をキスという手段で塞いでやって、全部ボタンを外した上半身の胸から腰にかけてまでゆっくり撫でてから口を解放して やる。



「私を煽るんですよ」

「っ、な、に、いうて、るん」

「嫌じゃないんでしょう?」



そう耳元で囁くと思った以上に自分の声が震えていて、しかも熱を含んでいるものだから、どんだけ必死なんだと笑えた。思わず苦笑すると、耳に息がかかったらしく、びくっとスペインさんの体が強張った。近いから耳まで真っ赤なのがよく分かる。ああもう可愛いなあ。



「っ、そ、れは…おれやって、シた、 い…けどっ、」

「…けど?」

「おれ、シャワーも浴びて、ない、し、こんな、あ、明るいんは、恥ずかしいんよ…あと、お願い、やから、ベッドで、シて…?」



私のTシャツをぎゅっと握る手は震えていて、涙目のまま恥ずかしそうにそうお願いするスペインさんに、理性が砕けちってしまいそうになった。私は頭を押さえて、ふう、と息を整え る。抑えろ、初めてなんだから優しくしなきゃ。



「分かりました、じゃあシャワー、行ってきてください。ベッドで待ってますから、ね?」



スペインさんの上から退いてあげて、寝室へふらふらしながらも足を進める。ああもうヤバい。スペインさん可愛い。きゅんきゅんする。胸に手を当 てると心臓が駆け足で動いていて、ああもうほんと大好き。シャアアア…とシャワーの音が聞こえて くる。スペインさんが晩ごはんの食器洗ってると きに先に風呂使わせてもらってよかった。私のシャ ワーの時間分短縮出来たし。

新婚さんみたいやんなあ、

ご飯のときに言われたこの台詞を反芻してはむらむらする。こんなの、大好きな恋人に言われたら堪ったものじゃない。早く上がってきてくださいスペインさん。





「…___くん、堪忍な、遅なってしもて」



ガチャ、と鳴ったドアへ顔を向ければYシャツを肩に羽織っただけのスペインさんがいた。ちゃんとお願い通り豆電球しか明かりが灯されてないのでよくは見えないが照れてるのは分かった。私もTシャツを脱ぐべきかと思案している間にスペインさんはベッドに座っていた私の横に座った。



「あんな、その、や、やさしく、してな?」



そっと内緒話をするように言うものだからいじらしくて堪らない。勿論ですよ、とおでこと、瞼、鼻、そして唇の順に口づけた。さっきはデザートの軽い甘さがあったが、今は私と同じキシリトールの香りがした。



「ゆっくり、しますから、ね?」

「お、おん…っ」



とさり、とスペインさんを押し倒す。羽織っていたYシャツは重力と浮力でスペインさんの体の下に敷かれた。きゅ、と震える手でYシャツの裾を掴んでいる。私も脱ぎましょうかと聞けば頷いたので、私はTシャツを脱ぎ捨てて、ベルトを外し、もどかしかったから下着とスラックス同時に脱いだ。スペインさんを押し倒し直すと顔を背けられた。頼りない明かりだけどなんとなくスペインさんが赤くなってるのが分かった。



「アントーニョさん、愛してます」

「ぁ…っ、そんなん、反則や…」



可愛いなあもう。ちゅっと首筋にキスして、だんだん下に口づけていく。乳首にたどり着いたので一応舐めたり吸い付いたりしてみたが、ちょ、こそばいっと笑い混じりに反応されたので、ここを弄るのはまた今度にする。もっとしたまで降りて、おへそに軽いキスをしたあとスペインさんのに右手をかけた。



「ひゃ、う、っ、…っ!はぁっ、んっ、んっ、」



上下に擦ったり裏筋を撫で上げたり、尿道を親指の腹でぐりぐり撫でたりする。自慰なんかより気持ちいいのはきっと予測出来ないから。そっと口を近づけて、スペインさんのをその中にパクリと含んだ。



「うわっ!!?、ちょっ、あか、んってぇ…っ、はぁっ、 きた、なっ、ぁっ、___、くんっ、」



さっきより大分息が上がって、やめて、とかあかん、とか言うために口を開けるため、喘ぎ声が漏れている。どんどんスペインさんのは大きく、硬くなっていく。男のものを舐めるなんて自分のですら絶対嫌だが、スペインさんのは抵抗があまりない。愛の力だな。はふはふと肩で息をするいっぱいいっぱいな様子にそろそろかな、と思う。 けっこう疲れたし、イってもらわないと私も首とか頭とかその他もろもろしんどい。ラストスパートとして右手で激しく扱きながら尿道を吸い上げた。



「あっ、はっはっ、や、あか、っふ、はぁっ、 ん、んっ、んっ、ッんんん゛ーーーーッ!!」



びゅるり、飲むつもりだったのにビックリして顔を離してしまったため私の顔と首、そしてスペインさんのお腹にかかった。卑猥だ。びくびくと麻痺のように震えてい る太股が変な色気を放っていて思わず見いってしまう。はぁはぁと荒い息が私の思考を引っ張った。 見上げるとスペインさんの腕が首に置いてあったからこれで口塞いでたのか、と体を起こして腕を手にとる。



「あ、___くん…堪忍、かけてしもて」

「いえ、それは良いですけど…腕は噛まないで下さい。声を出した方が気持ちいいらしいですし」



血は流石に出ていないけど酷く充血しているそれに舌を這わす。あっ、なんて色っぽい声をあげたスペインさんを見ると次は左手で口を押さえていた。もちろんその手も剥がして左手でスペインさんの両手を拘束する。ただの男の手首なのに、ごくりと喉が鳴った。



「や、___く、離して…っ」

「ダメですよ。手を噛んで、声我慢しちゃうでしょ う」

「やって、俺からこんなっ、へ、へんな声…っ」

「私が聞きたいんです。アントーニョさんの、えっちな声」



く、と口角が上がるのが分かる。スペインさんはまた顔を赤く染めて目に涙を溜める。不安げに寄せられた眉が可愛くて、笑ってしまう。愛しくてキスをしたくなって顔を近づける為にぐっ、と距離を縮めた。



「あっ!」



ビクンッとスペインさんの体が跳ねる。顔が更に赤くなって、ぎゅ、と目を瞑った拍子に涙がほろりとシーツに吸い込まれた。どうやらスペインさんのに私の足が当たったらしい。そににしてもなんて可愛い反応をするんだこの人は。涙の筋を舐めて目尻にキスをした。



「もっと、聞かせて」



恥ずかしさからか何からか唇を震わせるスペインさんがやっぱり愛しくて、当初の目的を果たすべく、スペインさんの唇に私のそれを押し当てた。キシリトールの匂いがして、そういえば同じ歯磨き粉って何だか新婚さんみたいですね、スペインさん。



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