小説 | ナノ
君色ディアマンテ



「ホープ!」



夜風が夕暮れ時の温もりを攫うこの有限たる時間に、暮れ始めたグラン=パルスの空を眺めていた彼の名を呼んだのは、メイルフォード。
少しばかり皆と離れていたせいか、心配でもしたのだろう。彼女はそういう人だったから。出会った頃から誰よりも優しいのに強い。
僕と歳は二つくらいしか離れていない筈なのに、そんなことは関係ないといいきれそうな程に頼れる人だった。
今まで戦い方はライトニングさんに学んできた。手伝ってくれながらも前に進むことの大切さはヴァニラさんから教わった。
でも、人を思いやることは彼女たちと出会う前よりメイルフォードさんが伝えてくれていたのだ。パージ列車に乗せられて、確かに絶望しか味わえなかったあの時僕と母さんを見ていてくれたのは。
隣に座っていた彼女はまるで未来が見えているかのように、確信たる光を込めていた双眸で自分の手元を見つめ呟いていたのだから。



『諦めたくない、…まだ生きてる』



ハングドエッジで聖府に対抗すべく立ち上がった人々の中に、彼女も混ざってて。母さんが立ち上がった時は立ち上がることさえ出来なかったのに、メイルフォードさんまで歩み出した時は思わず手を掴んでしまった。
なのに彼女は笑うだけで緩やかに僕の手をすり抜けた。そして、





今こうして僕でさえルシとしての命の刻限を身に感じている時、彼女だって同じなのだ。どういうことか生き延びていた彼女は僕を異跡で見つけるなり、手を握ってくれた。
母さんを目の前で失ってからもう感じられないと思っていた繋がる手の暖かさ。そして笑ってくれることでの安心感。僕らは共にルシであるから同じ気持ちでいられるなんて酷い理由で片付けられる筈がない。
ホープは隣に座り込んでにっこりと笑ったメイルフォードを見て、静かに笑い返す。此処は水辺のおかげか空気が凄く澄んでいて気持ちが清清しくなれそうだ。少しだけでも思い出した昔は、到底直ぐに消せるようなものでもないから。
一瞬だけ視線を逸らしたホープを見て、怪訝そうに眉を潜めたメイルフォードだったが笑みを湛えなおすと空を仰いだ。



「どうしたの、急に一人でこんなとこに」


「……ちょっと思い出したから、少し風に当たりたくて」


「まーたそんな事言っちゃって、黙って出歩くの駄目でしょ」


「…すみません」



やはり心配してくれていたのだと、僅かながら彼女に思ってくれたことの嬉しさ反面また迷惑をかけてしまったのだとホープは視線を落としてしまう。
そんな彼を余所にメイルフォードは突然立ち上がると両腕を伸ばし背伸びをした。するとホープの腕を引き、彼をも勢いで立ち上がらせた。


「うわっ…!」


「ほらホープ、一緒に天体観測でもしよう」


「そんなの突然言われたって…それに、コクーンの天体と同じなわけあるはずないよ」


「かわいくないホープ!気分は同じでしょ!」


両手を組んでむすっとした表情で僕を睨み付けたが、ごめんと咄嗟に謝れば直ぐに笑みに直せるのだからとても器用な彼女が羨ましかった。
少しばかり僕よりも高い身長で視線が合わないメイルフォードさんに勝てないのが、彼女に異性として振り向いて欲しい僕として悔しいけれど。でもその差で生まれる彼女から受けることが出来る優しさが酷く心地よいから僕はメイルフォードさんにどこか依存してしまっているんだろう。
今も寄り添うようにしながらも、頭を撫でてくるのはちょっとだけ子供扱いされてるようで嫌だったけど嫌いじゃないから。触れる温もりがいつしか共にあるのが当たり前になりますようにと、希望と名付けられた僕の中で光り輝く秘石と同じ灯りを抱く星空を、二人ずっと眺めていた。



(終わりの無い願い事したって、構いませんよね)
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AlfA様リクエストのホープ…ほのぼの…なのか…!?(…
兎に角お待たせしたにも関わらず私にはほのぼのはこれが限界でございましたぁあああすみませんー!
でも、久々にホープ良いです。
彼を弟のように可愛がってる、という素敵なリクエスト頂いていたというのに;ω;でもそんな感じの雰囲気出ていればいいなぁと。
お持ち帰りはAlfA様のみ可能です!
それではリクエスト誠にありがとうございましたー!

(2010.2/22)
ディアマンテ》イタリア語でダイアモンド

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