ノエル夢祭り | ナノ
きっと誰も知らない夢の話


きっとこの不思議な星の巡り会わせがなければ私は彼と出会うことはなかったのだろう。そう思うと少しばかり寂しくて、偶然と言う名の世界は酷くむなしいものなのかなと思うことがある。

たとえばの話だ。私と彼が死にゆく世界に生まれず、お互いに平和で裕福な世界に生まれていたらまた別の関係になってたのかなとか言えば、彼は決まってこう言うのだ。俺はこのままで良い、って。



「ねえ、そういえばノエルって何時もそう言うよね。 どうしてなのか理由、ちゃんと聞いてない」



メルより頭一つ分背の大きいノエルに抱え込まれた格好で、膝の上に座らされてるから必然的に彼を視界に入れるには振り返るか見上げるしかなくって。でも何となくそうするのは疲れるし、体格差で負けを認めるみたいだから悔しいから振り向いてやらない。
昼間より暗さだけを増した赤黒い空には星なんて瞬いて無い。昔の文献によれば本当は群青の中に満天の星空を望めたらしいけれど生憎私達は幼い頃からそのような自然の美しさを知らないから、本当にごく稀に見つけられる鉱石や武器の装飾を思い浮かべ空に映そうとするけれど決まって無駄な努力に終わる。

そんな私の胸中を知ってなのかわからないけど、ノエルはふと思い出したかのように突然頭を撫でてくるのだ。まるで私のことなんか解ってるとでも言いたげにやけに優しい手つきだから余計、メルは甘えてしまう。背から伝わる温かさに自然と身を寄せる。


「もし、平和な世界でメルと出会えたらそれはそれで嬉しい。だけど、何処にもそんな確証はないし俺は未来を視れるわけでもないから不安になるかもな」

「ノエルにしては珍しいね、もっと前向きな言葉ほしかったなあ」

「確かに、俺らしくない。でもこれだけははっきり言える。同じ世界でメルと会えること、後悔するなんて絶対にないな」


同じ使命を帯びて、同じ目標に向かっているからなんて関係なかった。目指す相手だって同じで倒したい相手も同じ。守りたい人も同じ、守りたい未来だって世界だって全部。
まるでノエルとメルは双子のようにお互い無くてはならない存在だったから。だけど巫女を守る守護者は『ひとり』という掟。



「もし、もしさ。本当にカイアスを倒して私かノエルが誓約者にならなくちゃいけなくなった場合でも、ノエルは私を倒す?」

「残念。そんなことするわけないだろ。俺とカイアスとメル、三人でユールを守ろう!それに、もう誰一人失う必要なんて、」



うしなう、という言葉を紡いだ瞬間僅かに私を抱く手が柔らかな強さを示した気がしたけれど、ノエルの言った言葉は私の言葉であったからきっとそれは彼にだけ言わせて自分で言い出さない狡さを心身共に共有してしまったかのような錯覚を覚えしまったのかもしれない。だけど私が余計に声に出したらそれこそまた彼を困らせてしまう気がしたから、私の身体に回されたノエルの手の上にそっと掌を重ねて、



ありがとう わたしもおなじだよと、ささやく温度

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お題元様:オーヴァードーズ

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