短編小説 | ナノ

▽ 

For three days spent with you, I deepened love for you more.

Sexy Little Darling
...Day one



瞼を通して伝わる光の刺激。皮膚と寝具の繊維が触れ合う心地よい感触。寄り添う華奢な身体から伝わる人肌の温もりと、細い髪から香る花にも似た匂い。
深い睡眠から覚めたばかりのまどろみの中、次第に感覚を取り戻してゆく、いつも通りの朝。
意思に逆らうことなくすんなり瞼は開き、はじめに視界へ入るのは恋人の寝顔…のはずだった。
彼女がいる筈の腕の中には、間違いなく十は年下に見て取れる、年端も行かないであろう幼い寝顔があった。見慣れた彼女の姿はどこにも確認出来ない。
寝惚けに視覚が正常ではないのか、それとも夢を現実だと錯覚している最中なのか、混乱に思考は停止した。
目を閉じる。ゆっくりと開く。だが景色は変わらない。この謎は自分自身で解決する他無いようだ。

…ついこの瞬間まで忘れていたが、この子が何者かという疑問よりも早急に片付けるべき問題を思い出す。
少女が眼を覚ます前に服を着なくては。
現在の絵面ははたから見れば大問題。少女が目覚め、驚き大泣きでもしようものなら教団創設以来の大事件になりかねない。一先ず起き上がると、体を覆う掛け布をそっと捲る。
露わになる少女の姿に目を疑った。
胎児のように丸くなって縮めた身体は、胎児と同じく服を着ていない。
一糸纏わぬ幼い少女と朝を迎えたという状況に頭の血液は体の底へ落下する。
硬化しそうな頭を無理矢理働かせながら、体をなんとか動かし、産まれたままの姿の幼女を起こさない様布団の捲れを戻した。

急ぎつつも大きな音を立てないよう衣服を着ながら「大丈夫だ、オレは間違いを犯してはいない。何か訳がある筈だから」と自身に言い聞かせながら記憶を漁る。


昨晩、間違いなくオレは恋人と過ごし、共に眠りに就いた。勿論喧嘩なんてせず、身も心もそれはそれは仲睦まじい過程を経た上で。
酒は飲んでいないし、昨夜の情事を事細か且つ鮮明に思い出せる程には意識もはっきりしていたことを再確認する。
ならば何故彼女はこの場に居らず、代わりに幼い子供が彼女と代わって穏やかに眠っているのか。
部屋を見渡すと、少々雑に畳まれた彼女の衣服が寝台横の小机に放置されている。
徐々に落ち着きが戻ってくると、ある仮定が過ぎり、寝起きにまじまじと見た少女の寝顔と、見慣れた彼女の寝顔を交互に目蓋の裏に浮かべて重ねる。

信じ難いが導き出せる答えは一つしかない。
熟睡している所を起こすのは申し訳ないが、それを確認するには少女を起こさなくては始まらない。
「朝ですよー…」
細い肩を指で突きながら声を掛けると、少女はぴくりと目蓋を動かし、身じろぐ。くるんと、うつ伏せになると猫のそれの様に腕を頭の上につき出し、唸りながら伸びをした。

──本当に信じられないけど、間違いない。

恋人の寝起きの癖と全く同じ動きをした少女は、眩しそうに片目を開き此方を見ると勢いよく起き上がり、此方に向かって両手を広げ飛びこんできた。
予想していなかった行動に、情けなく驚声をあげ慌てて少女を受け止めると、予め手に持っていた恋人の服を手早く羽織らせる。
彼女はオレの胸元に埋めていた顔を上げると、陽の光で輝く大きな瞳で見つめてくる。
起きたばかりとは思えない晴れ晴れとした声音で「ラビ」とはっきり呼んだ。

「おはよ。……アリス」
未だ戸惑いは隠せなかったが、恋人の名を呼ぶと、少女は嬉しそうに顔を綻ばせ、「おはよう!」と返しながら柔らかい頬を此方の頬にくっつけてきた。この子がアリスである事は判明したものの、普段の言動とは異なる姿に戸惑う。
彼女とはそれなりに恋人らしいやり取りはするものの、子供の触れ合い方は唐突で時に大人のそれより過剰に感じる。

現状確認をしたところ、小さなアリスの年齢は五、六歳のようだが本人は把握しておらず記憶も曖昧だった。聖職者であることや、黒の教団という組織そのものに対する理解度は低く、思考や行動は幼児退行してしまったようだ。
自身が幼くなってしまった事も無自覚であったが、オレや教団の人々の存在や関係は幼子が理解できる範囲で覚えている様子だ。
やけにオレに懐いてくれているものの、男女が抱く恋情の類ではなく、親や兄妹の間柄としての好意に近いのかも知れない。

ある程度整理がつき、こんな非現実的な現象を起こし得る人物はこの教団に一人しかいないとの結論にも至った。
まずは報告と彼女を元に戻す為の協力を得る為、微睡みの余韻が残る部屋を後にした。


アリスと恋仲であることは一部の人間には知られているものの、朝起こしに行ったところ彼女がこの状態になっていたと、科学一班員や、駆けつけてくれたアレンとリナリーに一部偽造した事情を説明をする。
ぶかぶかの服を羽織って抱きかかえられている小さな姿を見て、その場の人々は戸惑っていたが「何処ぞの室長の仕業かも」と話すと、誰もが納得して聞き入れてくれた。
そんなやり取りの最中、早々に司令室からコソコソ立ち去ろうとする何処ぞの責任者が、床に散らばった書類に足を取られ、盛大な音を立てて全員の目に止まる。

逃げられまいとその場の男手全員で取り押さえ拘束し、椅子に縛り付けた。

逃げようとするぐらいだから、今の説明もしっかり彼の耳に入っていることだろう。その顔を覗き込んで窺う。

「つーわけで、コムイ。何か心当たりは?」
結論は分かりきっていることだが、あくまで本人に認めさせた上で反省させ、解決策の考案に全力を注いでもらう必要がある。そのための尋問だ。
「全然ないです」
完全に白を切るつもりのようで、返って不自然な程の真顔だ。班員達は殴り掛かる勢いで「しらばっくれるな!」「こんな問題を起こすのは室長しかいませんよ!」と怒号を飛ばすが、対するこの男は全くたじろいでいる様子は無い。
なるべく穏便に済ませたかったが仕方ない。リナリーの方へ向き、お願いします。の意を込めて頷き、分かった。と彼女も頷く。察知した周囲も口を閉じる。

「嘘をつく人は嫌いよ。兄さん」
コムイは淡々と言い放ったリナリーを見つめ、硬直する。自身に投げられた言葉の意味を理解出来ずにいるのか、半開きの口元が彼女の言葉を声無く反復している。
すると「きらい」と形どった口唇が見る見るうちに震えだし、一瞬にして青ざめ、慟哭。滝の涙を流し暴れながら「本当の事を言うから嫌いにならないで!」と、器用にも縛られた椅子ごと這い寄ってリナリーの足元に縋り付く。
小さいアリスが異様な大人の姿に怯えては可哀想なので、そっと彼女の目元を手で覆っておいた。


コムイ曰く、一週間、リナリーが幼い頃に着ていた服を整理していた際、懐かしさに浸る中つい魔が差したらしく、もう一度当時の姿の妹に「にいさん」と呼ばれたいが為、若返り薬なる危険物を製作し始めたらしい。
開発に開発を重ね、漸く実証実験の段階まで進んだ最中、昨日の日中に手違いでアリスが薬を飲んでしまった。それは私利私欲の為に開発中の薬です。とは言えず、栄養剤のようなものだから問題無いと誤魔化したのだそうだ。
実験の域を出ない薬故、効果が直ぐに現れず今朝の寸劇が繰り広げられる事態となった訳だ。

当然ながら戻る方法も不確定。かと言って時間が解決してくれるのかどうかもわからないが、一先ずコムイには元に戻す方法を探す事と、仕事をさぼらない事を約束させ、一旦この場は収束した。

また、被害者である幼いアリスについては、幸いな事に自身を含め、この場にいた聖職者四人は任務が現在入ってはおらず、コムイが密かに保管していたリナリーの幼少期の服が丁度合い、暫く彼女が過ごす事においては、急を要する問題は見当たらなかった。
ただ、幼子なので一人きりには出来ないが、自分達も長く任務を怠るわけにもいかない。一人が付き切りであれこれ世話するよりも、特に気心が知れた科学一班と一部のエクソシストで協力しながら、誰かが側に付くようにした方が良さそうだ。

あまり大ごとになって中央庁の耳に入ると厄介なので、大勢に知らせるべきではないが、協力者は多いに越したことはないので、夕刻に任務から戻る予定のクロウリーとミランダにも事情を説明する事を決める。
それまで自分は書庫に篭って解決の手掛かりを探したいので、アレンとリナリーに彼女の側にいてもらうよう頼んだ。二人は心情を汲んでくれたのか、快く引き受けてくれた。
一方の当人は、名残惜しそうに眉尻を下げて此方を見据えていたが、リナリーの「外に可愛いお花が咲いていたわよ」との呼び掛けに大きく反応すると、玩具を投げられた仔犬さながら表へ駆けて行った。



所狭しと眼前に広がる本の群れ。陽の光と暖かな温度を閉じ込めた静謐の空間は、無人を告げている。
関連しそうな文献を片っ端から読み漁るつもりだったので、いちいち本を机に運んでは戻す作業は手間だ。人が来ればその時に片付ければいいだろうと、聳え並ぶ本棚の一角、天辺の左端から持てるだけ本を抜き取るとそのまま床に腰を下ろし、一冊目に手を付ける。
コムイから薬の成分や作成工程を聞き出しはしたものの、素人が介入する意味は無い作業なのかもしれない。それでもアリスの為に自分が出来る事は何でもやっておきたい。
何もせずに必要のない事と決め付けるのは、自分自身が納得できなかった。

以前アレンとの他愛ない会話の中で、女性の許容範囲は十歳から四十歳まで。と恋愛に年齢は関係ないという意味合いを込め、ふざけて言ってみた事があった。
実際、本当にただの言葉遊びに過ぎなかったと、痛感している。
朝、隣で眠っていた幼い女の子が恋人と同一人物であり、変わらない仕草や癖で事実の理解はしても、庇護の意味合いでの可愛らしさは感じているが、それ以上やそれ以外は無い。
恋愛感情はおろかアリスに似た全くの別人のようにすら思えて、心苦しく寂しい。
詰まる所、恋人が突然姿を消した事で自分でも驚く程内心は動揺している。正直なところ一人になって少し冷静になる時間も欲しかったのだ。
僅かでも手掛かりになりそうな単語や事例を探して文字を追いかけては項を進める度、不安と寂しさからは解放されていった。


どれ位時間が経っただろうか。そろそろ二、三時間程だろうか。もしかしたら、それ以上経過しているかもしれない。没頭するうち、感覚が麻痺しはじめていた。
活字を読むことに慣れてはいるが、専門知識の無い目で辿る医学や化学の文字列は、大波のような情報量を押し付けては、全てを理解出来ないもどかしさを煽る。
次第にこの空間の静寂も、集中を乱す巨大な音として頭の中に響いている気さえしてきた。

大きく息を吐いて、本棚に凭れ掛かる。
思えば、自分が見てきた限り、シスコン室長の怪しい薬の被害者は全員効果が切れるまでは身体に何かしら異常を抱えながらも耐えたり開き直ったりしながら過ごしていた。
数えること八名。内、科学班員は六名。
今回の件も、前例に同じく時を待つ他無いのではないか。冷静な思考は諦めという答えを引き連れて戻ってきた。
目を閉じて少しの間だけ、視覚からの情報を遮断する。少し考えることをやめたほうがよさそうだ。

…不意に名前を呼ぶ声が聞こえた気がしてゆっくり目を開ける。
明るくなった視界に、しゃがんで心配そうに此方を見つめる小さなアリスがいた。
音もなく突然現れた彼女に、思わず声を上げてしまう。今朝からこの子には驚かされてばかりだ。
彼女は人差し指を唇に当て、この部屋には誰もいないというのに、互いだけが聞こえる距離まで顔を近付ける。
「しずかにしなきゃ、だめよ」
慣れない言葉遣いと辿々しさ。本人は至って真面目そうな顔付きをしている事に、つい笑いが溢れた。
「それ、もしかしてリナリーの真似?」
小さなアリスは「うん!リナリーみたい?」と花の開花を思わせる笑顔を向ける。
「んー、二十点くらいだな」
忙しなく変わる無邪気な表情が可愛らしくて、次はどんな反応をするのかと、つい悪戯心で大人気ない返答をしてしまう。
怒るか悲しそうにするかと思いきや、戯れた仔犬のように唸りながら頭を抱え、しかしその割には何故か満足気に笑顔で「にじゅってん!」と言葉を反復すると、またしても唐突にしがみついてきた。
受け止めはしたものの後頭部に軽く痛みが走る。子供の行動に、順序や意味などは関係無いらしい。
「こらこら。静かにしなきゃ駄目、だろ?」
立てた人差し指を口に当てると、目の前の彼女はしまったという顔で大袈裟に両手で口を押さえ、周りを見渡す。「しぃー…」と向かい合って互いに真似し合うと、大きな声を出さないように堪えながら二人で笑った。
「ラビ、たのしい?」
期待を帯びた瞳を輝かせて小さなアリスは首を傾げた。きっと、特に深い意味はないのだろうと思い「楽しい」と聞かれたままに答えると、彼女は満足そうに口角を上げる。
俄かに立ち上がると、動かず待つよう一言残し、ぱたぱた軽い足音を立て本棚の向こうへ駆け、何処かへ行ってしまった。
しかし数十秒も経たないうちに同じ場所から控えめに顔を覗かせ、勿体ぶった素振りで近づいてくる。後手に何かを隠しているようだ。
そろそろと此方へ歩み寄り、オレの足の間に収まるよう腰を下ろすと、あどけない瞳が真近に向かい合う。硝子玉のように表面に光が揺れる瞳は、七色に輝く虹彩を中に孕んでいる。
奥に吸い込まれそうな気分でいると、彼女の小さな掌が近づく。髪に触れるくすぐったい感覚と同時に、何かが視界を遮りながらずり下がる。
「ふお!?何、なに、どした?」
本日三度目の間抜け声を上げる。バンダナを掴まれ首元まで下されたらしい。そんな俺をよそに、再び彼女の手は頭上に伸ばされていた。次は頭に軽い物を乗せられた感覚がある。
そっと頭上に手を伸ばし触れると、柔らかで薄く小さなものに触れた。紙…或いは葉か花びらだろうか。
軽く細いそれを手に取ってみる。植物の茎が円状に編まれ、周りを少女の姿のような小振りな花が覆い元気に咲いていた。
「アレンと、リナリーとね。三人でつくったの。…元気だして?」
整った造形の花冠を感心しながら眺めていると、冠に咲く花と同じくらい柔らかく穏やかに笑う少女は小首を揺らす。

漸く理解をした。この子はオレの僅かな動揺に気付いていた。それだけに留まらず、案じてくれていたのだと。
身体も精神も幼い彼女には自身が置かれている状況も、周りの思いも分からないだろうと決め付けていた。表情を窺うように見つめ問いかけてくるのも、幼さ故の好奇心による行動だと思い込んでいた。
全く彼女の思いを知ろうとしなかった自身の幼稚さに恥ずかしくなった。
「お花、にあうよ」
「…ありがと」
無垢な優しさに頬が緩んだ。彼女の猫の毛に似た細く柔らかい髪を撫でると、手の平へすり寄るように頭を傾けてくる。…そんな仕草も変わらない。
オレのことを恋人だとは認識していないだろうが、きっと一番に信頼してくれている事はわかる。自分がアリスの為にできることは、彼女を安心させる為、出来る限り傍にいることじゃないだろうか。そんなことに今更気づかされる。
片手に握る可憐な冠をもう一度見つめた。
「ラビ?」
「…何でもない。それより」
少しだけ乱れている彼女の髪を指で梳き解く。髪の淡い光沢が輪になるその上に、彼女の頭にはやや大きいが、丁寧に花冠を重ねた。
「こうした方がずっと似合ってる」
アリスは一瞬固まると顔を真っ赤に染め、初めて目を逸らして俯いた。何故急に恥ずかしがったのか解らないが、温度を上げた頬に触れながら髪をかきあげてやると、耳まで熱の色を帯びていた。散々此方が振り回されてきたので、かなり大人気無いがもう少しだけ茶化してみる。
「あはは、急にどーしたんだよ。耳まで赤いぜ?」
彼女は何も言い返さず耳に触れる手を小さな両手で取ると、紅潮した頬に添え当てる。伏した睫毛の影の下で揺らめく瞳が、不意に艶やかに映った。
形成が逆転した。罪悪感と恥ずかしさに軽口を叩くことも出来ず、せめて悟られないように窓の外を見る振りをする。
「そういえば…、アレンとリナリーは?」
「ここまでいっしょに来てくれて、それでバイバイしたよ」
「そっか。何して遊んでたんさ?」
話が逸れて安心したのか、アリスは目を輝かせて、一つ一つの事柄を小さな体を身振り手振り一生懸命話してくれた。二人には後程しっかり礼を言わなければならない。後日、何らかの形で労おう。…アレンは食事以外の形で。

しばらく彼女の話を聞いていると、入り口が開く音が微かに聞こえた。この子を放ってまで読書に没頭する理由が無くなったので、ここを退散する事にする。
自分の周りに積み重ねて置いた本を、数冊持てるだけ抱えて本棚へ戻す。視線を落とすと本が浮いて此方を向いていた。と思ったら、重く分厚い本を持ち、両手を高く上げて手伝おうとする健気な姿が見える。「重いから無理しなくていい」と言っても、懸命にしゃがんでは本を目一杯持ち上げる姿に、胸が暖まる。
こうしていると、周囲が引くほどにコムイが妹を愛おしく思う気持ちが理解できそうな気がしてきた。
ただ、いくら可愛いと思ってもあそこまで重度にはならないように心掛けようと、同時に強く思う。
「そういや、アリス。その絵本は?」
散らかした本を片付け終わると、床にポツンと立てかけてある一冊の絵本が残っていた。
聞くと、コムイがアリスに大量に貸し与えた絵本のうちの一冊で、この部屋にやって来た際に一緒に持ってきたらしい。
恐らくリナリーが小さい頃読んでいたものなのだろう。この域まで来るとリナリー収集家と言えばいいのか。徹底ぶりに返って感心する。
木版で刷られた多彩な色合い、絵画にも近い繊細な線で描かれた表紙、子供用としてはかなり手の込んだ、芸術品としても高い評価が得られるであろう本を拾い上げた。
「部屋に戻って一緒に読もうか」
「うん!」
足に抱きついて来た彼女の小さな頭を撫で、手を繋いで歩き出す。子供の歩幅に合わせて歩くのは結構難しい。


アリスは絵本の読み聞かせが気に入ったようで、一冊読み終えると直ぐに次の本を持ってきては読むようにせがんだ。そうして過ごすうちに、気づけば窓から入る明かりは夕陽に染まり、夜が近づいている事を告げていた。

食堂へ移動すると、早々に小さな姿はジェリーに発見され、「可愛い、可愛い」と頬ずりされたり撫でられたり、周囲が圧倒される勢いでスキンシップを受ける事となる。しかし慣れた人間だからか彼女の無邪気さ故か、じゃれ合うのをけらけら笑いながらお互い楽しんでいたので一安心だ。
夕食を注文する最中「後でとっておきのデザート作るわね」と彼に耳打ちされた。付け加えて「びっくりさせたいからアリスには秘密」だそうだ。
余程子供が好きなのか、普段触れ合えない新鮮な反応を楽しみたいのか、どちらにせよ遮光された細身の眼鏡越しにも、彼の瞳は少女と同じ様にキラキラ輝いているのが分かる。
秘密を守る事を短く返事をすると、女性らしい仕草で気合を入れ厨房へ戻って行った。

アレンとリナリー、心配して様子を見に来てくれた一班の面々も同席し、丁度任務から戻ってきたクロウリーとミランダも、アリスの幼くなった容姿に驚きながらも合流。特に招集をかけたわけではなかったが自然と見知った顔が増えて大所帯になり、ひとテーブルを囲んで和んだ空間が完成した。
が、何か物足りなさそうにアリスが辺りを見回す。
少し嫌な予感がする。やがて首を傾げながら小さな口が開いた。
「ユウは?」
出てきたのは今の彼女に接触させるには危険な人物の名前。ユウが子供と接している姿を見たことは無いが、そもそも此方から近づかない限り、他人と共にいる姿を見たことが無い彼が、天地がひっくり返っても子供に懐かれ戯れる彼が全く想像できない。恐らくこの場の誰もがアイツは間違いなく子供が嫌いだと思っている事だろう。
純粋無垢に名前を呼び駆け寄ったとて、瞬時に近づいてはならないと察知する一睨みで怖気付く事になるだろう。

ただ、オレの真似をして彼を「ユウ」と呼ぶアリスは、「呼ぶな」と睨まれても全く気にする事なく会話をしていたので、半ば彼も威嚇する事を諦めてはいたが。
しかし精神的にも幼くなってしまった今、アリスの性格には不確定な要素が多い。不用意に彼女を怖がらせてしまう状況を作ってはならない。
「えーと、確か、任務があるって言ってたよな?」
「…あ、僕もそんな話を聞いたような気がします」
すかさずアレンが虚偽に加勢してくれた。斜向かいに座る彼と小さく頷き合う。アリスの為か単純に自分が会いたく無い為かどうかはさて置きありがたい。あとはアリスにユウを諦めさせ食事を摂るよう諭すのみ。

なのだが、こんな時程事は上手く運ばないものだ。
「あら…」と向かいに座るミランダが、オレを通り越した先にある何かを見つめ呟くと、はっとして口ごもる。
つい反射的に振り向きそうになるのを抑え、まさかと思いアレンの表情を窺い見ると、心底不愉快と言わんばかりの目がミランダと同じ方向へ向いていた。
隣の幼い瞳も振り返ってその姿を捉えたのか、跳ねるように椅子から降りると、迷いなく駆けて行った。慌てて追いかけて制止しようとするも、彼女が声を上げて「ユウ」と名前を呼んだので、追われる後ろ姿はぴたりと足を止める。
「うるせぇ。大声で呼ぶ…な」
長い黒髪を揺らして振り返った顰めっ面の彼とばっちり目が合った瞬間、急に語尾が不安定になる。名前を呼んだ本人が何処にもいないので不思議に思っているのだろう。
直後明らさまに文句を言いたげな顔をされるが、何かを探すように視線が逸らされる。足元まで近寄ったアリスが再度呼ぶと、見下ろし、その姿を見ると表情ごと停止した。
「いっしょにごはん食べよ」
恐らく戸惑っているであろうユウの心境を知ってか知らずか、彼女は屈託無い笑みを向けている。
「…どういう事だ」
「色々ワケがありまして」
「小さくなっちゃいました」と誤魔化すようにオレも笑ってみせるも、怪訝そうな顔は変わらず。彼は何も言わずに踵を返すが、アリスが服の裾を掴んだ為、立ち去る一歩は踏み出されなかった。
子供に手をあげる事はしないだろうが、歩みを阻まれた彼に怒鳴られるか更にきつく睨まれるのではないかと思うと瞬時に冷や汗が出てくる心地を覚える。慌てて彼女を引き離そうと屈んで手を伸ばす。
「ユウ、ちゃんとこっち見てお話しして」
まだリナリーの物まねが彼女にとっての流行なのか、つんと眉を上げてアリスは彼を諭そうとし始めた。出来ることならその言動に突っ掛からず、丁重に服を掴む手を解いて何も言わずに立ち去って欲しい、と切に願う。
しかし此方の希望に反して、ユウは厳しい顔つきは変わらず手を振りほどこうとも怒鳴ろうともせず、じっと彼女を見下ろしている。話を聞くつもりで、彼女が何かを話すのを待っているのだろうか。
此方の視界には獅子に対峙する仔猫が懸命に威嚇しているようにしか見えない。軽く小突かれただけでも子猫はすっ飛んで怪我をするし、獅子に軽く喉を鳴らされれば震えて怯えるであろうことは容易に想像できてしまう。
アリスが蕎麦より柔らかい彼の堪忍袋の緒を引き千切ってしまう前に、両者を引き離さねばと意を決して間に入ろうとしたが、ユウの思わぬ行動に目を疑い硬直してしまった。

徐に小動物を扱うようにアリスの脇に手を差し込んで、目線の高さまで持ち上げたのだ。
こっちを見ろと言われたものの、見下ろせば目の高さを合わせろと言われかねない。
自分が屈んで目線を低くしてやるつもりはさらさら無いので、お前が俺の視線の高さに合わせろ。…恐らく彼の行動の意図はそんなところだろうか。

あの仏頂面が、幼女を抱き上げている様は驚天動地の事態だが、オレはそれよりも子供に対等に応じそうも無い彼が、構図はどうあれ普段と変わらない接し方でアリスと会話を進めている事に驚きと疑問が浮かんだ。
全く二人の会話が全く耳に入って来なかったが、結局夕食の誘いは断られてしまったらしい。アリスは素直に「こんどはいっしょだよ」とユウの背を見送っている。
一緒じゃなければ嫌だと駄々をこねるだろう思っていたので、この潔さの理由は見当もつかなかった。
とはいえ非常に残念ではあったようで、名残惜しそうに動かず立ち尽くしている。「皆の所に戻ろう」と手を差し出すと、小さな手は小指だけ覚束なげに握った。
口を尖らせてとぼとぼ歩く姿に、無性に気を引いてやりたくなってきたので、勢い良く腰を掴んで抱き上げる。
驚いて声も出なかったのだろう。顔を覗き込むと、不機嫌な雛鳥のように閉ざしていた口はぽかんと半開きで、伏していた瞳は丸々と開かれている。
「なぁ。さっきジュリーが、アリスの為に良いものを作るって言ってたぜ」
彼女のとぼけた顔を笑ってしまいそうになるのを堪えながら打ち明けると、彼女の関心はわかりやすくオレの口から出てくる秘密に向けられた。
「いいもの?」
「そ。でも、ほんとは秘密だったんさ」
「どうしてだめなの?」
「知ってたら驚いて喜ぶ顔が見れねェだろ?」
眼鏡の奥で瞳を輝かせていたジュリーに心の中で小さく謝った。
「そっか!ひみつ、ひみつ」と彼女は自分の耳を押さえ「だいじょうぶだよ。いいもののこと、なんにもきこえなかったよ」と、悪戯めいた表情を見せる。たったそれだけの単純で幼稚な仕草に、自己を満たす為に破られてしまった約束に再び罪悪感が積もり始める。
項垂れるように額を彼女に寄せ一言だけ礼を呟く。髪に触れられる感触がして上目を向けると、子供らしく体全体で笑っていた表情とは打って変わって、軽く閉じられた唇は僅かに微笑みを象り、柔らかく目を細める彼女が映る。不意に本来の彼女の姿が脳裏を過ぎった。
「ジェリーはおこったりしないよ。だいじょうぶだよ」
華奢な腕を伸ばし、オレの頭を撫でながら落ち着いた声音で彼女が囁く。深く反省していると汲み取り、慰めてくれているのか。首を傾げ、反応を伺う彼女の真似をして小さな笑みで返すと、満足そうに頬を寄せてくれた。
期待に高揚する無垢な視線と、いじらしげな気遣う瞳を独り占め出来たことに、優越感を感じ、彼女を抱いたまま再び歩き出す。
数歩歩き始めたところで、駆け寄ってきたリナリーとミランダの姿が見えた。余程心配で待ち切れずに追いかけてきたのだろう。二人そろって眉を下げ、抱えられたままで表情の見えないアリスの様子が気掛かりなようだ。
二人の存在に気づいたアリスがそちらを向くと、声音に合わせた明るい表情を見て、二人は顔を合わせてほっと息を吐く。
「神田のことは、また明日誘ってみましょう?」
「アリスちゃんの頼みなら、次は聞いてくれるわ。きっと」
励まされて元気の良い返事をしたかと思うと「おなかすいちゃった」と、ころりと困った顔で目を瞑ってみせる。先程の大人びた眼差しが嘘のように自由奔放な姿に思わず笑いを堪えられずにいると、つられた三人の笑い声が付いてきた。
料理が並ぶ席に戻ると、待っていてくれた二人も彼女の嬉しそうな顔を見て安堵し、漸く大所帯の夕食が始まったのだった。

普段からも都合さえ合えばこうして集まり食事をするのだが、言葉にすれば同じ和気藹々とした空気が、たった一人変わるだけで違って感じた。幼い子供のいる食卓はこんなものなのか、とアリスの保護者にでもなったような心持ちになっていた。
色とりどりに並んでいた料理が次々と空になり、それを見計らっていたらしいジュリーが軽快な足取りでやって来た。
「おまちどーん!」と晴れやかな彼が料理用の荷台に載せて運んで来たものを見て、その場の全員が目を丸くした。
生クリームと焼き菓子、果物で作られた城が建っていた。貴族達の食事会でもこんな大きさの料理は出ないのでは。と思えるほど建築物としては小さいが、お菓子というには恐ろしい程の存在感を放ち、相当の重さであろう美味しそうな城が、細くも逞しいジェリーの腕により軽々荷台から長机に移されると、皆で机を囲んでまじまじと眺めた。
まさかあの短時間でこれほどの物を作ったとは。普段の軽快で女性的な姿からは想像がつかないが、黒の教団本部の料理長は伊達ではないのだと舌を巻く。
アリスは大傑作を披露してくれた料理長に早速飛びついて、期待を遥かに上回った喜びに大いに興奮していた。まだ食べるのが勿体無いと、机の周りをぐるぐるまわりながら小さな体はあらゆる角度から城を眺めている。ついでに食べ物への執着が人一倍強いアレンも、幼女と共に目の中に光を閃かせ、二人で忙しなく小躍り気味に城を称えていた。

年少の二人を満足気に見つめるジェリーに労いと感謝の言葉を掛ると「朝飯前よ!」と頼り甲斐のある返事が明るく帰ってきた。彼にとってはあまり困難では無くとも、一般的にはそうはいかない。これ程の力作を作った理由が気になった。
「特別な日でも無いのに、どうして作ってくれたんさ?」
「周りがみんな大人ばっかりで、心細いかと思って。アタシに出来ることで元気にしたかったの」
四方からアレンと一緒にお菓子の城を眺めてはしゃぐ少女を見つめながら、遠くの何かを思い出しているように彼は少しだけ悲しげな色を含む声音だ。
「私がここに来たばかりの頃も、色んなものを作ってくれたの」
ジェリーの横に立つリナリーが、顔を覗かせ和かに彼を見上げた。今のアリスと同じくらいの年の頃、イノセンスの適合者として教団へ強制的に連れられ、毎日見知らぬ場所と大人達に怯えていたのだそうだ。
当時から食堂に勤めていたジュリーは、今のように料理長ではなかったのだが、少しでも彼女を心の安らぎになればと仕事の合間に果物で動物を象ったり、幼い子供が喜んでくれそうな細工を施した料理を出していた事があったと教えてもらった。
そうして少しずつ二人は打ち解けて、余談だろうがリナリーはジェリーに女性としての嗜みを教わる程の仲になったんだとか。

「…アリスも、不安になるんかね」
城を数周も観察して「ここはアレンのおへや。アレイスターはここ。ミランダはどこのおへやにする?」と指を指して部屋割りを懸命に吟味する彼女を見ていると、あの神田にも臆さないこの子に怖いものはあるのだろうか。と、疑問が漏れた。
くすりと声を零してリナリーは「そう思わせないようにしなきゃ」と過去の自身の姿に重ねているのか、感慨深げに優しくアリスを見つめる。その視線を追い掛けて同じように見据えると、此方に気づいた幼い瞳がこちらに向く。
「ねえねえ、ラビのおへやはどこにする?」
ぐるりと机を周って隣にやって来ると、小さな手が指に触れる。暖かい掌を包む程度に柔く握ると、反して彼女は強く握りしめ引き寄せようとする。引かれる力のまま歩幅を合わせて猫背になりながら着いて行く。
「オレにも選ばせてくれんの?」
「うん。あ!ラビとアリスはおんなじおへやだよ」
小さな城の正面に立つと、再度「ここはアレンのお部屋で…」と部屋割りを丁寧にひとつひとつ指差す。彼女の記憶力の容量を超えてしまっていたのか、時折「ここはなんのおへやだっけ」とアレンに問い掛けたり、はじめに決めていた事と改めて教えてくれた部屋の用途が変わっているが、真剣に話す姿に適当に扱おうとは思わなかった。
「じゃ、オレらは一番広い部屋にしようぜ。…ここのてっぺんは?」
近くで見る程芸の細かさに感嘆する城を眺めながら、アリスより余程真剣に悩んで、小さな新居決めを楽しんだ。



お菓子の城を十分目で楽しんだ後は、皆で食べてしまうのは勿体無いと惜しんだが、見た目の美しさに劣らない美味に、やっぱり食べなきゃ勿体無いなんて笑い合いながら綺麗に食べ切った。すると直ぐにアリスが眠たげにうつらうつらし始めたので、女性二人に風呂へ連れて行ってもらった。

子供とはいえ女の子なので、就寝も共に過ごすと言う訳にはいかなかったので、ほんの少し名残惜しさを感じたが、夜はリナリーかミランダに任せたいと提案すると快諾してくれたので、今日のオレの役目は終わりを迎える。

自分自身が眠るにはまだ時間が早いので、数刻図書室の夜の静寂で過ごした。
そろそろ部屋へ戻ろうと図書館を後にし、一人分の足音を聞きながら進んでいると、進行方向から足音が聞こえ始めた。科学班の誰がが眠気覚ましに運動がてら歩き回っているのだろうかと思っていると、見えてきたのは二つの人影だ。片割れはかなり小さい。
大股で歩みを早めて近づくと、リナリーとアリスが並んでいた。
リナリーは、俺と目が合うと何故か気まずそうに逸らす。こんな時間にどうしたのかと口を開く前に、足元に何かがぶつかって来たので見下ろすと、アリスが何も言わず膝にしがみついている。
足を曲げると案外あっさり離れたので、そのまま屈んで俯きがちな顔を覗き込むと、辛うじて目は僅かに開いているものの睡魔によって眠りに落ちかけている。柔らかい頬を両手で摘んでみても全く抵抗が無い。こんな状態でよく立っていられるな、と感心する。
「どうしても、ラビと一緒に寝たいって言って…聞かなくて…」
全く目を合わせず、アリスを見下ろしたままリナリーが消え入りそうな声を震わす。アリスが駄々をこねて二人でオレの行方を探し回っていたのだろう。日中は長く遊び相手にもなってもらっていたので、慣れない事や気を遣ってくれて疲れきってしまったのかもしれない。
「そっか。…アリス、部屋に戻ろう」
こちらも限界が近いようで頭がぐらぐら揺れ始めた彼女の体を支えながら声を掛けると、頷きながらこちらに身体を傾けてきた。ある意味とんでもない精神力だ。そのまま寝息を立てる身体を抱き上げる。
「こんな時間まで探させてごめんな」と立ち去ろうとすると、ちらと視線を返しリナリーは戸惑いながら口を開いた。
「あのね、二人の関係はわかっているし…口を出すつもりじゃ無いんだけど」
こちらへ徐々に距離を縮めながら、慎重に言葉を選んでいるのか珍しく何度も口籠っている。きっと全容を語る前に悟って欲しいのだろうが、何を伝えんとしているのか、さっぱりわからない。
言葉を待っていると、彼女は一時地面を見つめて意を決したように拳を握って勢い付けて顔を上げると慈悲を求める瞳を向けた。
「今のアリスはこんなに小さくて、まだ何もわかっていないの。だから、せめて、元に戻るまでは何もしないであげて…!」
言い終えると彼女はばっと踵を返して走り去ってしまった。最後まで聞いても、何のことやら結局分からず終いだ。意味深な言葉の真意が気にはなったが夜も更けてきた。腕の中で幸せそうに眠る幼子を部屋に運ばなくてはならないし、謎の解明は明日にする事にして、アリスの部屋へ向かう。
部屋に着いて寝台に彼女を下ろすと、寝返りを打って薄く瞳が開く。
目を擦りながら起き上がろうとするので「今日はオレと一緒に寝よっか」と、髪を撫でて寝かしつけようとするが、小さく返事をしたアリスは徐ろにブラウスのボタンを外し始め服を脱ごうとする。
「ち、ちょっと待てよ。もう風呂は入っただろ。寝ないの?」
「ねるときは…おようふくぬぐの…」
思わず聞き返した。一体誰がそんな事を教えたのか。外れたボタンを掛け直す手を止めて少し大きめの声で問い掛ける。
「おきたとき、おようふくきてなかった…よ…」
駆けるように過ぎた朝のことなんてとうに忘れているだろうと思い込んでいたが、まさかしっかり覚えていたとは。
同時にリナリーの怯えに近いあの表情の意味も此処で判明するような気がする。出来れば聞きたくないが、どちらにせよ事実は変わらない。
「……リナリーの部屋でも、服脱ごうとした?」

「うん」

間違いなく勘違いされている。「朝、起こしに行った」という説明が返って仇となった。無防備な幼女の衣服を剥いて裸体を堪能しようとするど変態だと絶対に思われている。
明日どうやってリナリーに身の潔白を説明しようか、穏やかに眠るアリスの真横で必死に考え続ける。まだ暫くオレの夜は続くのであった。



Day two...

[ BACK ]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -