すうぃーとすうぃーと | ナノ
りんごいちご


「真幸…真幸。
寝ないでください。」

甘い甘い事後。
寝るか寝ないかの狭間で
恋人の声に起こされる。


「…やだ。寝る。てか寝てた。」


「すみません、言い忘れたことがありました。」


「やだ聞いてあげないもん…
唐突に襲ってきたくせに…」


私がそれだけ言うと、
エルは反省したように黙った。

あれ、もしかしてしょげてる?
なんて思って振り向いたが最後ー…


「ふげっ!!」


広い彼の胸の中に、
あっけなく捕まってしまった。
私の肩をぎゅむぎゅむと抱いて
全然離そうとしてくれない。


「唐突ではありませんでしたよね?
誘ってきたのは真幸です。」


「さっ…!誘ってないもんっ…!
ふん、人が真剣に考え事してた時にサイテー…」


「考え事、ですか。」


言ってしまってはっとする。
駄目駄目、この気持ちは内緒だった。
自分のことで苦しんでるなんて知ったら
優しい彼はきっと傷つく。

それに…
エルのこと思ってたら心がきゅんてして
抱きしめたくなったとか言ってしまったら
この人が有利な立場になってしまう…!


「なー、何でもないよ?
それより言い忘れたことって何?」


「…そうでしたね。今朝も言いましたが…
明日から私の滞在するホテルが
キラ対策捜査本部となります。」


「ふふっそうだね!」


「…嬉しそうですね。」


「何でもないもーん!それで、何?」


「…単刀直入に言います。
明日から貴女を当分の間外出禁止とし、
捜査本部、つまりこのホテルにいる間も
偽名を使い私の恋人であることを
捜査本部の皆さんに秘密にして頂きます。」


「………」


ほぇ、とそのまま喉から馬鹿になった声が出る

偽名で捜査は彼もよくしていることだし、
今回の事件に取り組む彼の姿勢から
並の事件とは何か違う大変なことが
起きていることがわかるから
外出禁止も私の身を案じてくれていると思えば
まぁまぁ納得はいく。
素性を隠さなければならないLなら
恋人の存在も絶対的な機密事項だ。
わかってる、そうわかってる。

わかってるのに。
いつも言われていることなのに。
けれどこんな大事な場面で
乙女心は騒ぎ出す。


…けど駄目。
言っちゃ駄目。
困らせちゃ駄目。
名探偵の恋人は、賢くいなくっちゃ。


「わかったよー!
バレないように頑張らなくっちゃ!」


自分の気持ちをごまかすために、
わざと明るく振舞った。
こうでもしないとやってられない。
すると突然抱きしめられる。
あぁ、これは…


「んん、んんっちょっとエル苦しいよ…」


「…すみません。わかってください。
私だけではなく貴女の身を守るためです。
私の素性を知りたがっている人間が
貴女を攫いでもしたら私は…」


黙って強く抱きしめるのは
彼の慰めるという行為だ。
バレちゃった、見抜かれてた。作り笑い。
世界の名探偵さんには本当に適わない。


「…ごめんねエル。」



「いえ、いいんです…こちらこそ…
あぁ、私のことは竜崎と呼ぶようにしてください…
私も貴女のことはまゆと呼びます。」


「竜崎が言うなら仕方ないな〜」


「今はまだエルでいいです。
それと2人きりの時もエルで呼んでください。」
 

「わかりましたよエル・ローライトさん。」


「…聞き分けの良い子にはご褒美をあげます。」


「ちょっとまた急に、
さっきしたばっか…馬鹿あ〜!!」


「言ったでしょう、唐突ではないと。
捜査本部の皆さんは夜勤や泊まりにもなるでしょうから、
出来ることは出来る間にしておきましょー。」





夜は、まだまだ長い。








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