すうぃーとすうぃーと | ナノ
手をつないでキスして


あれっ、竜崎今休憩中?
ちょうどよかった〜ちょっと外の空気吸いに散歩行こうよ!


答える間も与えられず私は彼女に連れ出された。
彼女と出会ってからというもの、
私には「振り回される」という選択肢以外
与えられていない気がする。

しかしそれが運命であるかのように、
私はやられるがままに振り回されるしかない。
いや振り回されてやってる、と言った方が正しいだろう、
彼女の意見を否定し自分の思いを主張することくらい
やろうと思えばいつだって出来る。
(例えば今の場合なら「面倒くさい」)

しかしそれが出来ないのは、
惚れた弱味、と言うやつだろうか。
彼女のその屈託のない笑顔でなら、
何を言われても仕方なく承諾してしまう気がするのだ。
それは幸せでいっぱいの仕方なさだった。


「竜崎ーっ!おそーい!」


数メートル先で人目も構わず私の名を叫ぶ女性は
紛れもなく、私の惚れた弱味を握っている、真幸。
通行人がジロジロとこちらを見ている。
出来れば彼女の呼ぶ竜崎ではないフリをしたい。
はぁ、どうして彼女を愛してしまったんだろうか。


「…大声で呼ばないでください。
真幸の恋人だと思われたくないです…」


「…どういう意味よっ!竜崎が早く歩かないから悪いのよ!」


「では引っ張ってください。」


怒った真幸の固く握られた握り拳を片手でそっと包むと
諦めたように拳が解かれ2人の指と指がしっかり絡んだ。
怒っていた真幸が嬉しそうに笑った。


「…ふふ…
それより見てよ、竜崎。すーっごいでしょ!」

 
そう言って、
真幸は片方私と繋がったままの両手を目一杯広げた。
きっと彼女は並木道の桜のことを言っているのだろう。

桜。気づいていなかったわけではない、
けれど取り留めて気にもしていなかった。
彼女はこれを私と見たかったらしい。


「竜崎のとこ行く時さ、いっつも通るんだけど
昨日くらいにやっと満開になったんだよ!」


竜崎外に出ないから知らなかったでしょ、
とつけたして彼女は笑った。

彼女の言う通り、
私の知らない間に春が来ていた。

春の訪れを教えてくれた真幸の手のひらの熱が
ふいに愛おしくなり思わず引き寄せた。
顔が一気に近くなる。

キス。される、と真幸は思ったのか
瞳を潤ませ期待に満ちた顔が映った
このままキスしてしまうのは面白くないと思い
そっと顔を離してみる。
すると彼女はまたわかりやすくしょげた。


「…意地悪。馬鹿。」


「えぇ、そうですよ。」


思わず顔がほころぶ。
そんな彼女が愛おしいのだ。



「本当、馬鹿ね竜崎!」



ちゅ。


一瞬だった。
真幸が急に勝ち誇った表情をしたと思えば
いきなり手を引かれ、
バランスを崩した私はそのまま唇を奪われた。





桜の並木道の通行人が、私達を見ていた。










「…路チューしちゃいましたね。」



「…竜崎よくそんな恥ずかしい日本語知ってるね。」


























20130122
幸せな竜崎さんが書けて幸せでした





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